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理学療法士である私が、理学療法士を批判する

理学療法士だけど…

私は理学療法士。小児を専門としている。
最近は、児童発達支援管理責任者として仕事をしているので、狭義の理学療法士の仕事、つまり訓練担当はしていない。
でも、たぶん子どもの見方は理学療法士であって、保育士や看護師とは違うような気がする。
そんな理学療法士の私だけど、理学療法士の私だから?他の理学療法士の視野の狭さが気になっている。

なんのための、リハビリ?

10年くらい前までは、子どものリハビリ(ケガとかではなく、障害があるとされる子のリハビリ)は小児専門の病院や施設でしか受けることができなかった。最近は、地域差はあるが、訪問リハとか、基本的には大人を対象としているような病院やクリニックでも、子どものリハビリを受けてくれるようになった。これ自体は、すごくいいことだと思う。

しかも、それぞれの療法士が担当している患者さんのうち、子どもの患者さんはとても少ないのに、一生懸命、熱心に考えてくれる人が多い。それはとてもありがたい、んだけど…。すごく上からで失礼な言い方だけど、「ズレてる」のだ。

例えば、
緊張が強くて、身体がかたくなりやすい子がいる。だから理学療法でリラックスしてもらって関節を動かしたり、ストレッチしたり、マッサージしたりする。これ自体は普通のこと。でも、その子はもうすぐ4歳になるのに、通院以外は家から出ない。それでいいの?

療育施設に通っている子がいる。その施設でも十分な量のリハビリを受けている。その上で訪問リハ。療育に遅れないように、朝早くからのリハビリ、帰ってからのリハビリ。何が大切なんだろう。

もちろん、これはお母さんたちの希望でもある。訪問リハだって利益を上げないといけないから、断ることはできないかもしれない。でも。でも。これでいいと思ってるの?自分たちの仕事の範囲はここまでなの?

大きな小児専門病院だってそう。
片道3時間もかかる外来リハに頻繁に来させること。それは子どもの生活にとってどうなの?どれだけのスーパーセラピストであったとしても、子どもや家族にとってプラスになるとは思えない。
逆に遠いからって3か月に1回のリハ。なんの意味があるの?評価することくらい、地域のセラピストだってできる。

じゃあ、自分は?

偉そうなことを言っておきながら、自分はどうなんだろう?
今は、訓練担当をしていないから、同じ土俵に立ってないというのは逃げだろう。
できていたかはわからないけど、個別訓練よりも大切なことはたくさんある、自分は脇役でしかないということを自覚していた。
だから、お母さんたちといっぱい話したし、療育を勧めたし、学校や園の先生たち目線で考えるようにしたし、結果、今療育の場にいるんだと思う。
そういう意味では、私は、理学療法の効果を否定しているのかもしれない。正確にいうと、自分が提供する理学療法が力不足だと感じて、じゃあどうすればいいのか悩んで今の場所にいる。
そして、理学療法だけでは子どもの役に立てる部分は小さいけれど、理学療法士の知識と技術を使って、生活の場で(私の場合は療育の場で)、その子に合った援助や環境設定をすることは意味がありそうだと感じている。

でも、私のような働き方ができる理学療法士はごく少数で、子どもたちは「普通の」理学療法を受けることはこれからも続く。きっと、私の方がズレてるのだ。

「普通の」理学療法の場面で、お母さんたちの、少しでもよくなってほしいという気持ちに応えながら、子どもにとって意味のある積み重ねをしてくことを両立させるのはすごく難しい。色々偉そうなことを書いたけれど、それぞれの立場もあるし、そう簡単できることではない。

文句を言うのも簡単だし、あきらめるのも簡単だけど、それはしたくない。
私ができることなんて、自分の目の前にいる子どもたちのご家族と、その子に関わってくれているセラピストと、たくさん話をして一緒に考えていくことくらいだけど、その積み重ねが必要なんだろうな。


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