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サブスクリクション型音楽配信サービスは音楽に光をもたらすのか?

✅徐々に浸透するサブスクリクション型音楽配信サービス

急速に社会で浸透しつつあるサブスクリクションサービスですが、中でも音楽配信サービスは各種サブスクに先行する形で社会に浸透しつつあります。現在、Apple Music、Spotify、Amazon Music HD、TIDAL等々インターネット音楽配信上の有料サブスクリプションと契約することで、「課金契約を続ける限り」各プラットホームのネットワーク上にある曲や音楽アルバムを、自由に24時間365日アクセスすることが出来るようになりました。

サブスクリプションサービス・・・月額課金制の料金設定は、アルバムをCD、LP等のフィジカルディスクメディアでのアルバム購入や、買い切りのダウンロード楽曲データと比べて今のところかなりお得です。音楽をほぼ毎日の様に聴くユーザーであれば、ストリーミング再生したアルバムの枚数で月額費用を割ってしまえば、CDを購入すること自体もはや馬鹿馬鹿しく思えるかも知れません。

CDコレクション

CDやLPなどのフィジカルメディアを数千~数万枚蒐集するのは人生の一大事業です。しかし任意のサブスクリプション型音楽配信サービスと契約しただけで、その瞬間からそれ以上の膨大な音楽ライブラリに自由にアクセスできる様になります。スケール的に、小さな個人図書館 vs 大図書館みたいなものかも知れません。

サブスク型音楽配信サービスを積極的に利用し、ネットワークオーディオを推進する人々にとっての前向きな理由として、収納場所によって生活スペースを圧迫するフィジカルメディアを所有しない事で、よりスマートでミニマムな生活が出来るというのが挙げられます。それに加えて本音の部分では、なによりも「経済的に得をするから」というコスト的な理由が根底にある様にも感じています。

✅サブスク型定額音楽配信「のメリット

1)メディアの収納スペースが要らない

CDやLPそして書籍等は、コレクションの枚数が増えると、それだけ収納スペースが必要になります。数十枚程度ならともかく、数百、数千となると、個人ライブラリのために生活空間をある程度振り分ける必要が生まれます。

2)メディアを入れ替える手間が無い

オーディオマニアの僕が云うのもなんですが、CDやLP等のフィジカルメディアをプレーヤーから出し入れするのは意外と億劫ですよね。フィジカルメディアの場合は基本的に、ディスク単位、アルバム単位で再生するものですから、複数のアルバムに跨がる曲を入れ替えせずに自在に行き来できるのは、インターネット配信サービスやPCオーディオの強みです。

3)経年劣化や破損の危険が無い

CDやLPはラフに扱えば傷等が入り簡単に破損しますし、LPは再生摩耗で劣化します。CDは摩耗しませんが、元々のプレス品質によっては経年劣化によって読み取り不能になってしまう場合も希にあります。買い切りのデータ音源にしても、バックアップが不十分な状況下でストレージが壊れたらその時点で終わりです。

4)入手困難な音源を聴く事が出来る

CD、LP等で廃盤になり既に入手困難な音源がサブスクに登録されていて、聴く事が出来るケースがあります。※但しこの逆もあり、現状では廃盤含め未だフィジカルメディアで無ければ見つからない音源は数多くあります。

5)音楽を聴けば聴くほどコスト的にリーズナブル

月額定額制のため、今のところアルバムや曲後の個別課金が無く、契約中であれば新旧の聴きたいアルバムを今すぐ聴く事が出来ます。キーワードが判れば未知の音源にも即アクセスできるのも魅力ですが、やはりCDで購入する場合には出費が嵩む「最新のアルバムに強い」のはサブスクの大きなメリットです。


✅サブスク型定額音楽配信のデメリット

1)定額課金制の罠

音楽を殆ど聴かなくても定額費用はかかりますので、そもそも音楽をコンスタントに聴かない人達には結果的に割高に成り得ます。そして他の定期課金制サービス契約でもそうですが、契約したまま使わずに課金を続けてしまう層が必ず一定割合で出てきます。

2)課金出来なくなったら強制終了

今、多くのサブスクでは月額でかなりリーズナブルな設定がされていますけれど、フィジカルメディアや旧来のラジオが無くなったらどうなるでしょう?配信サービスを寡占した企業は、間違いなく利益のために「自己基準」での値上げをはじめます。そしてサブスクリプション参加者は、払える限り服従し続けなければならません。

これは貴方が何らかの事情で支払いが苦しくなったり出来なくなった場合、その時点でサービスから退場させられるという意味です。CD/LP含め買い切りの音源であれば、手放さない限り一生貴方と共にそこにあり続けますが、持ち家vs借家と同じく、もし継続的な支払いが苦しくなれば、音楽を共有するコミュニティから問答無用でパージされると云う意味でもあります。

