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心血注ぐラストステージ! 師弟でつかんだ音楽の真髄

映画作品名:セッション(原題:Whiplash)

【あらすじ】
名門シェイファー音楽院の生徒のニーマン(マイルズ・テラー)は、ドラムの練習中にフレッチャー教授(J・K・シモンズ)に見初められて、彼のバンドの一員となった。常に完璧な演奏を求め、粗暴な言動と威圧的な態度で生徒を指導するフレッチャー。そんな彼に食らいつくようにして練習を積み重ねていったニーマンは、やがて主奏者の座を勝ち取る。だが、ジャズコンテストの会場への移動中の事故をきっかけに音楽院から姿を消してしまう。そして、ある日偶然バーでフレッチャーと再会し、再び同じ舞台に立つことになる。

【みどころ】
「Not quite my tempo(私のテンポではない)」や「オレのバンドの邪魔をするな」というセリフを執拗に繰り返し、自分の理想の音楽を追求するフレッチャーは、潔くて新鮮だ。
ただフレッチャーが真に目指すものは簡単には分からない。彼は期待以上を超えるスターを生み出したいが、それと自分の理想の音楽を求めることは一致しない。その矛盾があるから、フレッチャーに必死に食らいつくニーマンも含めて、ごく狭小な世界で妄信的に進んでいるだけのように見えてしまう。
だがラストのセッションシーンで印象はガラリと変わる。ここでニーマンが、指導者であったフレッチャーに目もくれず一心不乱にドラムを叩きはじめ、やがてバンド全体をぐいぐい引っ張っていく。それにフレッチャーも引き込まれ、互いに同じ方向に向かってセッションを始める。まるでどちらがリードしているのか分からないくらい混ざり合っているかのように。
原題(ムチ打ち症)と比べて邦題はセンスがないという口コミが多いようだが、そもそも音楽は痛みをこらえてやるものではないはずだ。ただその世界観に没入し、やがては個から他へと拡散していく―この「セッション」という言葉には、そういった意味が込められている。


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