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走る私と日々のこと♯3 中年の身体と向き合う

負け惜しみを言っているわけじゃない。
歳を取ることは当たり前だし、私も少しずつ老化していく。
つまり、娘は私の身長や足のサイズを越えていくのと同じように、体力も私を越えていくのが当然だと考える。
娘が私を追い越せないのは体重だけかな…そんな冗談を言いながら鏡に映った自分の姿を見る。

今回のタイトルは「中年の身体と向き合う」

恐ろしいことに体重がどんどん増えている。
私は病院に勤めているので、緊急事態宣言が出たところで平日は何も変わらなかった。
変わった事といえば休日。趣味のランニングと買い出しに行く時以外はずっと家にいた。
やりたいことは無限にあるので家にいることは全く苦痛にならない。
しかし苦痛だったことといえば、鏡に映った自分の姿を見ることだ…
動いていないのに時間があるためお腹が空いていなくても三食しっかり食べる。外食できない分、お取り寄せした美味しいスイーツを食べる。購入したての小型ミキサーでスムージーを作り頻繁に飲む。
食べる楽しみはこんな時だからこそとばかりに増えていった。
そろそろ増加も止まるだろうと予測していたけれど止まらない。私の人生で妊娠中以外に見たことのない数字を体重計は更新していく…
悲しい現実…

私は1年程前にランニングを始めたことで自分の身体と少しずつ向き合うようになった。
走った時に身体が軽かったり重かったり、ちょっとした変化も感じられた。
今日は長く走れないなぁと思ったら生理前だったり、逆に生理後はいつもより長く走れる。
お酒を飲んだ翌日はもちろん身体が重いし、むくみも強く感じる。
走りながら自分の身体の声を聞いているみたいだ。
ここ最近は、体重の増加が激しいため走ると久しぶりに膝が痛い。

膝の痛みといえば、ランニングを始めた初期にとても悩んでいたことを思い出す。
私は10年近く運動らしい運動をしてこなかったので、ある程度の筋肉痛は覚悟していたけれど、膝が痛くなる時だけは異常に反応していた。
その理由は数年前に住んでいた熊本で、3333段の日本一の石段を登った時の後遺症ではないかと焦っていたからだ。

熊本に住み始めて3年目のある日。ぼんやりと見ていた地図に日本一の石段と書かれている場所を発見した。自宅から車で1時間ちょっとだし、どんなものだか行ってみようと車を走らせた。
目的地に到着すると、そこには我こそ先にと石段を登って行く人の群れ。
とても興奮してきた。
この石段を登りたい!
気持ちばかりが先走り、ムートンブーツを履いていることも忘れて私は石段を登り始めたのだ。
テンポよくタッタッタッタと登っていく。 
気分が良い。
日本一の石段なんて簡単に登りきれる。
そう思っていたのも束の間、段を重ねるごとに私の顔色が変わっていった。
なぜならまだ1000段も登っていないのに、少しずつ膝が痛くなってきたのだ。2000段を越えた辺りから痛みは本格化し、3333段登り切ったときには限界を超えて膝を曲げることができなくなってしまった。
それでも頂上まで来たということは降りて帰るだけ、下りは余裕だと思っていた。
ところが考えは甘かった。一歩足を降ろすと膝が笑う…。登りより下りの方が膝に負担がかかるという衝撃の事実が私を襲ったのだ。
膝を曲げて普通に石段を降りられないため、なんとか生み出した空中蟹歩き(横向きで膝を伸ばしたまま軽くジャンプして降りる)と休憩を繰り返し、数時間かけてやっと降りることができた。
この後何日も膝の痛みに悩まされ、エレベーターのない四階に住んだことをとても後悔していた。
ちなみに、当時小学校低学年だった娘は問題なく石段を制覇し、翌日も多少の筋肉痛だけで終わった。若いって素晴らしいなと思った。

