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『空飛ぶクルマ』~実用化が迫るとやはり気になる安全性~

 夢のようなテクノロジーも、社会的な要請や開発者の熱意によって、やがて現実味を帯びてくる時が来ます。『空飛ぶクルマ』などは、さしずめその典型ではないでしょうか。最近の日経電子版の記事だけでも、【実現近い「空飛ぶクルマ」 日本でも5年後に発売へ】や【大型からバイク、多様な「空飛ぶ車」に淘汰の予感】など、実用化を前提とした記事が出ています。


 『空飛ぶクルマ』がまだ夢でしかなかった頃、SFの世界では、『空飛ぶクルマ』のことを『エアカー aircar』と称していました。一口に『エアカー』と言っても様々なバリエーションがあるでしょうが、概ね次のようなスペックだったと思います――

① 反重力発生装置で空中に浮かぶ。                 ② 地上道から少し浮き上がって地上道に沿って走行する性能。    ③ 完全に地上を離れて飛行する性能。

 反重力という超先進的なテクノロジーで安定して滞空し、地上も空も自在に行き来できる乗り物、というイメージです。反重力発生装置でタイヤから解放された自動車が、空も飛べるようになったという感じでしょうか。


 今回、改めて『空飛ぶクルマ』を調べてみて、現代版『空飛ぶクルマ』は、SFの世界の『エアカー』とはかなり異質なものだという事が分かってきました。その辺りを整理してみると――

① 『空飛ぶクルマ Flying Car』には、明確な定義はないようです。  ② 自動車のように手軽に乗り降りできる移動手段であることがポイント。③ 『空飛ぶクルマ Flying Car』は、2種類に大別できそうです。     ー1.地上を走行できる(小型)航空機。               (空を飛べる自動車というニュアンス)                ー2.地上を走行する性能はない。                  (車道を走行する代わりに空を飛ぶ自動車というニュアンス)      ④ 最も注目を集めている『空飛ぶクルマ Flying Car』はeVTOL    (イーブイトール electric vertical takeoff and landing aircraft)      ー1.電動                             ー2.自動                             ー3.垂直離着陸

 しいて言うなら、SFの世界の『エアカー』と一番近いのは、『③ー1.地上を走行できる(小型)航空機』でしょうか。

 SFの『エアカー』は、架空の反重力を使った完成されたテクノロジーとして理想化されており、安全性はもちろん、ハイスペックなのは言うまでもありません。それに対して、現実の『空飛ぶクルマ』は、様々な可能性を試す完成前の段階であり、UAM(都市航空交通システム)に最適化した機体に特化したりしている訳です。【実現近い「空飛ぶクルマ」】といっても、それは、一足飛びにSFの世界の『エアカー』のようなスーパーカーが出てくるという事ではなく、実現の前には、記事にもあるように社会受容性という高いハードルが待ち構えていることは間違いありません。


 『空飛ぶクルマ』は、自動車の自動運転の場合と同様に、社会受容性が問われる段階にきたと考えられます。「あなたは、『空飛ぶクルマ』に乗りますか?」、あるいは、「あなたは、あなたの頭上を『空飛ぶクルマ』が飛んでいても平気ですか?」と問われた時に、肯定的な回答が返ってくるためには、安全性、最大運用時間・低騒音などの性能面、法整備、離着陸場所の整備、等々の数々の課題をクリアしていく必要がありそうです。

 『空飛ぶクルマ』実現のためには、技術開発と同時に、早期、かつ広範囲での議論を活性化する必要があると思いました。

 

 

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