出世ミミズ

[出世ミミズ]

初版発行:2006年2月25日
著者:Arthur Binard
出版社:集英社文庫
ジャンル:エッセイ

 アーサー・ビナード氏の本を読んだのはこれが最初ではない。初めて彼の本を読んだときに「訳者」を探したほど日本語が巧でいらしたことと物事の捉え方に共鳴することが多かった印象を持つ。

 私はこの先可能な限りの時間を全て注いでも英語で自身の考えを母国語のように繰ることは出来ないことは確か。
 イギリス人の知人が日本の古典を研究され私のパートナーよりも俳句に詳しく本も出されている。日本語が堪能なのはアーサー氏に限ったことではないと承知していながらも、毎回彼の本を読む度に思考の深さに恐れ入る。
 日本人として私が出来る古典に繋がるものは華道と茶道(自宅で茶筅で点てる嗜み程度)しかない。勿論、好きな和歌や俳句はパートナーとは違い諳んじられる句が幾つかあるがその程度だ。アーサー氏は短歌の他に「謡い」もされる。単に語学学校で日本語を学んだ域ではない。

 このエッセイでも顕著なことは、英語と日本語の関係が機械翻訳のように背景も何も考慮せず関数のようにAを入れるとBとなって出てはいない。
 「戦争とWarの違い」の章は是非皆さんに読んで欲しい。
 「言葉」を大切にすることから生まれる更なる世界。特に現在SNS等での又聞きした人の「言葉断片」での糾弾、炎上を見ていると言論の自由とは違い何か本筋から離れていっている気がしてならない。

 この本はこれまでのコラム等を集めた章からなっているため、一章一章は大変短い。隙間時間、例えばパスタをゆでる時間にも優に読める文字数。
 電車の中で、時には本を広げてみませんか。

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