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ピーター・ドイグ展 : バイエラー美術館 ポール・ゴーギャン展の記憶

先日、東京国立近代美術館のピータードイグ展に行ってきました。SNS上でこの作品を見たとき、5年前のバーゼルで出会っていたことに気づきます。この展覧会を通して、私の心は再びバイエラー美術館を旅していました。

2015年2月。原田マハさんの「楽園のカンヴァス」に夢中になり、休暇先をアートの街バーゼルに決めました。                                

バイエラー美術館はラグジュアリー感が抜きん出ており、モダンでセンスがよく素晴らしい場所でした。この時期は先に開催されていたピータードイグ展と、次のゴーギャン展が半月ほど重なる贅沢なタイミングに当たり、メインエリアはゴーギャンへ、ピータードイグは最後の展示エリアに作品の一部がまとまっていたようです。

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加えて、数日前にゴーギャンの作品「いつ結婚するの」が当時の絵画取引最高額、約3億ドルで売却との報道が流れたばかり。                         

ただでさえ来たかった美術館にいるという感激でいっぱいなのに、ビッグニュースの主人公である桁外れの作品を目の前に、芸術の価値へのワクワク感と疑問が入り混じっていました。そのほかにもこの展覧会は当時では珍しいテクノロジーを駆使したスタイリッシュな演出に新鮮さと刺激が多くありました。

館内ではリラックスというより、終始興奮していた時間を過ごしていたのですが、その最後の展示エリアにあったのが、ピータードイグです。

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私はその時が初対面で彼について何も知りませんでした。だからこそ先入観なく純粋な気持ちで出会えた作品たち。興奮していた頭をぼんやりクールダウンさせてくれる夢見心地な感覚になったのを記憶しています。現実と夢の狭間にいるような心地よさ。雪や星々の細かい点々。

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あの時の自分にとってはバイエラーを離れがたくて、また来たい気持ちでいっぱいなのを最後静かに見送ってくれた存在でした。

あれから5年                              世界が予想外の事態になった今、海外の美術館を訪れるという大きな楽しみがなくなりました。そんなさみしい時期、東京での再会はとりわけ嬉しく、私を少し変化させました。

今まで東京で開催される大きな展覧会がどこか苦手で、数える程しか行ったことがなかったのです。アートは好きなのに、東京で情報を入れすぎると周りに影響され、心から自由に純粋に楽しめない気がする。そんな思い込みがありました。

今回のピーター・ドイグの作品との再会は海外まで遠くに離れなくても、自分の意思で自由に楽しむことができるという基本を思い出させてくれました。

彼は俳優アンガス・クックとの対話で下記のように話しています。

わたしは絶えず別のイメージへと進化して行くような何かを作ろうとしています。絶えず別の物事を人々に考えさせるようなものを。中略 すべての人が同じ楽曲を聴きませんし、同じように聞こえたり、同じ感情に作用したりするわけではありません。あなたは泣きたいときもあれば、笑いたいときもあるでしょう。そして絵画はあなたをいろいろな場所に連れていくことができると思います。

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ピーター・ドイグと世界のどこかで再会できること、その時まで自分はどんな経験を積み重ね、どんな思いを体験しているのか、今から楽しみです。







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