この悲惨な体験から、私は膝を完全にやられてしまったのだと思い込んでいた。
ランニングを始めた当初も、走って膝が痛くなると怖くなり、ランニングを辞めようか迷ったことが何度もあった。
結局私の場合は太ももやふくらはぎの筋肉がほとんどなかったために膝の負担が重く痛みに繋がっていたようだ。
専門的な知識を持つ阿川さんという私の所属するランニング部のメンバーに相談をしてアドバイスをもらい、少しずつ正しいフォームで走れるようなっていき、さらに筋肉をつけていくことで膝の痛みはなくなり、今では20キロ近く走れる身体になった。

それなのに…体重増加のせいでまた膝が痛くなるなんて!

ちなみに1年近く、週に1度5〜10キロ走っているが体重は増えている。
ふくらはぎは筋肉が目に見えて付き少し太くなった。
代謝が良くなってよく汗をかくようになったが、その分お腹が空くようになり食べる量が増えて燃費が悪くなった。
ここまで言うとランニングしても意味がないじゃないか!と突っ込みたくなるところだけど、
それでも私の「腰回りの肉」=「浮き輪」が少しだけ小さくなっていることを報告したい!

女性が特に気にしている「浮き輪」と呼ばれる「腰回りの肉」。
これは本当に厄介なやつだ。
若い頃はなかった、しつこくてちょっと硬くて自己主張の激しい脂肪の塊。
これがあることにより、着る服も選ばなくてはいけない。
シャツインしたくても浮き輪が邪魔をして貴族のドレスのような盛り上がりを見せるからシャツインできない。
ゆったりした服でごまかそうとした場合、想像とあまりにもかけ離れたシルエットに、街を歩いて鏡に映った自分を他人と思い込む始末。似合う服が見つからない。

そんな私の浮き輪も、ランニングをすることで筋肉痛になった。
最初の筋肉痛は足だけだったのに、走る距離を伸ばす度に広がっていき、腕や背中、お尻にも感じるようになり、最後は浮き輪が筋肉痛になった!
これは衝撃と共に感動だった!
浮き輪を退治するのにランニングは効果的かもしれないと考えた。
体重増加で膝も痛いことだし、体重を減らしながら浮き輪のない身体を目指してみようと決意して、ランニング(週1or2)+軽い筋トレ+軽い食事制限を始めている。
まだ見た目に大きな変化は見られない。

しかし最近、体型以外で嬉しいことが起こった。
半年前一緒に走った娘は、体力も走力も無い私のペースに合わせてくれてゆっくりと走り、息も上がらずに体力を持て余していたのだけれど、先日一緒に走った時は逆転していた。つまり私が娘に合わせてペースを落としながら走ることになったのだ。
越され続けていた私が、また娘を越えることができたちょっと特別な日となった。
外出自粛期間で家に引きこもり、娘の体力や筋肉は確実に落ちている。だからフェアとはいえないかもしれない。それでも私は走り続けたり筋肉を付けてきたことで、知らぬ間に以前よりも進化した身体を手に入れていたのだ!

ちょうど同じ頃、25歳でバスケットボールの選手になった佐渡島STONESの大島銀治さんの話を聞く機会があった。若いとか若くないとかそんなことは関係なく、やりたいことがあるのならば、諦めないで努力し続けるべきだということを彼からも学ばせてもらったし、25歳での挑戦という事実に強く背中を押された。

中年になると老化していくだけだと思っていたけれど、そんなことはなかった。
今となっては努力しなかった私の言い訳にしか聞こえない。

だから私は諦めない、腰回りの浮き輪とサヨナラする日まで。

・・・・

最近気がついた事がある。身体は正面よりも、後ろ姿を見る方が残酷な現実を知ることになるのだ。
見慣れていないという事もあるが、私の後ろ姿は自分の想像よりもたくましく、大きかった。
この現実に見て見ぬ振りをするわけにもいかないので、全身鏡の前でターンをしながら後ろ姿をたまに確認するようにしている。

後ろ姿は、まっすぐ向き合えない位がちょうど良い。




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