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進化する意味、歩みを止めぬ演目 〜継承されていく「反戦歌」〜

(この文章は2023年6月30日に執筆しました)

私にとって「反戦歌」という演目は、自分の心や人生観を変えた大きな作品です。

2021年4月から、スト活をはじめた私。
ストリップをお勉強する中で、踊り子新井見枝香さんのコラムで蘭さんの「反戦歌」を知り強い興味を惹かれていました。
そして香山さんがそっとTwitterで呟かれていた一言・・・。
「今年で最後になると思います」という言葉に導かれるように、同年7月中、私は香山蘭さんの「反戦歌」をSNAへ見に行きました。
1演目が16分、踊り子さんはその時間の中でポラ館(浅草ロック座以外)と呼ばれる劇場で、個人演目で大体1種類から最大4種類、1日の中で踊られます。内容も変わることも多いです。

でもこの「反戦歌」という演目は、もともと「1」だけだった演目の前後に、香山さんが「0、2」というストーリーと踊りを肉付けして、1日かけて踊るという演じる方も見る方も覚悟が少し必要な作品です。もちろん単作で見ても十分楽しめますが、反戦歌の女性がどう生き、悲しみ、苦しみ、生きる希望を見出したのか、その過程を一緒に追うことができます。
ストリップ鑑賞にハマって数ヶ月で「反戦歌」を体感した私は、とても大きな衝撃を受けていました。
その時、書き綴ったレポ→「夏がはじまる、そして終わらない夏」

これはストリップなのか、いや、ストリップだからこそ表現できない「何か」かもしれないと。
その後、大和ミュージックでお会いした黒井ひとみさんが蘭さんの反戦歌を「はじめてお勉強(踊り子さんが踊り子さんの演目を見ること)させて頂いた時、あまりの衝撃に壁にすがりついて動けなかった」という感想を教えてくれたひとり。
踊り子を休業するということで、蘭さんが「反戦歌」を踊り繋ぐ後継者として、ひとみさんが指名されました。
そして、ツイッターにて蘭さんが着ていたお着物、小道具も全てひとみさんへ託され、ひとみさんは「反戦歌」を踊ることになりました。
初演は2022年4月、渋谷道頓堀劇場だったと思います。ちょうどロシアとウクライナが戦争をはじめたとき、世界が激震に揺れていた時。
この演目をフルで踊ることってとっても大きく、ひとみさんの心身共にかかる負荷。そして尊敬する演目を「継承」する意味はすごく大きかったと思います、互いのファンもいるし、反戦歌を楽しみにしているお客さんたちも劇場の垣根を越えてやってくる(蘭さんはロック座所属、ひとみさんは栗橋所属)そんな大きな意味があると思います。

そして舞台に立っていたのは、蘭さんがかつて着ていたお洋服、向日葵を持ち、まだ慣れない黒布を全裸の身体にまとい、大切な葉書を抱きしめ、ぼろぼろの軍帽を抱きしめ、必死に戦前、戦中、戦後を生きる一人の女性の姿でした。
「反戦歌」の新たなる分岐点、反戦歌という軸から生まれた、ひとみさんの新たな「女性」像です。

4月の道劇や5月に見たミカドの「反戦歌」の主人公さんは、必死にもがき、愛しくて大切な男性を戦地へ見送り、失い、売春婦として男性たちを誘い、絶望しつつも自分の生きる道を舞台に見つける、どちらかというと「受け身」の印象がありました。
2の最後に、主人公の「自分の道は自分で決める」という意思がぐわっと出てくるので、多幸感が凄いんですよね。
それから約1年・・・。

