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『天使の翼』第11章(33)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 そこでローラは、チラリとシャルルの方を見た。
 「私の事じゃないわよ」
 「まさか、思っても見なかった……」
 「冗談に決まってるでしょ。生真面目なんだから」
 そう言って、彼女は、風にほつれたシャルルの魅力的な前髪をかき上げた。
 (待ってよ!)
 「大公がいかに身勝手な男であるかは、公女たちに対する接し方に如実に顕れているわ。デラを世継ぎとして男勝りに育てておきながら……もちろん、何人かの教育係に養育させて、自分の手を煩わせたりなどしていないのだけれど、いざ彼女が立派に成長してみると、今度は煙たくなったのか、自分に似た性格の第三公女セラを可愛がり出した……」
 「溺愛?」
 「うーん、ちょっと違うわね……相互防衛協定というか、お互いにお互いの性格がよく分かっていて、自己中心的で冷酷なところが、いざという時命取りになりかねないことも分かっている。人間である以上親子の情はあるだろうし、それに加えて、唯一信頼できる二人な訳……気心が知れていて、お互いに対して素でいられるということもあるわ……大公の顔を見ていると分かるのよ――デラと一緒の時は身構えているわ。自分の娘で、一番出来がいいのに……」

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