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寒い季節になるとどうしても読み返したくなる物語がある

 12月、住んでいる地域が一番冷え込んだ日の夜、布団の中が自分の体温で
暖かくなるのを待ちながら、「ああ、こんな寒い日はあの物語が読みたいな」とふと思い浮かんだ。

春や夏や秋ではなく、冬になると思い出す物語があります。
ある本の中にある一つの物語です。
それがこちら。

池澤夏樹先生の「きみのためのバラ」に入っている、「都市生活」である。
私の手元にあるのは文庫ではなく単行本なので、収録作品の順番が文庫でも
同じかはわからないのですが、一番最初に収録されている物語です。

空港で予約ミスをして、乗る飛行機を逃してしまった一人の男の物語。
本当に何気ないし、こんなことを言ってもなんだけど別に大きな事件が
起きるわけでもない。
翌日にまた空港を訪れるために近場のホテルを探して、とりあえず様々な
小さな日常の一場面ごとにおこる苛立ちを空腹のせいにした男は、歩いている途中で、感じのいいビストロを発見し、店に入る。
そこである女性に出会うのですが…ここで再度言いますが、大きな事件は
おきませんw

日常でも実際にこんな経験をしたことがある人は、居そうな気がします。
でも、実際にあったならなんて小説のような経験なんだろうとも思う、
そんな不思議な余韻を得る物語です。

男がビストロで料理を選ぶ場面がなんだか好きなんです。
私、彼の頼む料理の食材、食べられないんですが、読んでいると男と
一緒に料理が出てくるのが待ち遠しくなるのです。

大きな感動があるわけでも、冒険があるわけでも、学びがあるわけでもないけど、小さな感情の動きが素晴らしく愛おしくようなそんな物語だと
思います。少なくとも、私は、ですが。
この物語を読んで、どう感じるかは人それぞれです。
何を得るかも。

久しぶりに私も再読します。
他の物語も素晴らしいとは思いますが、再読するのはこの物語だけなんです。
皆さんは、季節を感じると読みたくなる物語ってありますか?

もし、冬の夜長に読んでもいいかと思われたら、どうぞ読んでみてください。

今年もたくさん、新しい物語に出会いたいと思います。
また出会った物語を再度読みたいと思える気持ちも、大切にしたいと思います。

今日は、ふと思いついたので、記事に書いてみました。
どうぞ皆さんも素晴らしい読書時間をお過ごしください。

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