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Rider's Story 仲間たちの集まるところ

割引あり

バイク小説短編集 Rider's Story 僕は、オートバイを選んだ
 武田宗徳 オートバイブックス 収録作品


 もっちゃんが店に来なくなって三ヵ月。もう、季節が変わろうとしていた。

 「マスター、水くれ」
 喫茶店「止まり木」のカウンターで、俺は言った。
「たまにはコーヒーのおかわりしてください」
「だってさ、金ないんだもん」
 職を転々としている俺は万年貧乏だ。いっちょうらの革ジャンは、年季が入っている。愛車は、カワサキゼファー400。

「マスター。タケシの貧乏は今に始まったことじゃないよ」
 太った中年の近藤さんが口を挟んだ。近藤さんは、今日もダートを走ってきた帰りなのだろう。これまた年季の入ったオフブーツが泥だらけだ。愛車はホンダXR BAJAだ。

「あの……」
 カワサキW650を駆る紳士、木村さんが声をかけてきた。

「皆さん、気になりませんか」

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