ひなた

気まぐれ internet debris

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「障害者」と「健常者」のはざまで

電車の中で大人が1人で騒いでいる。 その人には何かしらの「障害」がありそうだと、その場にいた私は直感した。 周りの人は一瞥して何かを察し、何事も無かったかのようにスマホに目を戻す。 ぶつかられそうになった人はただ黙って車両を変える。 私も、無反応を決め込んでいた。 自分もこうして社会から存在がなかったことにされてしまうのではないかという恐怖に怯えながら。 ・・・・・・ あの場で「健常者」だった私は、別の場面では支援が必要な「障害者」だ。 いつでも「立場」が逆転すること

    • はるか彼方へ

      暗い。何も観えない。 確かにそこに何かは見えているのに、それが観えない。 今まで何度、他人の優しさに救われてきただろうか。 そして何度、見捨てられてきただろうか。 優しさを知ってしまった分辛いのなんて当然で。 だったら最初から辛い人生しか知らない方がきっと楽で。 あと1年耐えれば、と人は言うけれど、今からスタートの1年じゃない。 今まで散々耐えて耐えて耐えて、限界を迎えて。 そこからのあと1年がどれほど残酷なものか、誰も解っちゃいない。 しかも、1年経ったからといって解

      • なぜ薬が飲めないのか

        私は薬を飲むのが苦手だ。 どれくらい苦手かというと、薬を飲まなければと思ってからポーチに手を伸ばすまで1時間はかかる。 服薬以外のやるべきことを全て終わらせた時、気づいたらスマホやパソコンを開いてネットサーフィンをしている。 無意識に逃避してしまっている。 酷い時には包装から取り出してにらめっこしたまま2時間経過したこともある。 無理すぎて2時間ずっとSNSで大騒ぎしていた。 フォロワーからしたら2時間の葛藤をずっと実況されて、迷惑もいいところだ。 主治医に服薬に毎日2

        • 新陳代謝

          私が高校の時に通っていた街が、再開発の波に飲まれている。 訪れるたびに変わってゆくその街を見て思ったより寂しさを感じないことに、一抹の寂しさを覚える。 ・・・・・・ その駅から高校は、基本的にはバスを使う距離だった。 その距離を徒歩で帰るのは、放課後の教室を追い出された生徒が、名残りを惜しむかのように歩きながら雑談の延長戦を繰り広げる場合くらい。 どうせまた明日も会うのに、そんな他愛のない話でよくも飽きないものだ。 それでも、毎日のように歩いている人は見かけたことがなか

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        「障害者」と「健常者」のはざまで

          睡眠薬で、初夢を。

          初夢、という文化がある。 いろいろな説はあるものの、だいたい、新年最初に見る夢らしい。 富士山とか、鷹とか、茄子とか、を夢に見ると縁起が良いとか。 そんなの、残りの364夢を足したってこの1年で1度も見なかったけど。 そういう状況で初夢に出てくるからこそご利益があるのか。 でも、その"眠り"を、"夢"を、薬にコントロールされているとしたら? ・・・・・・ 睡眠薬を飲むようになったのは、昨年の春。 その前の夏に不眠症状が顕著になって初めて睡眠薬が処方された。 その日は事

          睡眠薬で、初夢を。

          しんどかったらおいで、が居場所の合図。

          振り返ると、そうだった。 いままで私を受け入れてくれた場所の人は、みんなこう言ってくれた。 ・・・・・・ 一番昔で覚えているのは、小学校2年生のとき。 文脈は忘れてしまったけど、「放課後でもいいから家で何かあったら学校に来なさい、先生も一緒に謝りに行ってあげるから。」と担任が話していた。 当時は、そんなことしないでしょ、と思っていたけど、いま思うとあれはもしかしたら子どもの命を救うかもしれない一言だった。 私が小学校時代を過ごしたのは、虐待なんて普通に耳にするような、荒れ

          しんどかったらおいで、が居場所の合図。

          次の旅に向けて —紀行、2023夏③

          (さいしょ。) 去年と違って、私は最後まであの街の一部になることができなかった。 観光地ばかり巡っていた部外者に過ぎなかった。 私はあの街を愛せていただろうか。 仕事から離れて満喫しようと意気込んだ分、それが呪いとなり、苦しくなってしまった。 まだ自分の過ごした場所の周りのことすらよく知らないのに、パッケージ化された体験を一つでも多くかき集めようとしていた。 当然満たされなかった。 身体が疲れていても、強迫的になった私は動くことをやめられなかった。 そして結局精神的に

          次の旅に向けて —紀行、2023夏③

          リスになりたかった —紀行、2023夏②

          (ひとつ前。) 自然の中を歩いて、突然、あぁここで死ぬのかなぁ、と思った。 誰もいない山の中腹でお昼ご飯を食べていたら、目の前の小川に、一匹の小さなリスが水を飲みに来た。 茂みの中に戻っていく小さな命に対して、私は心の中で、強く生きるんだよ、と語りかけていた。 自由に森林の中を駆け回っているであろうリスに、私は自分を重ねていた。 彼のようになりたい、と思った。 はっきりと、心細い、と思った。 結局そこから一番上まで登って、来た道を下り、バスで元の街に戻る頃には真っ暗だった

