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怒り心頭ってやつ。

怒りというのは、なかなかに手ごわいもので、一度現れるとそれなりになかなかの存在感を放ち続けるらしい。怒った方は意外と感情を爆発させてスッキリ爽快気分になったりするが、巻き込まれた方はいつまでも記憶の片隅に残り続ける、と。なんて恐ろしい。

我が家のように瞬間風速的にプンプン丸な奥さんに対して、タイミング悪く、たまたまその時その瞬間よりによってなぜそんな軽率な一言を・・という旦那さんののほほんな一言が投じられた瞬間、大炎上に進展することが割とある。今回はそんな一コマのご紹介。

私が家の長男坊は生粋のダウン症。父母働きながら、たー坊は保育園に行きつつ、療育にも通っている。毎週火曜日午前中と水曜日朝は療育の日。特に火曜日の午後は保育園に行けないたー坊さんの面倒を見ててもらうために、シッターさんに来てもらい、自宅保育をしてもらっている。

このシッターのAさん。以前お伝えしたとおりプロ度がものすごく高い。たー坊も大好きでとてもよくなついている。そして、もう一人お世話になっているシッターのBさん。絵本を読むのがとても上手で、たー坊を寝かしつける時も抱っこしながらトントンして優しく寝かしてくれる。だからたー坊も大好きで、二人で絵本を読みながらキャッキャ、キャッキャしている。お二人ともとても印象が良かったので、隔週で2回ずつお世話になっている。

いまや世の中にはシッターさんとして働きたい人とシッターさんに依頼したい人をマッチングするマッチングサービスが溢れている。それだけ共働き家族が増えて、家族以外の助けが必要な社会なのだろう。我が家もAさんとBさんとの出会いは当然そうしたマッチングをプロデュースするそれぞれの運営会社経由だった。

ふだん自称わりと穏やかな母が心底プンプン丸と化したのはそんなある日のこと。その日は、Bさんにた―坊の自宅保育をおねがいした。朝から社内ミーティングやらクライアントとの打ち合せやら、それらの事前準備などなどでとてつもなく忙しかった。

だから、Bさんが自宅に来たらまずはお互いの確認事項のすり合わせや依頼したいこと等を伝えあうのだが、丁寧に確認しきれていなかった。そもそも来てくれた時はミーティング中だったので、勝手に中に入って待っていてもらったくらい。それでもBさんは手慣れた様子で臨機応変に対応してくれて、わからないことでかつさほど重要ではないことに関しては、確認のため私を呼ぶことはせず、Bさんのご判断で対応してくれて事後報告をしてくれた。シッティング時間を終えた帰りがけも同じようにバタバタしながらたー坊を受け取ったので、何を話したかすらイマイチ詳細を覚えていない。。

それでもたー坊を受け取って、お風呂に入れて、体を拭き水分補給をしてのほほんとした瞬間に食事の準備をして食事を上げて、ゲップをさせてトントンして寝かしつけて、ほっとした瞬間。夕食の食器を片付けようとしてキッチンに行くとふと目に入った。

きれいにあらわれた食器と哺乳瓶。しかもきれいに拭かれてトレーにキラリと戻されていた。あわただしい母を見かねてBさんが洗ってくれたのだろう。カーテンを開けるすら、何なら床に落ちた水1滴を拭くだけの時間すらとれずに日々時間に追われまくるへっぽこ母の姿を見かねて、Bさんの配慮でやってくれたこと。本当に嬉しくて泣きそうになった。今考えれば次回会った時にでも直接お礼を言えばよかった。とても嬉しかった私はどうしてもすぐにお礼を伝えたくて、マッチング会社のアプリ上で、

「食器まで洗ってくださったのですね!本当にありがとうございます」

とお礼のメッセージを送った。これが後々大炎上するとも知らずに。

Bさんからは、「いえいえ!今日一日本当にお疲れさまでした」と素敵な絵文字付きメッセージが返ってきた。なんて素敵な方なの!大変な1日だったけどいい1日だった。ホクホクして1日が終了した。

我が家は控えめに言っても大富豪ではない。そもそも大富豪だったらお抱えのシッターさんがいるだろうし、そもそもシッターさんを雇ってまで働いていないのかもしれない。しがないサラリーマン家計の我が家にとって正直シッティングサービスはなかなかに家計を圧迫する存在。実際週1の活用(+通院時の午後など)でも結局毎月の保育園代くらいかかってしまう。。それでも、日本には働くパパママを応援する「企業主導型内閣府ベビーシッター利用支援事業」なるものがある。これも独身時代は知らなかったのだけれど、要するに企業側が申請すると、社員がシッティングサービスを活用する時に最大で4400円の補助金が出るというもの(細かい制限あり)。うちの会社もその制度を活用することになり、この補助金制度によって我が家はここまで破産せずにこれたといって過言ではない。

その補助金制度、申請してから使用するまでにちょっと時間がかかった。だからBさんのシッティングを利用する際も事前にマッチング会社のC社に利用申請するのが間に合わあなかった。ただ、事後申請も可能と聞いていたので、問い合わせページから事後申請について確認した。問い合わせをしてから4日後、1通のメッセージが届いた。

「家事サポートを含むサポートのため対象外です」

読んだ瞬間、おちょぼなお口はポッカ―ン、自称クリクリおめめが点になった。

いやいやいや。そもそも、問い合わせから4日後の回答っていうスピード感にセッカチ母の疑問は止まらない。だけれど、100歩譲ったとしても、家事サポート含むうんぬんのくだりが全くもって意味不明。当時の依頼内容を見直しても「通常のシッティング」になっている。何か私がまたおっちょこちょいをしでかしたのかと思い、Bさんに恐る恐る確認するも、Bさんからも「いただいた依頼はたしかに通常のシッティングで、家事サポートはしていませんよ」とのこと。

