見出し画像

妹の推しのアイドル

妹の推しのアイドルが、卒業した。

私は、若い頃は、
アイドルを好きになることに
なんか、照れみたいなものを感じてて、
「こんな変な顔の私が、こんなに綺麗な顔のアイドルを好きなんて言ったら恥ずかしいのではないか?」
って思っていたから、
今考えたら拗らせすぎてるんだけど、
アイドル好きな人のことが羨ましかった。

で、9歳離れた妹は、
私とは正反対で、中学生の頃からアイドルが大好きな女の子だった。
アイドルの中でも、トップクラスに可愛い顔したアイドルが好きで、
誰もが羨む、二重瞼と長いまつ毛、スッと通った鼻筋のアイドルに熱を上げていた。


当時私はアイドルに疎く、奥田民生みたいな男性に恋をしていたので、
妹が応援する子の顔と名前がなかなか覚えられなかったけど、
デビュー前から応援し続けたそのアイドルは、次第にテレビで見るようになり、ドラマの脇役で登場することも出てきて、
妹のアイドルでもあるけど、世間のアイドルになっていった。
妹は売れちゃった彼にヤキモチを妬くこともなく、
むしろ心底喜んで、推し活を楽しんでいたようだ。

デビューしたての頃、そのアイドルが、サッポロファクトリーに握手会に来ていたんだけど
妹は吹雪の中、夜中から並び、一緒に来ていた友人が寒さのため離脱したにもかかわらず、
めげずに朝まで並んで、推しに「大好きです!」と伝えていた(らしい)
推しのアイドルは、たしか
「僕もだよ!」
的なことを言ってくれたと、半泣きで教えてくれた。
大好きなアイドルにそんなことを言われ、
更には握手できた喜びと高揚でどうにかなりそうになっていた。

アイドルのパワーってすごいんだなぁと感心したのだった。


妹が10代の頃から、そのアイドルを家族みんなで応援してきて、
私や母はライブなどに行くことはなかったけど、
歌番組に出ていたらチェックして、
妹に連絡する癖がついてたし、
活躍すると嬉しい気持ちになった。

それは、私と母にとっては、
“妹の初めての彼”
みたいな気持ちで、
もう、十数年も、見守っていたのだと思う。
勝手すぎる話だけども。


そんな彼が、グループから卒業することになり、
配信ライブが行われるということで、
妹も見てるだろうし、私も見るか、と。
妹が長いこと応援し続けたアイドルだし、
彼の話をする妹は本当に乙女だったし、
私たちもアイドルの話をする時はとても楽しい時間だったし。
そんな時間を提供してくれた彼の、記念すべき日を、見届けようかな?くらいの気持ちで、見始めたのに、

あんた誰?ってくらい、号泣した。

夫が、娘2人が
「え、ママどうしたの…」
ってなるくらい、はじめっから号泣した。
自分でもびっくりした!!!
え、私泣くの?アイドルが卒業するから?担当でもないのに??????


配信で披露した最初の曲はデビュー曲だった。

彼らがデビューした時のことはよく覚えてて、
家族で騒いだんだ。
ねぇ!思ってたメンバーじゃないけど、デビュー決まったよ!!!!!!!

バレーの曲になるって!


みたいな会話をした。そんな話をしながら、この子達で頑張っていくなら、応援しよう!!
って話した。

なんて尊い時間だ!

次に歌ってくれた曲は、ドラマのタイアップの曲だった。
大注目のドラマで、よく、家族でこのドラマの話もした。
頑張ってるよねぇ!かっこいいねぇ!なんて。
いいコンビだよね!もっと2人でバラエティ出ないかな?とか。
たくさん話をしたなぁ。

彼は、あくまでも
“妹が推してるアイドル”
だったんだけど、
家族の会話に欠かせない人物だった。

私と妹の歳が離れてるからこそ、
私は、妹の成長と共に、彼の成長や活躍もよくおぼえてて、

あの時はこうだった、
あの時こんなことしてたよねー!など、

私たち姉妹に、たくさんの楽しい時間と思い出をこんなにも残してくれていたのか、と。

卒業する今夜、気がついたのだった。

そして、そんな十数年間が、急にフラッシュバックしたかのようで、涙が止まらなくなったんだ。



無垢だった少年が、立派な1人の大人の男性になり、美しい涙を流しながら、旅立ちを迎えた。

無垢な少女だった妹は、今夜、自分の娘を寝かしつけた後に、音量を小さくして、配信を観たそうだ。


時は流れるのだ。
ずっと同じようにはいられない。
だけど、愛しいことに変わりはないのだ。

実家の小さなリビングで、みんなでMステを見た日を思い出す。

「なんで、xyだけ、赤いんだろうね?」

「いや、知らんけどカッコいい!」

そんな会話を思い出す。
本当に、愛しい時間だったな。

妹のアイドルになってくれてありがとう!
我が家に、たくさんの会話を作ってくれてありがとう!

あなたは、明日からも変わらず妹の推しだから、
私たちも密かに、応援しています。

この記事が参加している募集

思い出の曲

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?