UX発想はスキルアップのエンジンだ

 この記事【会社説明会の司会で大反省 「見える化」でミスなしに】を最初に読んで、登場する高橋さんの仕事反省術に感銘を受けたものの、その本質までは思いが至らず、その時はそのままスルーしていました。ところが、最近、UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインというものが気になって、あれこれ調べていたのですが、突然、この二つが結びついたのです。高橋さんの仕事反省術、新卒採用の会社説明会の反省⇒次回の説明会の準備、というプロセスは、UXデザインの手法と相通ずるものがあるのではないかと。私は、早速、高橋さんの仕事反省術の要素をUXデザインの言説に対応させてみました(一部推測を含む。あくまで一般論です)。

【UXデザイン】・・・・・・・・・・・・・・・・・【会社説明会における仕事反省術】商品(サービス)・・・・・・・・・・・・・・・・新卒採用の会社説明会商品の機能価値・・・・・・・・・・・・・・・・見やすいスライド等で企業価値を伝達商品のデザイン価値・・・・・・・・・・・・運営メンバーが参加者にどう見られているか               ●疲れた顔・声はNG               ●メンバー同士がお友達サークルに見えないこと               会場の設営状況・ムービーが途切れないetc.商品の経験価値・・・・・・・・・・・・・・・・台本代わりの『6分割シート』を使って、               会社を見える化し、参加者の共感を呼び覚ます。UI(ユーザーインターフェース)・・・・司会者(会社と就活生の接点)にかかっている及びシステム状態の視認性   ●早口でしゃべらない。               ●メモを取る間を作る。               ●おもてなしモードで。               ●参加者の発言にアドリブで対応。ペルソナ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・就活生ユーザーインサイト・・・・・・・・・・・・・就活生が当社の面接を受けようと決心するスイッチは              何なのか、どうやってそこへリーチするのか?              『どうやったら伝わるか』ユーザーニーズ・・・・・・・・・・・・・・・・どんな会社なのか、会社の概要そのものだけでなく、               運営メンバーの生の声(先輩社員・入社動機・               他社員とのつながり等々)なども期待されている。カスタマージャーニーマップ・・・・・・情報収集⇒エントリー⇒説明会⇒イベント⇒面接⇒(フェーズ毎のタッチポイント)   内定⇒検討⇒入社決定(ヒューリスティック)分析・・・・・・・・・『改善マップ』プロトタイピング・・・・・・・・・・・・・・・・『6分割シート』ユーザーアンケート・・・・・・・・・・・・・・『スライドが見にくい』他検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●『4分割の振り返り』               細分化した振り返りはきりがなく、               全部終わってからではヌケ・モレ発生。               ●『手帳の下段のミス記入欄』

直感的に対応関係がありそうだと思ったものの、実際に分析してみて、ユーザーアンケートなどの検証からはじまって、ユーザーインサイトの考察、UIの設定、経験価値のデザイン、プロトタイピングと、UXデザインの全工程が網羅されている感があります。正直驚きました。

この見事なまでの対応関係は――

① 私、武田の思い込みである。② 高橋さんは、UXデザインを学ばれたことがあり、その手法をご自身の仕事に使っておられる。③ UXデザインには、ビジネスツールとして、仕事の反省・組み立てといった、仕事反省術に応用できる普遍性がある。     

――のいずれかであるはずです。

②については分かりませんが、私は、③は真実だと思います。UXデザインの手法は、極めて有効なビジネスツール、ビジネスパーソンのスキルアップ・エンジンと言っていいのではないでしょうか。UXデザインは、商品やサービスのデザインだけでなく、ビジネス、業務一つ一つのデザインにも使える手法なのです。そのような事が起きるのは、UXデザインの手法に内在する、次のような性質によるものだと思われます。

① UXデザインにあっては、何よりもまず、ユーザーの分析、ユーザーニーズ、ユーザーに提供できる体験が重要であり、そのことが、ビジネスの場面では、【相手を知る】という事につながる。② UXデザインにあっては、調査・分析・検証を通して、徹底的に問題・課題を洗い出すことが求められ、そのことが、ビジネスの場面では、失敗・反省・課題を糧として、より良い仕事に【改善していく】という事につながる。③ UXデザインにあっては、プロトタイピングによってアジャイルに作業を進めることがスピーディーな精度アップにつながっており、そのことが、ビジネスの場面では、失敗を糧として【スキルアップ】していく事につながる。

 このように、日々の仕事にUXデザインの手法を持ち込むことは、相手を知って策を立て、失敗を恐れずにスキルアップしていく、という極めて前向きな、ポジティブな仕事術、仕事反省術を獲得するということです。そのような姿勢で日々の仕事に臨めるという事は、本人にとって素晴らしい事であるのはもちろん、周囲からは頼もしく映るに違いありません。

 自分自身を大きなプランの一部、構成要素として客観的に見詰め、課題や失敗を恐れず、逆に改善のシグナルとして貪欲に取り込んでいく事が、第4次産業革命の時代のビジネスパーソンに求められている事だと思います。その際大切なことは、記事に登場する高橋さんの『改善マップ』『6分割シート』『4分割の振り返り』のような、自分独自の仕事法を編み出すことではないでしょうか。自分独自の仕事法が作り出せた時、それは、UX発想の仕事が、付け焼き刃ではなく、身に付いた時です。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30377990R10C18A5000000/

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