不思議、というよりは不審に思い、Bさんがくれた報告書をコピペして、再度問い合わせページから「意義あり」文をやんわり送りつけて差し上げた。「ね、シッターの報告書にもあるとおり家事サポートなんて一切してもらってませんよ」と。

そもそも、問い合わせが電話ではなく、メールフォーマットのみで、その回答に関する疑問・質問は再度問い合わせページからしなくてはいけない、というその方法そのものに疑問を抱かずにはいられない。大抵問い合わせをする内容は困ったり、ちょっと不満だったりするものなのに、回答に到着するまでの旅路が本当にいけてない。これでは困りも不満も増長する一方で。カスタマーサポートはどこいった。とブツブツいいながら、その時点で既にある程度の怒りというか不満は溜まりつつあった。

はたまた、その回答を待つこと3-4日。返事がこないことったらない。片思い中の女子高生のように毎日メールチェックするも、音沙汰無し。こちらは4,400円の補助がかかっているしがないサラリーマン家計なのだ。

そんな不健康状態の中で首を長ーくして待ちに待った結果、ようやく届いた回答に心底ほんとうに久しぶりに怒りが脳天をつきやぶった。怒りでわなわな震えるってこのことか。

「メッセージのやりとりから家事サポートが含まれている旨を検知しました。」

「また、ご登録情報よりお子様がダウン症である旨を拝見しました。当社では安全なサポートのため、特別なケアが必要なお子様の基準をもとに【障害児対応可能なサポーター】にご依頼を頂いております。」

と。もはや意味がわからない。メッセージを見たら家事サポートが含まれているといわれ、それも意味がわからない。さらにBさんの報告書には触れられず、なぜ家事サポート扱いなのか、の質問に対する答えがなく、疑問が残りまくる。しまいには、ダウン症なので【障害児対応可能なサポーターに頼んで】と言われる始末。

私の怒りはわりとあっけなく限界の壁を突き抜けて、鬼の形相のプンプンまるな母が誕生したのでした。

で、何度も何日もやりとりしたところ、要するに、私が送った

「食器まで洗ってくださったのですね!本当にありがとうございます」

の一文が自動検知されたらしい。余計なことを言ったばかりに、状態。本当に信じられないけれど、離乳食の食器を洗ったり、哺乳瓶を洗うことは「家事サポート」にあたるらしい。ツッコミどころ満載すぎるにもほどがある。どこをどう解釈してもどうにも理解できない。哺乳瓶洗って家事サポート、使った食器を洗っても家事サポート。じゃあ使ったおもちゃを消毒のために洗っても家事サポートなのか。着た服をたたんで置いても家事サポートなのか。

シッターのBさんも当然そのことを知らなかったわけで、事情を伝えたらひたすら謝られていらっしゃった。Bさん悪くないのに。むしろ配慮をいただいただけなのに。

詳細は省くが、その後もプンプン丸の母の怒りは収まることをしらず、何度もC社とのながーいやりとりを続けた結果、「今回だけですよ」という形で着地した。

想定外についてきた「ダウン症児だから障がい児OKのシッターさんしか手配できない」問題は、診断書があれば解決するということで、保育園申請の際に申し込んだ診断書を添付したところ、「発達遅滞があるので加配等の対応をご検討いただけたら・・」というくだりがひっかかりアウト。C社曰く、「加配を頼む」という時点で健常児とは異なるでしょ、ということらしい。

言い訳をすれば、たしかにC社に登録のシッターさんページには「障がい児は受け入れ可否」項目があってBさんがNGにしていたことは知っていた。でも一番最初のコミュニケーションでダウン症のことは伝えていたし、たー坊が何ができて何ができないのかも細かく丁寧に説明した。そのうえで事前面談も行い、本人の様子を伝えてシッティングOKとなった。「障がい児の受け入れOK」なシッターさんなんて超稀だし、手配できないに等しい。

もはやC社なんてやめてやる!、と思ったものの、シッターのBさんからもぜひたー坊くんのシッティングを継続したい、と言っていただき本人もBさんになついているので、苦悩の末に通院時にいつもの主治医の先生に事情を話して相談してみた。

「杓子定規でこちらの気持ちを汲み取ってもらえなかったのですね」と起きたことを総括してくれた。そう、それだそれ。4400円ももちろん大切なのだけど、起きた背景を全くくみ取ってもらえずに「一発アウト!」の旗を突き付けられたことが許せなかったのだ。

主治医の先生は、そう言って再度診断書を書いてくれた。その中には、医療的ケアや内服等の処置が必要ないことを記載した上で、

「原疾患に伴いゆっくりした発達は今後顕在化してくることは予想されますが、【ゆっくり成長している赤ちゃん】としての日常生活の通常対応をお願いします。何かありましたら当科までご連絡ください」

と書いてくれた。

「ゆっくり成長している赤ちゃん」

まさにそう。我々親にとってはわが子は「障がい児」ではなく、「ちょっぴり成長がスローな赤ちゃん」なんだ、としみじみ。先生によってやさぐれた母の心がすーっと落ち着いた瞬間なのでした。

ちなみに、渦中において食事中にイライラマックスで携帯からC社に物申す文をピコピコ打っている私の姿を見て、「ま、イライラしないでさ、とりあえずご飯食べようよ」と悪気なく何気ない言葉を放った旦那さんは直後に般若顔の奥さんを垣間見たとそれはそれでなかなかに痺れたらしい。夫婦で妻のトリセツを再読しようと決意した日なのでした。

【他称ゆっくり成長している赤ちゃん】

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