見出し画像

イラストで読むギリシア神話の神々

■ 感想

「イラストで読むギリシア神話の神々」杉全美帆子(河出書房新社)P135

イラストがあれば印象に残る確率も上がりそうなので、神々を覚える手始めに手に取った本書。

大まかに面白く紹介されているのかと思えば、興味を惹く分かり易さや面白さだけでなく関連した絵画や逸話などもあり、今までに見た映画や本の中で隠喩として使われていた神々の名前からその奥に隠された意味に思い当たったりと、とにかく終始愉しく学べて、ここからますますギリシア神話を勉強していこうとモチベーションが上がった。

登場する神々・英雄・人間の数も本書で扱われているだけでも相当で、一度で暗記できることばかりではないけれど、今までに読んできたものと合わせて掘り下げたいパートや、ここをもっと知りたいなど、様々な角度から興味が無限に広がっていく嬉しい悲鳴と歓喜で読了。

それにしても神々の奔放さは凄まじく、親子、親類縁者など完全無視の恋愛模様に、嫉妬も陰謀も渦巻きまくりで仕舞いには我が子を喰らう神まであり、読んでいる私の顔は百面相状態の忙しさ。悲劇的エピソードも沢山あるのに、オイディプス王のような悲哀が感じられないのは神である故だろうか。

神々の中で地味ながらも、各家庭のかまどに入っている「ヘスティア」は、グレーテルのかまど!と大興奮。驚愕だったのがアフロディテの生まれた経緯。息子・クロノスに斬られた父・ウラノスの性器が海に落ち、そこから発生した泡から生まれた愛と美の浮気性な女神がアフロディテ。で、その誕生の絵画がボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」。あの美しい絵画の裏にこんな生々しいエピソードが!俄然目も脳も冴えわたる面白さ。痛そうなのにごめんよウラノス。でも自業自得だものね💛

その海に落ちるまでに飛んだ血飛沫からは、エリニュス(復讐の神)、ギガス(巨人)、メリア(ニンフ)が生まれた。どこからでも発生する神々。そしてエリニュス!子供の頃に夢中になった藤本ひとみさんの「愛を語るエリニュス」。ああ、ここにきて初めてエリニュスの意味を知るなんて。私の不勉強から時間はかかりすぎたものの、読書を続けるとこうした符合に時間を経て出会える喜びもあり、ますます本を読み勉強を重ねるということの意味と愉しさを感じた。

英雄篇ではトロイ戦争で有名な英雄たちが沢山登場し、昔ブラッドピットのトロイを見た時には知識がなくよく分からなかった部分も今となって腑に落ちることも沢山で、映画を見直す楽しみもできた。アキレウスは武神であるかの如く強さとほぼ不死身の身体を持ちながら、なぜアキレス腱だけが弱点なのかと不思議に思っていたけれど、そんな理由が!いろんな意味で驚いた。

紀元前からの長い時間を経てなお語り継がれ、生活の中に息づく神話の強さを実感した。

■ 漂流読書

■ギリシャ神話キャラクター事典/オード・ゴエミンヌ

神話の魅力にどっぷりとはまっているものの、神・英雄など人数も多くそして関係性が複雑極まりないので、まずは繰り返し読むことでしっかりと覚えてホメロス、ヘシオドスへと辿り着きたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?