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都内で弁護士をしています。スタートアップ支援に従事しています。 日々気になったことや勉強したいことを、この場を借りてまとめています。 2024年は、労務関連の投稿が多めになる予定。

最近の記事

従業員の手当に関する給与規程等の変更の合理性(肯定)-山口地裁R5.5.24

大変ご無沙汰しております。 2023年の活動を通じて、労務のルールの複雑性ゆえに、労務に関して企業の方々が目測を見誤ってしまうことが往々にしてあり、それによって企業活動が思わぬところでスタックしてしまうことがあるなと感じました。 これを受けて、2024年は、労務に関するサポートをもっと充実させていきたいと思っています。 noteの方では、労務については判例が重要ということで、労働判例に関する情報の提供(サマリですが)を行っていきたいと思います。 それでは、さっそく行きま

    • 気候変動を基礎から学ぶ~1.5℃目標と国際合意の歴史的経過

      ※この記事は、気候変動・環境問題の素人による学習のためのアウトプット資料です。あまりに基礎的すぎて恥ずかしいですが、ご愛敬ということで。 地球の平均温度上昇を1.5℃以内に納める努力目標気候変動や環境問題に関してよく耳にする、平均温度上昇の1.5℃目標。 この目標がどこで設定されているものなのかよくわからなかったので、調べてみると、どうやら「パリ協定」で採択されたものであるとのこと。 「パリ協定」 外務省のHPによると、パリ協定が採択されてから日本で効力を発生するまでの

      • AIに刑事責任を問うことは可能か?

        次の問題を考えてみたい。 AIによる制御システムを搭載したレベル4の自動車があった。ある日、その自動車に搭載されたAIが判断を誤ったことにより、誤った制動がなされ、結果、人を撥ねて死なせてしまった。 この事象において、AIに対して、刑事責任を問うことはできるのだろうか。 1.AIの犯罪主体性刑法の世界では、被告人の刑事責任を問うか否かを、構成要件該当性、違法性、責任の3つのフィルターで判断することとなるため、AIの刑事責任を考えるにあたっても、まずはこのフィルターで考え

        • 森さんの発言とジェンダーと。(ダイバーシティに関する一考察)

          先日、森元総理の「女性がいる会議は時間がかかる」発言が、世間で(国境を越えて)非難の対象となっていることを受けて、ふと、「ダイバーシティ/多様性」について考えてみた。 自分も趣味の領域で知り合ったジェンダーフリーな友人がいる。 この間久しぶりに会ったら、髪が肩まで伸びていたので(きれいに染めてパーマをかけていた)、「ずいぶん髪伸びましたね~~」と言ったら、「そうなの。この髪型で、試合の相手めっちゃ動揺するの~」って言ってて、ひとしきり盛り上がった。 ネイルもきれいにして

        従業員の手当に関する給与規程等の変更の合理性(肯定)-山口地裁R5.5.24

          【労働判例】日本郵便(非正規格差)事件(最判R2.10.15)

          1.事案の概要原告:被告との間で、有期雇用契約を締結し、その後更新を繰り返し、郵便物の集配又は貨物の集荷等の郵便外務業務に従事していた者。 被告:日本郵政株式会社 原告らが、有期労働契約社員と正社員との間で、労働契約に期間の定めがあることに関連して、 ①外務業務手当、②郵便外務業務精通手当、③年末年始勤務手当、④早出勤務等手当、⑤祝日給、⑥夏季手当及び年末手当、⑦住居手当、⑧扶養手当、⑨夏季休暇及び冬期休暇、⑩病気休暇 の相違があることが、旧労契法20条に違反するとして提

          【労働判例】日本郵便(非正規格差)事件(最判R2.10.15)

          【労働判例】日本郵便(時給制契約社員ら)事件(最判R2.10.15)

          1.事案の概要原告:日本郵便で、郵便の集配業務等に従事していた者(時給制契約社員) 被告:日本郵便株式会社 原告が、正社員と同一内容の業務に従事していながら、外務業務手当、年末年始勤務手当、早出勤務等手当、祝日給、夏季年末手当、住居手当、夏季冬期休暇、病気休暇、夜間特別勤務手当、郵便外務・内務業務精通手当において、正社員と差異があることについて、労働契約法20条に違反するとして、同条の補充的効力、又は不法行為に基づき、正社員の諸手当との差額分を請求した事案。 なお、労契

          【労働判例】日本郵便(時給制契約社員ら)事件(最判R2.10.15)

          【労働判例】日本郵便ほか(佐賀中央郵便局)事件(最判R2.10.15)

          1.事案の概要原告:日本郵便で、郵便の集配業務等に従事していた者(期間雇用社員) 被告1:日本郵便株式会社 被告2:原告が勤務していた郵便局で部長職を務めていた者 原告が被告らに対し、以下の請求を行った事案。 ①労基法・不法行為に基づく時間外割増賃金の支払い(対被告1) ②有給休暇使用分に係る未払い賃金の支払い(対被告1) ③年賀はがき販売のノルマが達成できない場合における自費による商品買取の強要や被告2による暴言についての不法行為(使用者責任含む)に基づく損害賠償

          【労働判例】日本郵便ほか(佐賀中央郵便局)事件(最判R2.10.15)

          令和元年会社法改正備忘(株主総会資料の電子提供制度)

