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フランスから、食関連ニュース 2020.06.23

今週のひとこと

フランスでは2人の共同経営者とともに『atelier DOMA』を運営しています。食を通して日仏を結ぶ色々な事業を行っていますが、共同経営者の一人のマリナ・メニニは庖丁の専門家。『atelier DOMA』では、庖丁はもちろん、砥石やまな板などの周辺の販売も含め、庖丁研ぎのお預かり、あるいは教室も行なっています。ロックダウンが解除されて以来、毎日お客様が訪問してくださり、教室も少人数ですが、毎週1回から2回の開催にこぎ着けています。一般の方々はもちろん、料理人さんの訪問もあって、3ヶ月のブランクを少しずつ取り戻しています。教室をご利用いただいているのは、フランス人の料理人さんや、日本人の方々も含めたアマチュアの方ばかりだったのですが、今回初めて日本人の和食のプロの方にご利用いただいて、とても嬉しく思いました。その方はお若い方ですが、彼がシェフとして作るお料理はパリでも高い評価を得ています。ロックダウン中に改めて庖丁に向き合い、解除されて店をオープンさせる前に、一度しっかり庖丁のことをプロから学んでみたいと思ってくださったということ。すでに腕に自信があるはずなのに、基本に立ち戻ってみたいと兜を脱いだ姿勢に、和食の職人としてなかなかできないことだなと感心してしまいました。例えば、毎日履く靴が、歩き方の癖によって形が変形するように、料理人さんが毎日使用する庖丁も、常々研いでいたとしても、料理するときの癖というものが庖丁の形を変形させてしまうこともあります。自身の使い安さを優先させ、あえてその形を良しとして、そのように研いだりすることも正しいのですが、それぞれの庖丁がもつ本来の形が、何故そうあるのか、という基本的な理由に立ち戻る、なども同じこと。

ハウステンボスホテルズの名誉総料理長も務め上げられ、日本におけるフランス料理の牽引者の一人である大御所の上柿元勝シェフのことも思い出しました。上柿元シェフは、そうした立場にありながらも、毎年夏にヨーロッパを訪れて、ご自身の息子ほどの歳のシェフが経営したり、料理長として働くあちこちのレストランで修行をされることを、近年まで実践されていました。世界で今、料理界に何が起きているかということを、厨房の中で実感を持って感じたいと。その道のプロの方というのは、自分のやり方が絶対となって、疑いを持たなくなってしまうことも多く、頑ななところが職人気質として讃えられることもあるのでしょうが、常に心をオープンにする姿勢を持つということが、精進になるのだなと、私自身も学ばされました。常にゼロに戻れる勇気。ロックダウンはそんな機会を、等しく強制的にもたらしてくれました。この機会に、それぞれの料理人さんが何を思ったか、あるいは実践していたか。今週のトピックスでもお伝えしている、3つ星シェフのヤニック・アレノ氏は、障害者雇用をこの9月から開始させます。料理人さんだけにもちろん限らず、多くの方々の思いの変化によって、今は、目には見えないにしても、アフターコロナの時代というのが、少しずつ形成されてつつあるのかもしれません。

今週のトピックス【A】3つ星シェフ、ヤニック・アレノ氏、障害者雇用始める。【B】『ヴァローナ』社『B Corp』認証を獲得。【C】ウォーターブランド『ラ・ヴェルニエール』、100%リサイクルのペットボトルに。【D】料理人ジャン・アンベール氏による、ミュージシャン、ファレル・ウィリアムス氏とのコラボのレストラン登場。【E】ヨーロッパいち広いアーバンファーム内ルーフトップレストラン、パリにオープン。

今週のトピックス

【A】3つ星シェフ、ヤニック・アレノ氏、障害者雇用始める。

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