マガジンのカバー画像

旅のエッセイ

5
旅先で感じたこと、考えたことを綴っています。
運営しているクリエイター

記事一覧

I’m nobody

I’m nobody

やっと言葉が浮かんでくる。2:14。

心臓がどきどきしている。服を着替えるだけの準備を済ませ、チャックアウトをした。外はまだ薄暗い。成田空港行きのバスを待つ。こんな時間に起きたのは久しぶりだ。世界が始まる前の静けさで満ちている空間。空港に辿り着き、ほぼ眠ったままチェックインカウンターまで歩く。

誰もいない朝の空港。朝日が飛行機に反射している。徐々に太陽が上がってきて、背中に暖かさを感じる。友人

もっとみる
バス停にて

バス停にて

「今から帰るの?」

「はい、飛行機で。」

「あともう2、3日いたら地元のお祭りがあるからいればよかったのに。みんな見に来るんだよ。私の家の近くで。」

「山は登った?」

「白谷雲水峡に行きました。すごく綺麗で。」

「私はガイドをやっていたんだよ。縄文杉にも200回以上登ったことがある。」

「200回!!!」

「女の子は甘えてくる人が多くて。ちょうどあんたと同じ歳くらいの女の子だったかな

もっとみる
誰も私たちを知らなくても

誰も私たちを知らなくても

朝6時にアラームが鳴り響く。1時間しか寝ていなけれど、長い間の眠りから覚めたように感じる。もう、空港に向かわなければならない。心の準備は永遠にできないまま、私たちは身体だけを動かす。急いで荷物を詰め込み彼の車に乗り込む。最初から最後まで、彼に車を出してもらってどこへでも連れていってもらっていたことに気付く。1週間前に空港でピックアップしてもらってから今空港に送ってもらうまで、ずっと。

空港までは

もっとみる
開いていく

開いていく

今日という1日をどうしても言葉で残しておきたい。でも今言葉が降りてこない。どうしよう。

沖縄料理のお店で、友人がアメリカでの幼少期の経験を話している。彼がどう今まで自分の物語を紡いできたのか、生き抜いてきたのかを聞く。
ゲストハウスに戻って、少しベットに横になる。知らない内に寝ていた。意識のどこかで誰かが知らない言語を話している。スペイン語かな。クメール語にも発音が似ている。ちょくちょく知ってい

もっとみる
かつて立っていた場所

かつて立っていた場所

3時間しか寝ていない。寒すぎて、ずっと布団で寝ていたいと思う。重すぎる身体になんとか力を入れて起き上がり、準備をする。全然寝れていないから、頭は冴えているけれど、ぼーっとしている。
準備を済ませて自転車を漕ぐ。前に進まないし寒いし人は多いしで、ちょっと泣きたくなる。バス停に着き、バスに乗り込む。運転手さんがすごく丁寧に言葉を紡ぐ人だなと思った。ほっとした気持ちが広がりながら、これが本心でありますよ

もっとみる