黒井ひとみさんは昨年、踊り子生活10年目を無事に迎え、ひとみさん自身を投影させるような「10年目」という演目を踊られました。
(これも本当に良くて、もう2023年に選ぶ個人演目ベスト5とかに入る!むしろなんか節目の時に個人的に見られているので、勝手にイメージが「人生」だと思ってます!)
そしてアタミ銀座劇場の名物となった「飢餓海峡」
ここで演じられる八重という女性を見て、かつてSNAからのおつきあいとなるスト客の先輩あしゅらさんに「是非、アヤメさんには飢餓海峡見て欲しい」と言われて、その意味が分かるくらい、ひとみさんには「人を演じる」力が凄く強い。
踊り子さんの表現は千差万別であること、ひとみさんの主観的な表現が、蘭さんへのリスペクトが、反戦歌で伝えたい思いがダイレクトに観客に真っ直ぐに届くのだと思います。
私はというと、昨年の「文学フリマ東京」に初出展した際に、反戦歌0.1.2から浮かんだ物語を文章化した「ひまわりの記憶 ”反戦歌”より」を執筆しました。ひとみさんに蘭さんの分も託し、頒布とあいなりました。
それほど、本当に思い入れの強い一作となっています。

さて、そしてこの2023年6月結の「大和ミュージック」
「10年目」「飢餓海峡」など様々なひとみさんの演目を見てからの今回。
ひとみさんは、本当に久々に反戦歌を踊られることがツイッターで発表されました。

「うおおおお!」←わたし

つい先日、浅草ロック座「​​REBIRTH」で感情が揺り動かされ、夢心地だったのに、舌の根も乾かぬうちに、黒井さんが大和で反戦歌・・・!
私はストリップは多く行けても、月に2度ほどだなあと思うような人なので6月のこの勢いは少し異常。しかもその先月は徳永しおりさんの引退もあり関西の東洋や、川崎にも足を運んでいたので、ポジティブぶりは自分でも驚き、ほんとはもう少しまったりのんびり生きたい。しかし推しは推せる時に推せと、私の中のシナプスが反応してる。

「反戦歌」がフルで上演され、ひとみさんがかつて蘭さんの反戦歌を見た時の話をはじめて聞けた場所、そして新井さんも大和に乗っていらっしゃる奇跡のような香盤。
つまり「反戦歌」を知るきっかけをくれた新井さんがいて、「反戦歌」の話を聞けた黒井さんとの思い出の地、そして「反戦歌」をフルで見られて、他の踊り子さんたちも好きな方々が多くて、おまけに新井さん名物の「みえカレー」も食べれて、売店名物のスタッフmihoさんのたこ焼きも食べられる、こんなロイヤルストレートフラッシュ、なかなかないなあと決意して、フルで見る気持ちで行ってきました!

久々に見た、黒井さんの「反戦歌」
でも、少し違っていて、確かに進化してて。
私は0が、特に本当に弱いんですよ、いつもダバダバ引くぐらい泣いてしまうのですが、他の演目でも同じですが泣くことはあってもじーっと踊り子さんの方を見て、一瞬でも見逃さないように結構酷い顔で見つめています(踊り子さんたちごめんね・・・)
黒井さんの解釈、凄い。綺麗に引き算して、意味をひとつひとつ分かりやすくしてシンプルにしたからこそ、伝わるものがあります。
私は花道側に座っていたので、踊り子さんの横顔、背中大好きスト客として、今回は本舞台と花道、ベットでの表情は背中から見守っていました。
それでも・・・大好きな人に嫁ぎ、戦地へ向かう前夜の初夜の描写はやはり感情がダイレクトに伝わり泣いてしまいました。シンプルにしたの大正解。
そして、白い肌襦袢を身に纏い夫を見送るラストシーン。
楽曲のリフレインと合間って、感情がもう限界突破になるのですが、今回は少し描写が変わっていました。蘭さんは溢れる感情を押し殺し微笑み泣く、1年前のひとみさんは感情を剥き出しにして叫ぶように、しかし今回は・・・ずるい、あのね、この主人公さん、ほんと不器用さんでおしゃまな子なんです。結構、悪戯っ子でもあるから、あっかんべーとかしちゃう。
そんな子が、ラストシーンに必死な顔で見せた仕草。
わたしは、その意味を知っている。
気持ちと裏腹、そんなこと本当は望んでないことが分かって・・・。
生まれて初めて、演目中に耐えきれなくて嗚咽が止まらず主人公さんの顔が見れなくなってしまいました。
「反戦歌」という意味が、より良く伝わった0のラストシーンだったと思います。

