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時代が変われば価値も変わる

ロブスターの料理を食べたことはありますか?レストランでロブスターを食べると,いくらするでしょうね。

レストラン『レッド・ロブスター』でスチームしたロブスターを注文すると,5000円や7000円くらいの値段になりそうです。このロブスターはカナダ産です。

ロブスターはなかなか食べることができない,高級な食材ですよね。私もこれまでの人生の中で,数えるほどしか食べたことがないように記憶しています。

ロブスターの産地

ロブスターがよくとれる産地は,北米の大西洋岸です。ボストンのロブスターもよく知られていると聞いたことがあります。

ロブスターは寿命が長く,100歳になるような個体もいるかもしれないとか。それから,大きなはさみを持っていますが,取れても再生するとか。調べてみると面白そうな話がいっぱいありそうです。

捨てていたロブスター

その昔,ロブスターは誰も食べない,食べたがらないものだったと言われると,どうでしょうか。信じられるでしょうか。

子どもたちにも人気がなく,次のようなエピソードがあります。

学校のお弁当にロブスターのサンドイッチを持たされた子供は、道の途中でロブスターを捨てて、パンだけの"サンドイッチ"を持っていったんだとか。

子どもたちがロブスターを食べたくないので,サンドイッチのロブスターの肉の部分だけを捨ててパンだけにしていたというエピソードです。ロブスターの肉を食べるくらいなら,パンだけ食べていたほうがよっぽどマシだということですよね。

いまそんなことをしたら,絶対に「もったいない!」と言われてしまうでしょうね。

受刑者も食べたくない

次のエピソードは,とある本に書かれていたものです。

ロブスターは実質的に低級な食物で,貧しい人や施設の人しか食べていなかった。初期のアメリカの厳しい刑罰においてさえ,植民地によっては,ロブスターは週に一度までしか収容者に与えてはいけないという法律があった。なぜなら,それは人にネズミを食べさせるのと同じくらい残酷で異常なことだと考えられていたからである。

ロブスターを人に食べさせるというのは,人にネズミを食べさせるくらい異常な行為だった,と書かれていますよね。それだけ誰もが「食べたくない!」と思うような食材だったということです。

数しだい

もちろん今では,豊富にあるという状況からはかけ離れてしまっています。高級食材になっていますよね。でも,ロブスターそのものが変わったり,味が大きく変わったわけではありません。料理のしかたは変わったのかもしれませんが,味は昔も今も同じです。なのに,昔は刑務所でも人々は食べたくないと考えていた食材で,今は大金を支払って好んで食べる食材です。

何が変わったのかというと,数が減ったという外的な事実です。

ロブスターの地位がそれほどまで低かった理由のひとつは,昔のニューイングランドにはそれがあり余るほど豊富にあったことだ。「信じられないほど大量に」と,ある資料に当時の状況が記されている。

「数」だけで,価値や好みが大きく,あり得ないほど大きく変化してしまうのです。私たちは,好みというものは自分自身で決めるものだと考えているかもしれません。しかし実際には,状況に大きく影響を受けてしまうのです。それは味の好みのような,気の持ちようだけで変化しそうにないものでも同じです。

それが当たり前

そのように考えると,人間の身勝手さのように思えますよね。しかしその反面で面白いのは,昔の人も今の人もロブスターについて,それぞれの感じ方が「当たり前のことだ」と感じてしまう点です。それぞれのロブスターを取り巻く環境が,人間の感じ方に影響を与えているのに,そのことをまったく自覚できないことが興味深いと思います。

そしてきっと,同じようなことはほかにもあるはずです。ぜひ,考えてみてください。

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小塩真司。早稲田大学文学学術院教授。専門はパーソナリティ心理学。性格の構造,発達,適応に関心があります。 研究室:http://www.f.waseda.jp/oshio.at/index.html Twitter: https://twitter.com/oshio_at
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