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映画校卒が選ぶ映画5選

阿吽です。
いや、大喜利のnoteじゃないんかい。と思いましたか?
今更大喜利で書くことなんて実績が全くないし誰かに教え示すなど差し出がましいのでただ好きな映画を綴ります。

少し自己紹介

実は高校を卒業してから映画制作の勉強に励んでおりました。それはそれは厳しい環境で、リアリズムの権化のような講師にたくさん扱かれ、ファンタジー映画を撮りたいと夢見た学生は1ヶ月と経たずに消えていきました。
映画好きを自負して入りましたがその自信も簡単に折れ、そこからとにかく映画を観ようと決めました。

学生生活の2年間で1000本以上、今でも年間250本は映画を観る私が選ぶ、珠玉の5選です。


はじめに

映画好きにとって「好きな映画を5個選べ」は嫌で難しい質問です。不朽の名作を挙げればキリがないので。
なので、今回はあまり知られていない。具体的な数値で言えばFilmarksのレビューが2万以下の作品に絞って選びました。(それでも難しかった)

※おすすめというよりは阿吽の好きな映画紹介です!映画の評価は賛否分かれるものですので「こういうのが好きなんだな」という感じで多めに見てください!「俺もそれ好き!」という方がいたら本当に奢るので飲みましょう!

息もできない(2008・韓国)

監督:ヤン・イクチュン
あらすじ
金の取り立て屋をしている男は、母と妹を死なせた父親に
対する激しい怒りと憎しみを抱えて生きていた。そんな彼は
ひょんなきっかけで強面の自分に対して怯むことなく突っか
かってくる女子高生と知り合う。
やがてそれぞれに傷を抱えて生きる2人の間に奇妙な交流が始まる。

オールタイムベストであり、天才ヤン・イクチュンの鮮烈デビュー作品。
彼は、監督だけでなく制作・編集・脚本・主演までこなしています。(日本の「あゝ荒野」にも出てますね)


以下、ネタバレありなので嫌な方は飛ばしてください!

久々に邦題が刺さっているなと思う作品。
治安の悪い映画なのに純愛という言葉がぴったりで後半はタイトル通り、息ができない、苦しい。

特筆すべき点は手持ちのカット、映画の常識を覆すような画が続いて「苦しい」を助長している。
雑さの中にリアルが、表情にヤンの細かい演出が隠れている。ヒロイン、ヨニ役のキム・コッピもこれまた絶妙でヤンのキャラがより際立つ。

映画人生で1番のシーンがこの映画にある。
それは、堤防で2人が落ち合い、静かに涙を流すシーン。
抜け出したくても抜け出せないレールの上で2人は弱さを見せ合う、本当の意味で一緒になった瞬間。
もうここの部分だけでも見てほしいくらいに好きな作品。

ただ、暴力シーンや暴言がたんまりの作品なので苦手な方は推奨しません!

配信はなし、DVDレンタルのみ
(1/21現在)




真っ赤な星(2017・日本)

監督:井樫彩
あらすじ
家にも学校にも居場所のない14歳の少女・陽は、入院先の病院で
優しく接してくれた看護師の弥生に特別な感情を抱き始める。
しかし弥生は突然病院を辞めてしまう。
1年後、陽は弥生と偶然の再会を果たす。彼女は、男たちに身体を
売って生計を立てていた。
行き場のない陽は、吸い寄せられるように弥生の家に転がり込む。

井樫監督は個人的にご縁がある方でして、公開日に観させていただきました。
学生にして初の長編作品「溶ける」がカンヌへ出品されたのは記憶に新しいですが、今作も井樫節が隅々まで現れています。


以下、ネタバレありなので嫌な方は飛ばしてください!

説明セリフの少なさにまず驚いた。
昨今、MV映画と揶揄されている映画が多く公開され「エモい」で括られがちだが、この映画にはそれがない。
映像で魅せる映画は多くあるが井樫監督はピカイチで上手い。
役者に「つまんないなー」と言わせるのではなくベッドから足をパタパタさせてる煽り画を撮る、そういった画で魅せる映画だったので個人的にはすごくのめり込めた。

「普通の仕草」を詰めて演出するのでリアルさが如実に出る。食べる・寝る・起きるだけで人物像がわかる。見落としがちというより敢えてそこを詰めることでこの映画の説得力がより増していく。

また性差故の視座なのか、距離感がとても良い。
女性が観る場合と男性が観る場合で全く感想が違うと思う。
底を知った桜井ユキの演技は最高だし最後に優しさが見えるのがとても良かった。

Amazonプライム、FODで配信中
(1/21現在)




フレッド&ドードー(2019・イギリス)

監督:Barbara Elbinger
あらすじ
高齢夫婦のフレッドとドリーン。
定年退職の現実を受け入れず家でゴロゴロするだけの夫フレッドに
妻ドリーンは苛立ち、二人の結婚生活に初めて亀裂が入る。
ある日、劇を利用したグループセラピーのチラシを見つけたフレッド
は自分自身を見つめ直すため、そして結婚生活に必要な魔法と音楽を
取り戻すためセラピーに通い始める。
しかしドリーンはフレッドの“馬鹿げた”振る舞いに恐怖を覚え、、、

ショートショートフィルムフェスティバルで公開されたイギリスの短編映画です。
この映画も当時鬼のように勉強していた僕にとってはいい意味で裏切られる作品となりました。


以下、ネタバレありなので嫌な方は飛ばしてください!