そして、蘭さんから受け継がれた小道具を愛する姿勢よ。
1で象徴的に使われる夫からの葉書、かつて蘭さんが劇中で使っていた葉書を綺麗に綺麗に、普段はジップロックに仕舞い込んでひとみさんは保管しておられます。
他にも桶、お着物、額縁、2で用いられるチラシも(ロック座のイラストあった)受け継がれるものとして、大切にしていることを知っているからこそポラの時に、同窓会のように「あの葉書、とても大切にしてますね」と声を掛けてしまうのです。
演目を毎年、踊り続ける意味、それはきっとあって。
「ああ、今年もまた見れたな、夏って感じだな」って。
それは他の踊り子さんの季節ものと同じように。梅雨、桜、紅葉、花火、クリスマス、お正月とかとか。劇場の中で変わらぬ季節を感じられるのは幸せなものです。

さて、このあと1、2と続くわけですが、ひとみさんの進化は止まらない。
1では、夫となる男性像が明らかとなり主人公さんの心を支える葉書を描くシーンがありましたが、表情が・・・強く凛々しい表情ももちろんありますが、多分、0で見送られた側の表情が増している気がして。この辺の性別を超えた表現の仕方・・・。
2では、途中までもう絶望と履き捨てと赤玉ワイン。大和は舞台がとにかく広いので、戦地の夫が遺した軍帽を抱きしめて、1人遺されてしまったシュミーズ1枚で苦しむ主人公さんのシーンも、もう悲しくて。
でも0で聞こえてきたレコードを聞くと、かつて初恋の彼(夫)と踊った華やかな自分を思い出して、舞台ところ狭しと笑顔で踊る主人公さん。
もうこの笑顔が、この笑顔が・・・涙
そしてロック座マーク(!)が入ったチラシを拾うと、自分が生きたい道へ駆け出して行って。
ひとみさんはお客様を盛り上げるの上手いから、もう最後は物語とリアルがリンクして楽しくて、主人公さんのこれからも幸せを願わずにはいられない演目なのです。
OPも、やはり蘭さんの使われてた曲が用いられるので(継承のいいところだよなあ・・・)どちらのファンとしても嬉しいポイント♪

私が行った日は楽日近かったので、他の踊り子さんたちが反戦歌をお勉強されていました。
あとでその方たちのポラに行った時に(だって踊りも素敵だったんだもん)コメの最後の方に「ひとみちゃんの号泣しました」と書き添えられていて、色んな踊り子さんたちにもじんわり広がっていけばいいなぁと願う一人です。望むらくは全人類、見て欲しいです(願望)

新井さんにも「反戦歌」のことをお伝えすると、凄く驚かれていました。
著書「きれいな言葉より素直な叫び」のコラムを読まなかったら、反戦歌とも出会うきっかけがなかったのですから。やっと思いを少しだけ伝えることができました。
新井さん、本当にありがとうございます。

「反戦歌」は心身ともに、必死な演目。
見る方も必死だけど(時間も、気力も)演者も一生懸命。
でもね、昨日、花道側にいたからこそ気づいたこと。
反戦歌0が終わったあと、その日は本当に暑くて、気温も湿度も高い日でした。
普通は演目が終わった後、照明が落ちて拍手が終わって、ひとみさんの「ありがとうございました」という声が聞こえるのですが、場内が暗くなりひとみさんは全身で息をして吐息が止まらなくて。ひとみさんが全身汗だくなことが伝わりました。
確かに主人公さんを「生きていた」ことが伝わって、そのあとにいつものように「ありがとうございました」が聞こえてきた時、胸が熱くなりました。

そんな2023年6月結、大和でした。
これから夏にかけて、黒井さんが反戦歌を出されるかどうかは分からないけど、今、あるからこそ、反戦歌という作品からまた新たな子が今年は進化し”生まれた”と思います。
この物語は、戦争で振り回された人間を描いたもの(性別関係なくね)
機会があれば、是非「受け継がれ、進化する」演目、見逃さないでくださいね・・・!

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