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「金のために鐘は鳴る」アンソロジー

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「二人」 著:おる

 机の上に積まれた調合用の素材とそれに関する書籍。  それらとは別の机の上には、敷き詰めるかのように調合途中の薬品が並べられていた。  棚に貼り付けておいた紙に書かれている依頼品の数に、有り得ない願いと分かっていながらも、マリアの口からはその言葉が零れた。 「私がもう一人居たらいいのに……」  自分で口に出した言葉に、マリアは苦笑する。  そんな事は有り得ないのだ。  有り得ない、だから、しっかりと今の現実と向き合わなければいけない。  忙しいということは、それ

運試し温泉旅行 著:杉山純

※前書き事項※  今作は、執筆者「杉山純」がお気に入りの“某バラエティ番組”で企画された、お笑いコーナーを元ネタにしています。  キャラクターの口調や設定に違和感を覚えた場合、それはASの勉強不足です。  作中に登場する“アヤネ”“ヒモノ”というキャラクターは、原作ゲームのスタッフをモチーフにしたオリジナルキャラクターです。  季節は冬。ハーバリストのマリアは、いつも立ち寄るお馴染みの酒場を訪れる。夜には多くの客が賑わいを見せる店内も、昼間は少しだけ物静かだった。

ほかの誰でもなく 著:文音

 年の瀬が近くなると、街も慌ただしくなる。  年が変わるから何かが変わるのか、と言われるとマリアにはよくわからなかったが、素直に一年の区切りだと受け止めている。  残り一つとなった荷物を持ち直し、問屋街から職人通りへと向かった。  年の瀬は納品が多く、マリアもここ数日調合に納品と忙しい日々を過ごしていた。  それを見越して前の月に素材を多く集めておいたこともあって、もう随分と長いこと採集には出かけていない。 「……ふぅ」  小さくため息をつく。  別に、会いたい

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