時事ネタ嫌い

[時事ネタ嫌い]

初版発行: 2015年9月20日*文庫版
著者: 菊池成孔
出版社: イースト・プレス
ジャンル: エッセイ

 菊池氏を知ったのは映画絡みだ。映画「セッション」をめぐって町山智浩とネットで論争を繰り広げていた事が契機で菊池氏の他の本を読みたいと食指が動く一方、申し訳ないが町山映画評論はアンテナにかからなくなった。
 先ず文筆家の文章ではないこと、生業はジャズミュージシャンであることを前提に手に取って欲しい。彼の文章は読み手に全く迎合していない為に狭い範囲の知識で本を読んでいる人には「?」が飛び交う恐れがある。好き嫌いが明確に二分化される人だ。読み易いか?と問われると、彼が好き、或いは彼の話し方が好きという人々には問題ないが、そうでない場合は話し方そのままに
( )付挿入が多用され論点を見失いそうになるかもしれない。
 ご本人が「大変な政治音痴な上、あらゆる社会面的なニュース全般が苦手」とおっしゃりながらコラムは4年間も雑誌に掲載された。苦手でもこれだけの読みは可能なのだ。苦手だから時事を素通りされていたのでもないのだろう。ネットの誰かが要約したニュースを読み「知ったつもり」になった人の文章ではないことが解る。
 後書きで彼がいうSNSのドラッグ性に納得する。「24時間いつでも書き込めることにより、「溜め」がきかなくなる」と。「思考し(溜め)、発言、行動する(出す)」という基本の往復運動を液状化させ、「何を語るか?」というジャンルまで液状化させる、とも。他人事ではなく肝に銘じたい。

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