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[生きてるかい?]

初版発行: 2014年3月10日*文庫版
著者: 南木佳士
ジャンル: エッセイ

 「名を知るまではただの白いきれいな花だったのが、おさば草と知ってからこの場所は山行の明確な理由になった。」とある章で書かれている。中々良い表紙の写真が無く、この「おさば草」の写真をTopに択ぶ。というのもこのエッセイの中でご夫婦で山へ行くシーンが割合多かったことも二つめの理由。
 南木氏の本はダイヤモンドダストしか知らず、この本は書店でエッセイであればどのような文を書かれるのだろうと興味で手にした一冊。
 帯に「随筆の滋味」とある通り、或る程度の年齢を経て紡がれる文章の趣きがあり、併せて南木氏が医師でありながらご自身の病と長年戦ってこられたことが全体に浮き立たない川の流れせせらぎのような文章となったのか。
 「くっきりと描く」とある帯の言葉には違和感があり、例えて楽譜でいうならば音符が跳ね回るモーツァルトではなく狭い音域を静かに行き来するグリーグの抒情小曲集のようなエッセイ。

 「過去は、書き始めたいま、そして、書き終えつつあるいま、じぶんに都合よく刻々と制作されつづける。」P114
 

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