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【映画】ノマドランドを観ました (66/365)

ノマドランドという映画を観ました。

※以下ネタバレを含むので、これからご覧になる方はご注意ください。

静かな映画ですが、アカデミー賞受賞歴もある女優のフランシス・マクドーマンドの抑え目な演技、雄大な自然、リアルなノマド生活者の出演が深みを醸しています。物語は淡々と進んでいきます。

主人公はネバダ州エンパイアという鉱山で働く夫と社宅で二人暮らしだったのですが、リーマンショックの影響で鉱山が閉鎖され、住民が退去することになります。ほどなく夫は亡くなり、傷心の主人公ファーンは古いバンに必要最小限の荷物を載せて、アマゾンの配送センターなど臨時雇いの仕事を求めつつ放浪の旅に出るのです。

アメリカでは高齢者の放浪生活者、ノマド生活者が社会問題になっているようです。ここシリコンバレーでも、車上生活者がよく見られます。時には大きなキャンピングカーが幹線道路に長期駐車されていることもあります。

社会は基本寛容なように見えますが、ときには行政によってキャンピングカーが一掃されます。

この映画のノマド生活者は、都会ではなく、ネバダやアイダホ、アリゾナの荒野での生活ですから不便はあるものの、ある意味とても自由に見えます。

もちろんこの映画にも、社会批判的な面は少しはあるのですが、ファーンはノマド生活で困難に出会いながらも、友人とひとときの触れあいを持ち、すさんだ心を徐々に浄化していく、「こんな生き方も悪くない」と思わせるシーンも数多くあります。

映画に本人として登場するのが、Bob Wellsです。彼は、ノマド生活者のカリスマで、劇中でも「彼の動画を観た?」というシーンがありました。

Bob は年1回、アリゾナ州のクォーツサイトで大集会を開きます。そのシーンも出てきます。

(この記事を書いている)今週末から開催のようです。ちょっと覗いてみたい気も。車を10時間飛ばせば行ける(笑)

Bobにも悲しい過去があって、息子を自殺で亡くし、もがき苦しむ中から人を助けることをしようと思い立ったそうです。

We never say final good bye.
I'll see you down the road.

「最後のサヨナラは言わない。またどこかの路上で会おうと言うんだ。」

というBobの言葉が印象に残ります。息子さんともきっとどこかで会えるだろうと。

ふと自分のノマド生活の疑似体験を思い出しました。もう15年以上前なのですが、小学生のこども2人と妻と私で、東北方面にあてのない車中泊の旅に出たことがありました。天気と気分によって行先を決めるのですが、白神山地や盛岡を経て青森に車を止めて列車で函館まで行きました。

道中、特に道の駅で夜を越すときにふとこみあげてきた感情ですが、生活に必要なものはすべて車上に揃っており、そのハンドルを握っているのは自分だということ。家族を守っているのは自分なんだ、という感情。我々はいろいろ持ちすぎているのかもしれません。物も感情も。

ときにはノマド生活も悪くないかなと思いました。

ラストシーンで主人公ファーンはかつて夫と暮らしていたエンパイアを訪れます。人影はなくゴーストタウンになっています。

彼女は実は貸倉庫に想い出の家財一式を預けていたのです。なけなしのお金から賃料を払って。でも、決意してすべて廃棄するように依頼します。

私には傷心のノマド生活から、孤独だけれども自由なノマド生活に一歩踏み込んだ瞬間に思えました。

淡々と進むストーリーはやや退屈かもしれませんが、雄大な景色とともにドキュメンタリー映画として観るとより深く感じられるかもしれません。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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