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職業興味とパーソナリティは関連するか

いまではビッグ・ファイブ・パーソナリティが,人間の全体像を理解するひとつのモデルとして君臨しているのですが,かつてはさまざまな理論が乱立していました。もちろん,ビッグ・ファイブ・パーソナリティが確定ではなく,今後も別の理論に置き換わっていくことは十分に考えられることです。そこでは,かつての理論が復活してくるかもしれませんし,形を変えて再生されるかもしれません。

興味

「興味」に注目すると,人間の全体的なパーソナリティの様子を総合的に理解することができるのではないか,というアイデアは,すでに1930年代にアメリカの心理学者ターマンが述べているそうです。

また,早くも1920年代にはストロング職業興味検査と呼ばれるテストが開発されます。その後,長いあいだ,興味とパーソナリティとの関連の検討が続けられてきました。興味を研究することは,動機の個人差を検討することであり,興味の決定要因を理解することでパーソナリティの起源の謎を解くことができる,と主張する研究者もいたようです。


ビッグ・シックス

そんな中,1950年代に,ホランドによって6つの職業興味がまとめられます。6つの頭文字を取って,RIASECモデルと呼ばれることもある,有名なモデルですね。

◎R: Realistic (現実的):人よりも「もの」に興味が向かうので,工学関係や手工業,建築関係などに向いている
◎I: Investigative(研究的):アイデアとものへの興味の両方を備えている方向です。研究者や情報処理業務などが向いている
◎A: Artistic(芸術的):アイデアと人の中間の興味。芸術家や作家,イラストレーターなどが向いている
◎S: Social(社会的):興味が人の方向を向いている。社会奉仕や医療関係,教員やカウンセラーなど人に対する職業が向いている
◎E: Enterprising(企業的):興味がデータと人の方を向いている。企業活動や公務員,管理業務などに向いている
◎C: Conventional(慣習的):興味がデータとものの方を向いている。経理や警備,編集業務などに向いている。

ホランドの職業興味では,職業選択をパーソナリティの表現として捉えていて,人びとは六角形に配置された6つのパーソナリティのタイプのいずれかに分類できると考えています。

ビッグ・シックスとビッグ・ファイブ

では,職業への興味からパーソナリティの全体像を捉えようとするホランドのモデルと,ビッグ・ファイブ・パーソナリティとのあいだにはどのような関連があるのでしょうか。今回紹介する研究は,メタ分析の手法を用いて関連を統合するものです。こちらの論文を見てみましょう(Meta-analyses of Big Six Interests and Big Five Personality Factors)。

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