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EQUILIBRIUM『Sagas』(2008)

ドイツはバイエルン州出身のシンフォニック・フォークメタルバンドEQUILIBRIUM

2005年Black Attakkから彼らの1stアルバム『Turis Fratyr 』をリリースするもあまり話題にはならず、その後Nuclear Blastと契約し、2枚目となる『Sagas』でブレイクする。

しかし2010年、Winterfire Festivalに出演するはずだったバンドは直前でキャンセル、その後初期メンバーでもあったVoのHelgeとDrのManuelの対立が表面化し、両者ともバンドを脱退する。
バンドは新たにVrankenvorde というバンドでVoをつとめていたRobert "Robse" Dahnと、Tuval "Hati" Refaeliをドラマーとして加入させ、2010年に『Rekreatur』を完成させるが、その後もメンバーチェンジが相次ぎ、アルバムのたびにメンバーが違うという事態になる…

今回紹介するのは彼らのHelge在籍時の荒削りながらも野心と希望に満ち溢れていた一枚、『Sagas』。
16分とかいう野心に満ち溢れすぎた曲もあるが、若々しい勢いとメロディセンスがたっぷりと詰まっている。

Sagas



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* Helge Stang − vocals
* René Berthiaume − guitar
* Andreas Völkl − guitar
* Sandra Völkl − bass guitar
* Manuel DiCamillo − drums
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■Prolog Auf Erden            
勇敢でシンフォニックな行進曲。
開幕でこの曲を持ってくるあたりただものではない。
高速ブラストビートにひたすら喚き系のシャウトを無理やり被せていく。
そんな大変なことになっているのに、全くお構いなしに高貴に響もすケルティックかつシンフォニックなサウンド。
衝撃の一言。

■Wurzelbert                
トレモロリフに軽快に跳ねるようなリズムで走る疾走チューン。
もはや0.1㍉も解読させる気がないギャーギャー喚き系のスクリームに慣れるまでに多少の時間は必要だが、裏で流れる民族的な良メロに注目していると、自然と頭の中で融和されていく。
そして完全に受け入れた4:00過ぎからのラストスパートは聞きどころです。

■Blut Im Auge               
Helgeの人生を賭けた渾身の喚き散らし
「イ″ヤ″ア“ア″ア″ァァーーー!!」が見事に冒頭でキまると同時に物凄い勢いのクサメロが流れ出してくる。
彼らの認知度を飛躍的に上げた代表的な疾走シンフォニックメロデス。


■Unbesiegt                 
南米の熱い風を感じるリズムに、管弦とケルティックの民族メロディを合わせる事で劇的な化学反応を起こす事に成功した曲。
バイキングメタル多しといえど、このタイプはEQUILIBRIUMにしか出せない唯我独尊のサウンド。


■Verrat                    
極悪アグレッシブネスとスピード違反級のリフで興奮の渦に突き落とす曲。
途中でモダンメロコア的なグルーヴィーなパートをブチ込んだと思いきや、次の瞬間にはいつものシンフォニックなサウンドがそばにいる幸せ。


■Snüffel                   
冒頭は90年代のメタルバンドを思わせるような印象的なギターリフ、そして極端にザクザク刻むギターで早速正座して期待に胸を踊らせてしまった自分がいた。
Voの早口喚きが始まった瞬間に裏で流れるシンフォニックなストリングスで、いつものEQUILIBRIUMな事に気づくが、3:26あたりからの縦ノリのリズムはやっぱり明らかに90年メタルを意識してるし、RenéとAndreasが交互にギターソロをかます様も古き良きジャーマンメタルをオマージュしているのではと思ってしまう。
まぁとにかく最初から最後までメタルなギターオリエンテッドでカッコいい曲。


■Heimwärts                  
ブルータルなグルーヴに民族的なニュアンスをデコレーションした疾走曲。
他に比べるとコンパクトにまとめたナンバー。

■Heiderauche                 
アイリッシュホイッスルかケーナか分からないが、民族の笛が優しく頬を撫でるように響き渡るインスト曲。


■Die Weide Und Der Fluß          
前曲の雰囲気のまま、よりアトモスフェリックに拡張させていき、壮大な男性クワイヤ等も混ぜながら展開する雄大なシンフォニックナンバー。
プリミティブなギターサウンドも、似つかわしくないキーボードのピロピロサウンドも、ストリングスたっぷりの音塊も、それぞれが最初から自然にそこにあったかのように曲の構成の一部となって新鮮な音像を創り出している。
ただ、情報量が多すぎて、理解するのには7分は短過ぎる。

■Des Sängers Fluch             
荒野メロディが印象的なミドルテンポナンバー。
旅人が往く旅の行程を堂々と語るように、
焦る事も疾走する事もなく、ただゆっくり歩いていくような曲。
ただ、こういう曲の場合はやっぱりHelgeの声質が気になっちゃうな…

■Ruf In Den Wind               
一転、ケルト民謡の熱を帯びたリズムに合わせて軽やかに疾走を始める。
アイリッシュ笛の音色が、激しいツーバスとギターに絡まり、なんとも心地よい。


■Dämmerung                  
広大な草原で、遮るものとてない鳥の飛翔のような無縫の響きが胸に残る。
途中からスピードが早くなるも、そのメロディの雄大さは途切れず、曲全体のモチーフとして緩やかに君臨している。


■Mana                      
このアルバムの集大成でありながら、初期Equilibriumを彼らたらしめているエッセンスを全て凝縮したインスト曲。
つまり、
叙情的な民族メロディ、
どこまでも勇壮で英雄的なシンフォニックサウンド、
歪んだ音で容赦なくザクザク刻んでいくギターサウンド、
ダイナミズム溢れるオーケストレーション、
高速ブラストビートで描くブルータリティ

16分もあるが、実際は15分くらいの長さにしか感じず、映画音楽のような起伏を感じながら楽しめる。


総合満足度 85点 (テンション上がって心の平衡(Equilibrium)を保つのが難しいレベル)

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