          1.概要定款に定めを置くことにより、取締役が、株主総会資料の内容である情報を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、株主に対して当該ウェブサイトのアドレス等を株主総会の招集通知に記載して通知した場合には、株主に対して総会資料を適法に提供したものとする制度。 なお、振替株式を発行している会社については、電子提供制度を利用することが義務付けられているため、上場会社は電子提供制度が強制されることになる。 2.会社法改正前の状況株主総会の招集通知については、①書面による議決権

          令和元年会社法改正備忘(株主総会資料の電子提供制度)

          パワハラ防止法について学ぼう。

          今日は、2020年6月から改正が施行された労働施策総合推進法(パワハラ防止法)について、学ぼう。 1.パワハラ防止法とはパワハラ防止法は、法律全体を指すものではなく、労働施策総合推進法第30条の2以下で定められた 「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置」 に関する規定のこと。 もともとこの規定は、2019年6月5日に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」として公布されていたものであり、これがこの

          パワハラ防止法について学ぼう。

          種苗法改正案について考えてみた件

          種苗法改正案について、今国会での成立が断念された、とのニュースに触れたので、種苗法に少しだけかじりついたことがある身として、今回の改正案について少し考えてみた。 とりわけ反対の声が多い「自家増殖に対する育成権者の許諾」について見ていきたい。 1.「自家増殖」とはそもそもなにか?自家増殖とはなにか。 これを解くためには、そもそもの育成権の話からスタートしなければならない。 種苗法は、特許法と構成が類似しており(と書くと知財専門の先生からお叱りを受けるかもしれないが)、あ

          種苗法改正案について考えてみた件

          民法改正要点まとめ ②保証

          今回は「保証」に関する改正を総ざらい。 保証に関する改正のコンセプトは、ずばり「個人保証人の保護を手厚く」。 1.公正証書による保証意思の確認事業のために負担した貸金等債務(金銭の借入、手形の割引によって負担する債務)について、個人(法人の代表者等を除く)が保証契約や根保証契約を締結しようとする場合、その締結日前1か月以内に作成された公正証書によって、保証債務を履行する意思を表示していなければならず、これがなければ保証契約や根保証契約は無効とされた(465条の6第1項)。

          民法改正要点まとめ ②保証

          民法改正要点まとめ ①時効

          主要論点についての要点整理・備忘のためのものです。今後疑問点などが解消されたらこちらに追記していくかもしれません。 時効について、主な改正点は、以下のとおり。 1.時効の期間(1)原則的な債権の消滅時効従前、原則10年だった消滅時効期間について、以下のとおり変更。 ①権利行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年 ②権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年 のいずれか早い方(民法166条1項)。 契約に基づく債権の場合、通常、契約書上

          民法改正要点まとめ ①時効

          J-KISSを基礎から理解する(逐条解説①)~投資契約本体

          昨今のシード~シリーズA前くらいのファイナンスでスタンダードとなっているJ-KISS。 ひな形も整備されており、スピーディに資金調達ができる手段として非常に便利なのですが、最近では、既存のひな形から少しアレンジされた内容もよく見るようになってきました。 また、スタンダードな投資手法なので、中身についてきちんと理解せぬままに締結するケースもあるのではないかと思います。 そこで今回は、J-KISSのひな形を分解しながら、見るべきポイントについて分析してみたいと思います! なお、

          J-KISSを基礎から理解する(逐条解説①)~投資契約本体

          「スタートアップのバリュエーションの変遷とIPO市場の変化」を読み解く

          先日entrepediaのevent reportとしてアップされた「スタートアップのバリュエーションの変遷とIPO市場の変化~日米VC比較、CVC編~」の記事が非常に示唆に富んでおりましたので、備忘と雑感を兼ねて、思ったことをまとめてみたいと思います!(良記事にただ乗りしてしまってすみません。。。) 1.スタートアップの資金調達状況の全体感 (上記記事より抜粋) 調達社数は前年よりも減少(しかも約200社分と大幅に減少)。 これに対して調達合計額3880億円と右肩上が

          「スタートアップのバリュエーションの変遷とIPO市場の変化」を読み解く

          SmartHRシリーズB資金調達に見る、SPV方式による出資方法についての一考察

          とても恥ずかしい話だが、SmartHR社がシリーズCで61.5億円の資金調達を成功させた、というニュースを見るまで、同社のシリーズB資金調達において日本では類を見ないSPVを用いた出資手法が用いられていたことを全く存じ上げなかった。 そこで、恥を忍びつつも同シリーズでとられたCoral CapitalによるSPV方式について考察したいと思う。 なお、手が届く範囲の文献を探してみたが、本スキームについての解説は不見当であったため、まずは頭の体操として、ゼロから、本スキームの特

          SmartHRシリーズB資金調達に見る、SPV方式による出資方法についての一考察

          吉本騒動に見る、企業不祥事の原因とその予防策に関する一考察

          先日、吉本興業所属の芸人2名が謝罪会見を開いたことを受け、今回の吉本騒動を元に、企業不祥事が起きる構造的問題と、それに対する予防策について、本稿で考察してみたい。 1. 一連の吉本騒動の事実経過 以下は、インターネットから収集した情報であり、真偽のほどは定かではないが、本稿では、以下の事実経過を前提として、企業不祥事の構造的問題を紐解いていきたい。 ・ 2019年6月、吉本興業所属の芸人1名が、同事務所を通さずに直接出演料を受け取る形での営業活動、通称「闇営業」の依頼を

          吉本騒動に見る、企業不祥事の原因とその予防策に関する一考察