3)メジャーマイナー問わず存在しない音源も実は多い

前述の廃盤云々とは逆ですが、実は各サブスクで探しても一切出てこない音源や、何れかのサービスのみでしか見つからない音源は少なくありません。

日本では特に多いですが、メジャーなアーティストでも、商業的なデメリットとメリットを天秤にかけて大手音楽配信サービスとの配信契約をしないアーティストがいます。マイナーな音楽家については、そもそも所属のマイナーレーベルが契約していない、サブスク側に契約して貰えない、古い録音の権利関係、本人の意思等々で、サブスクリクションで探しても出てこない音源は現状数多くあります。こんな場合でも、今現在は未だ、CDやLPであれば中古ルートを探すと比較的容易に見つかります。

4)ミュージシャンの収入が下がる

ケースバイケースですが、今のところCDアルバムの販売に比べてサブスクでの分配金はずっと少なくなってしまうケースが多く、往々にしてミュージシャン側に利益がまともに還元されていない実体があります。分配金を総取りできるスーパーメジャーアーティストか、実質無料でも、聴いて貰う事にメリットがあると考える無名のミュージシャンしか得をしない仕組みかも知れません。

5)定額課金で集めたお金はどこに行く?

元々、CDなどのフィジカルメディアに金銭面で手が届かない層や、そもそも音楽にお金を出す気の薄いライトリスナー、そして低所得な発展途上国を中心にサブスクへの支持が先に急速に広がったように、サブスクの最大メリットは、ユーザー1人当たりの音楽コンテンツへの課金が少なく済むことであり、お得感こそがサブスク支持の本音、根底にあるのでは無いでしょうか?

但しこれ、裏を返せば当然の如く、ミュージシャン側が得られる収入が、巡り巡って少なくなる事でもあります。サブスクはより安価に音楽を楽しみたいユーザーには優れたシステムですが、現状は分配ルールが不明瞭であり、音楽で生活する人々の首を絞めることになりかねないのも事実です。

正直、従来の音楽業界の著作権料や印税配分もミュージシャンを搾取するレベルで低かったのも事実ですから、音楽で発生する莫大な利益を受け取る先が、旧来のレコード会社周りから別のサブスク配信業者にすり替わるだけかも知れません…( ̄▽ ̄;)。それでも一人一人が音楽に支払う課金が安くなる≒アーティストに支払われるべきパイが更に小さくなる・・・そしてサブスクは著作権料の分配が曖昧で、大半のミュージシャンがこれまで以上に損をする。その結果、サブスクに切り替えることは、従来以上に売り上げが奪われる弱小ミュージシャンの支援にならない事を忘れてはいけません。

金額はサブスク会社ごとに異なりますが、1回あたり0.01円あれば高い方だといわれています。一方、CDならば売り上げの約1%がアーティストに支払われ~中略~自作自演の3000円のCDが1枚売れた場合、アーティストは120円程度を受け取れるというわけです。~中略~しかし、音楽サブスクでは1万回の再生でアーティストが受け取れる金額は、わずか100円程度です。

https://media.finasee.jp/articles/-/10829?page=3


6)初回限定音源や特典その他の付加価値が付かない

昔から日本国内盤だけのボーナストラック付き初回限定盤は良くありましたけれど、それらのボーナストラックが配信音源にも付いてくることは殆どありません。そして特に国内盤のポピュラーミュージック、アイドル、アニメ関連等にではCDそのものが特典盤になっていて、グッズが付いていたり、イベント抽選券、握手券諸々、アーティストと直接交流する為の媒介にもなってきました。クラシック音楽などでも演奏会終了後にCD盤へのサインを求め毎回長蛇の列が出来るのはいつもの光景です。

この様に、CDそのものがコレクターグッズとしての価値を持っているケースについては、無形のサブスクリプションでは補えない温もりだと思っています。そうやって誰かに触れた記憶を形として封じ込めた好きな物に囲まれていたい、それが本当の人間らしさでは無いでしょうか?

7)音質が良くない

これについては必ずいやそんなことは無いと反論されるので、ここは敢えて1人のオーディオマニアとしての主観を述べます。従来のサブスクリプションサービスはCD相当の音楽データを元に配信用に圧縮されていることが多く、単純にビットレート上でも音質が悪くなっていることを証明出来ました。しかし近年ではAmazon Music HD等々、CDを超えるハイレゾ音源での配信や、CD相当のビットレート16bit/44.1kHzや16bit/48kHzでの配信が増えてきましたので、この圧縮音源に纏わる見かけの音質問題については近い将来解決するだろうと考えます。

とは云え、個人的に配信サービスの音質問題は、サービス毎にそもそも音質キャラクタが異なることで、本質的には圧縮やデータ量云々では無いと思っています。即ち、Apple Musicの音、Amazon Music HD/Unlimitedの音、Spotifyの音、配信サービスそれぞれに固有の音質傾向があり、たぶんそれぞれコピーガード(DRM)と共に、音量のノーマライズ等の音質均一化が施されている可能性がある上に、再生アプリの音質がそれぞれ異なること等々が原因では無いかと思いますが、CD、SACDの直接再生とは実際かなり違って聴こえるのです。

