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【詩】脱出

脱出

空港から外に出た途端
交渉タクシーの呼び込み達が次々と近寄ってきた
私はそれを振り切り
小さなスーツケースと共に
メータータクシーの順番を待つ列に並んだ

見慣れた看板に見慣れない文字
タイライスとスパイスに
生活をムッと混ぜ込んだような空気の匂い
ざわざわと意味の分からない会話

熱気を帯びた明るい外気に慣れ
やっとバンコクに来たことを実感する
何度目の訪問か もうわからなくなった
屈託のない笑顔の気配に包まれる懐かしい感覚

新しい高速道路を降りると市街地に入った
窓の外を流れ行く排気ガス
トゥクトゥク
華やかに飾られた金の仏像
ヴァイオレットピンクのオーキッドフラワー
立ち並ぶシルクやジュエリーの高級店
道端で露店の準備をする人々

タクシーがホテルに着く頃には
全てに馴染んでいるだろう

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