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ママたちのSOS

 一般内科の外来診療をしていると、いろんな患者さんがやってくる。めまいがする。頭痛がする。吐き気がする。お腹が痛い。咳が止まらないなど、症状は本当に色々である。そんな中、同じようにママさんが体調不良でやってくることがある。小さい赤ちゃんを連れていたり、双子のママだったり。「元々偏頭痛だけど、最近ひどくなった」「眠れてない」「なんだか頭が重い」などと訴えて、色々検査を行う。結構な割合で異常は特に見当たらない。
もちろん何か問題が見つかることもあり、そんな時は然るべき診療科に相談したり、然るべき薬を使ったりして対処するが、そうでない場合が多く、そしてそうでない場合が一番難しい。

 おそらくはストレスに起因する症状と思われる。子育て中のママたち(もちろんパパたちも)の苦労たるや、今となっては想像に難くない。ゆっくり話を聞いてみると、大抵の場合は子育てが元となった悩みがボロボロと出てくる。ストレスから体の症状につながることは何も珍しいことでは全然ない。月曜日の朝は体がだるいように、発表会前の緊張で動悸が止まらないように、ちょっとした気分で体の調子は大きく変わり、実際に症状として出現する。誰もが経験することだ。治療にはストレス環境から少しでも離れるしかない。


 しかしここからが困ったことなのだが、彼らには逃げ場がないのだ。子にとって親は自分しかおらず、投げ出すわけにはいかない。果たしてどうすればよいのか、借りられる手は全て借りて、なんとか少しでもホッとできる時間を増やすようにアドバイスするくらいしかできないのである。行政によっては2時間程度託児ができる施設などもあり、そういったところを利用するのも手であろう。配偶者の理解がなかったり、祖父母の力を借りられなかったりして、自分一人で抱え込んでいるママたちも多い。なんとかならないものかと思案するが、外の人間にできることなどたかが知れている。

願わくば多くの人が子育ての大変さを知り、手を差し伸べようとする社会となりますように。

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