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【詩】平和のように

花の名前はどのように決まり
どう受け継がれてきたのだろう
曽祖母も祖母も
なぜあんなにたくさん
花の名前を知っていたのだろう

あれはなに
おしろいばな
のうぜんかずら
さるすべり
きれいかねぇ

手を引かれ歩いた細い道
夕方の太陽の色をした実を
あるいは道端にこっそりと色づく
赤紫の丸い点々を
指さしては首を傾げた

あれはなに
からすうり
へびいちご
たべれると?
たべれんとよ

あれはわたし、それともあなた
ずっと昔、あるいはずっと先の

教わった数々の名前たちを
どうしたら忘れずにいられるだろう
世代や世相が変わっても
変わらずにあるものを
どのように手渡してゆけるだろう

たとえば花の名のように
たとえばそう、平和のように

受け継がれてきたものを
生み出され、維持されてきたものを
わたしも
いつか来る夏の夕暮れ
わたしよりも小さな手のひらに

・・・・・・・・・・・・

今はもう亡き曾祖母、祖母の声を、夏にはよく思い出します。大きな戦争の時代に生きた人たちのことを思いながら、8月。

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