演出を勘案するのは愚策なのでは…と感じるほど素直な作品。
当時は演出方法や展開、伏線などを脳が焼き切れるほど考えていたのでこういう映画は新鮮だった。

定年退職した夫とそれにイライラする妻
変わらない日常の中に突然やってきた「無」
「笑われるけど幸せ」と「常識的だけど不幸せ」の間を描いた作品だが、圧倒的前者だな、他の人の目なんかゴミだと思える。

17分とは思えない濃厚な作品。

配信はなし
(1/21現在)




MINAMATA-ミナマタ-(2020・アメリカ)

監督:Andrew Levitas
あらすじ
1971年、ニューヨーク。
アメリカを代表する写真家の一人と称えられたユージン・スミスは
今では酒に溺れ荒んだ生活を送っていた。
そんな時、アイリーンと名乗る女性から熊本県水俣市にあるチッソ
工場が海に流す有害物質によって苦しむ人々を撮影してほしいと
頼まれる。水銀に冒され歩くことも話すことも出来ない子供たち
激化する抗議運動、それを力で押さえつける工場側。
そんな光景に驚きながらも冷静にシャッターを切り続けるユージン
だったが、ある事がきっかけで自身も危険な反撃にあう。
追い詰められたユージンは、水俣病と共に生きる人々にある提案を
して彼自身の人生と世界を変える写真を撮る──。

割と最近の作品なので覚えてる方も多いのではないでしょうか。
個人的にカメラマンの映画はハズレがない+ジョニーデップなのでこれは観なくてはと思ってた映画です。


以下、ネタバレありなので嫌な方は飛ばしてください!

冒頭、たった数秒間の母子のカットで傑作だと確信した
ジョニーデップが写真家、これだけで安易に観たいと思ってしまったことに大後悔。同時に感服し制作陣への感謝が湧いてきた。

流れてきたのは何の偽りもない事実。このあまりにもセンシティブな題材にはリアルさが不可欠。制作陣はさらに理解を深めるため400頁にもわたる参考資料を全スタッフ、キャストに配ったのだそう。その熱意の結果がこの映画を嘆美する声に繋がっていると思う。

もちろんキャスト陣制作陣も妙妙たるもの。アメリカ映画とは思えない日本人キャストの数。美波、浅野忠信の存在感。國村隼、加瀬亮という激渋配役。ジョニーデップは言わずもがな、ユージンスミスそっくり。ポスターを一目見た時すぐにジョニーデップだと気付かなかった。
特筆すべきは撮影監督のブノワドゥローム。彼の画作りには驚かされてばかり。映画に入り込める要因の1つだと思う。

そして、エンドロール。
ラスト20分からエンドロールまでずっと頭を抱えていた。世界中の公害がスクリーンに映し出された時名状しがたい感覚に苛まれた。それは「映画」の力を使った全世界へのメッセージなのだと時間が経ち感じた。

間違いなく2020年Best3に入る傑作。
水俣の街が変化したことにより難しい撮影もあったと思うが、この映画が多くの人の心を動かし意味のあるものになっていくと確信している。
「写真は撮るものの魂さえ奪う。本気で撮れ」

Netflix、FODで配信中
(1/21現在)




岬の兄妹(2018・日本)

監督:片山慎三
あらすじ
とある地方の港町。
足に障碍を抱え、リストラされたばかりの兄・良夫は
自閉症の妹・真理子と2人暮らしをしていた。
妹の失踪癖に手を焼いていた良夫はある日、夜になっても帰って
こない妹が町の男に体を許して1万円をもらっていたことを知る。

まず、この作品はFilmarksレビュー2万を超えています。すみません。でもどうしても入れたかったので紹介させてください。
本当に苦しいです。個人的には「ミスト」よりも鬱映画だと思っています。けどみんなに観てほしい、そんな映画です。


以下、ネタバレありなので嫌な方は飛ばしてください!

貧相な語彙力では曰く言い難い激重映画
つらい、つらすぎる。
この形容できない感覚に苛まれる兄と超絶体当たり演技の妹、主演2人が八面六臂の大活躍。
むっっっちゃくちゃ人間臭い兄と役を「生きている」妹。松浦さん和田さんには皮が剥けるほどの拍手を送りたい。

現実で起こり得るストーリーが故にグサグサと心を抉ってくる。演技やストーリーだけでなくカメラワークや照明も秀逸でサラッと出てきた数枚の静止画ショットもめちゃ好き。

邦画史上屈指の問題作。
あと、ポスターがめちゃくちゃいい。

U-NEXT、DMMTVで配信中
(1/21現在)



おわりに

以上、5つの映画の紹介でした!
まだまだ、紹介したい映画がたくさんあるのと観てない映画も死ぬほどあるので引き続き年間250本のペースで観ていきたいと思います!

阿吽でした。あう〜ん

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