          リスになりたかった —紀行、2023夏②

          新たな街へ —紀行、2023夏①

          今年も休みを取った。 去年の休暇の後に現実との落差で苦しくなったけれど、一度自由を知ってしまったからには後の苦しみを見て見ぬ振りしてまで自由を欲してしまうのだ。 期間は5日間。 今回もまた偶然に次ぐ偶然で、縁もゆかりもない地に滞在先のつてがあったので、そこで過ごすことにした。 ただし、飛行機を使わないといけない場所で、去年よりも多少はりきった準備が必要だった。 去年より短いけれど、現地でも仕事をしようとしていた去年に比べ、今年は初めから周囲に休暇を宣言してその間だけは会議

          新たな街へ —紀行、2023夏①

          精神科の薬を飲む決断

          気づいたら私の人生に嬉しくない色を添えていた「死にたい」「消えたい」という気持ち。 長年助けを求めることができない環境にいるせいで、いつしかそれが私にとっての当たり前になって、助けを求める気すらなくなった。 そんな折、健康診断で答えたアンケートの結果が少々まずかったらしく呼び出され、混乱したままあれよあれよという間に病院の予約を取られた。 いままでも同じように答えていたのに、なぜあのタイミングでつかまったのかはよくわかっていない。 きっと状況が“大いに”まずい人は、その場で

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          この世に居場所がない

          この世に居場所がない。 あちこちを放浪して息をしている。 落ち着ける場所がない。 何のために息をしているのかもわからない。 もがいてももがいてもどんどん溺れていく。 常に過呼吸寸前。 24時間、苦しみから逃れることはできない。 ・・・・・・ 今は実家で暮らしている。 暮らしているというか、そうするしかなくてただ意味もなく苦しんで生かされているといった方が正しいのかもしれない。 形だけの自室(これも成人してから与えられた)はあるが、家族はノックもなく勝手に入っ

          この世に居場所がない

          肉体の死と記憶の死

          人は二度死ぬと、誰かが言った。 一度目は、肉体的な、医学的な、実体としての死。 二度目は、忘れられることによる、記憶の中での、死。 私はいま、実体としてこの世に存在しながら、記憶の中での死と対峙する。 ・・・・・・ 高校生の頃。 その前もその後もだけど、その時も家にいるのがしんどかった。 下校時刻を過ぎて学校から追い出された後や、学校の空いていない土日には、子供たちを支援する団体が開いていたスペースで過ごしていた。 とはいえ公開しているスペースなので、私は特に事情も

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          ことばのちから

          どんな状態でも私は自分の言葉に責任を持てる人でありたい。 言葉に傷付けられ、そしてその分言葉に救われてきた私だから。 ・・・・・・ 離人している。 相手が怪訝な顔をしている。話が噛み合わない。自分も何を話しているのかよくわからない。自分の口から音声が発されていることはぼんやりとわかる。 後々、相手の発言や反応から、当時の文脈を合わせて自分の発言を大まかに推測した。 そりゃあこの歳までこの脳みそでやってきたのだから、多少は自分の発言がわかるものだ。 相手を傷つけた。 そ

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          明太子とカミングアウト

          私は小さい頃から、コンビニなどでおにぎりを買う時、明太子を選べなかった。 親から「それは大人の味だよ」と言ってやんわりと止めていたから。 辛いものを食べて苦しい思いをすることがないようにという親心だったのだろう。 しかし私は、自分で出来ないことをやってみて失敗する、という経験からも遠ざけられていた。 何度言えば分かるんだと親に言われるのが怖くて、親の前で明太おにぎりを選ぼうとすることは自然と無くなった。 自分が明太子に手を伸ばすことに、背徳感を覚えるようになった。 気がついた

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          「精神病」の具合の悪さ

          いつだろう、この文章に出会ったのは。 ただ一つ確かなのは、私が「精神病」になってからであるということだ。 ・・・・・・ 数年のあいだ人生を共にしてきた「死にたい」「消えたい」という気持ち。 あるとき人にそれを勘付かれ、その気持ちは普通ではないと言われてその場で病院の予約を取らされた。 気持ちが追いつかないまま、1週間後には診察室で精神疾患だと宣告されていた。 私が人生を共にしてきた、当たり前のようにそこにあった感覚が、一気に「精神病」の症状になってしまった瞬間だった。

          「精神病」の具合の悪さ

          世界を離れて宇宙旅行へ

          私は、「離人」と呼ばれる状態に陥ることがある。 離人とは、「自分が自分の心や体から離れていったり、また自分が自身の観察者になるような状態を感じること」だと、辞書は言う。 ・・・・・・ 初発は中学2年の時。 精神医学上‘異常’とされる諸症状の中で、一番最初に経験したのが離人だった。 離人感は常時出現している訳ではなく、出現が認められない時期もある。 いまだに一度出現すると一週間から数ヶ月程度持続するが、ごく稀に一日程度で消失することもある。 離人の世界とこっちの世界を行っ

          世界を離れて宇宙旅行へ