デジタルデータですので、再生環境を揃えればストリーミングとCD/SACDの単純な音質差は思ったほど大きくないのですけれど、これはあくまで一般論として客観的に述べた場合の話。こだわりのオーディオマニア視点で見た場合、まぁ越えられない壁、許容しがたい聴感上の違和感が、配信サービス経由の音質から感じてしまうのですよね...(ρ゚∩゚)。ノーマライズのような、リマスタリングされているような、レイテンシたっぷりのPCオーディオのような…。何度かデジタルダビングを経由した雰囲気の音質と云いましょうか…。

これとは別に、音楽アルバムはレコード会社のビジネス的都合も含め、高音質化リマスタリングによる旧盤のリニューアル再販が、特にクラシックやジャズ音源、人気のある古い洋楽等では繰り返し行われています。レコード会社側の建前的にはリマスタで音質が良くなっている訳ですが、リスナー側からすると、こういったリマスターの音質が実際に聴いてみて必ずしも望ましい出来とは限りません。少なくとも音質的に以前とは違う何かになってしまう為、リマスタ前の初期盤や、特定の時期のリマスタ盤を好む音盤蒐集マニアも存在します(管理人もその1人です)。

音楽配信サービスの場合、レコード会社側の都合上、基本的に自動で最新リマスタ音源に挿し替わってしまいますから、以前のマスタリングの方が音質が好みだったのに…という現象に突き当たっても後戻りは出来ません。

こういった違和感は再生システムが高度になるほど明確化されるため、再生機器に拘るオーディオマニアほど、音楽配信を受信再生するストリーマーとCD/SACDプレーヤーとの音質的な差異を大きく感じることになります。元データの違いに加えてネットワークプレーヤーとディスクプレーヤーの格差もある為、同一音源のCD/SACDと比べてしまうと、配信音源はイマイチだな~と感じるマニアが、僕に限らず少なくないと思われます。

8)いつのまにか無くなる音源がある

これも配信サービスとの契約が終了した際に、何らかの理由で更新が止まった音源やレーベルがまるっと消えてしまったり、更に問題なのが、ミュージシャンの不祥事や発言、その他国際政治的な理由等々で、ある日を境にそのアーティスト関連のアルバムや曲が全て配信から消えてしまうケースが既に度々起こっている点です。

日本でも、電気グルーヴのピエール瀧槇原敬之沢尻エリカCHAGE and ASKAALI等々、ミュージシャン、芸能人の不祥事によってCD・DVDが回収されたり、過去の配信音源がその日を境に無くなってしまった例など既にいくつもあります。しばらくして復活するケースもあるでしょうが、その時々の社会的倫理意識や政治的状況により、半永久的にリジェクトされてしまう芸術家、音楽家が何れ出てこないとは限りません。

社会的に鑑みて~とか、犯罪者の音楽なんてまっぴら~というのは勿論理解出来ますが、「作品無罪」という見方をする人々も当然いますし、該当アーテイストのファンだったら尚更でしょう。特に個人よりも共有が重視されるこれからの社会では、犯罪の定義の中に、思想や発言内容が、図書館戦争の如く、政府見解や社会通念と相反するといった理由でメジャーコンテンツサービスから排除される世界が来ないとは云えません。

ある日突然、好きだったあの曲が消えて無くなります。

こんな時にも、既に入手済のメディアであれば自分自身が聴く音源は失われませんし、表舞台から消えたCD・DVDについても、ネットオークションなど各種中古ルート等々から何だかんだと入手可能だったりしますから。

フィジカルメディアが完全に廃れて人々が音源を個人所有しない社会になった場合、どんな音源を聴くべきか?どのアーティストを社会的に認めるべきか?と云った判断を、権力や社会など、他者の判断にまるっと預けてしまう事になることを忘れてはいけません。そもそも配信業者は時の社会的要請には逆らえません。有形メディアを捨ててサブスクのみに頼ることは、音楽の価値に於いても、権力や企業の判断を全面的に信頼する委任状にサインをするようなものでは無いでしょうか?

✅~まとめ~サブスクは音楽に光をもたらすのか?

以上、新時代のサブスクリプション型音楽配信サービスが抱えるメリットとデメリットについて述べてみました。まとめると、

  • 邪魔な有形メディアが無くなる

  • 音楽への出費が抑えられる

  • その結果、ミュージシャンの収入が減る

  • 配信コンテンツが消える場合がある

こんな感じかと思います。メリットとデメリット、どちらを重視されるかは皆さんそれぞれの価値観次第ですけれども、実際には光があれば闇もある。メリットしかない的な勢いでサブスクに全振りしてしまった近未来…その結果起こるであろう様々な不都合を刈り取る事になるのは、リスナーの皆さん自身になることを忘れてはいけません。

そして箱庭的"AUDIO STYLE"管理人は予てより意思表示しているとおり、音盤、フィジカルメディア原理主義者です\(^o^;)/。サブスク 音楽配信サービスについては、アナログ時代のFMチューナー的な位置付けで併用するスタイルには肯定的ですが、あくまでオーディオのメインは音盤蒐集と再生です。次回は、CDやLPなど、有形音楽メディアの個人所有に僕がこだわり続ける理由について書いてみます。

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