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乳がんになった私 #71「堂々巡り」

昨夜生まれた疑問と迷いは、翌日になっても消えなかった。

私は内田に話した。

私「昨日さ、先生の話を聞いて全摘するって決めたじゃん?でもさ…こんなにも画像の結果が良かったのに、むしろほぼがんが見えなくなってるのに、それなのに全摘を選ぶんだとしたら…一体どんな人が全摘をまぬがれるんだろうね?」

内田「そう、だからMRI検査での画像結果の意味はなんなんだろうって疑問が残ってる。でも、命を最優先に考えるなら全摘と言われたらさ、そりゃあね。あと、きみが納得してるなら大丈夫か、と思ってそれ以上質問するのをやめたけど…。」

私「多分、元々のがんの位置と大きさ的にも最初は確実に全摘予定で、さらに一度がんが広がっちゃって、今は見えなくなったものの、元々あったところにもし残ってたら、取りこぼしてしまったら…てことなんだろうけどね。でも術前化学療法の最大の目的は、がんを小さくして、全摘ではなく部分切除にすることだと思うんだけど…部分切除を選択する人少ないのかなあ?うーん…」

堂々巡りだった。

私は、母にも電話をして同じような話をした。

母「確かに…昨日は納得したけど、言われてみると、どんな人が部分切除を選べるんだろうね。知り合いにさ、彩乃と同じくらいのタイミングで乳がんになった人がいるんだけど、その人は部分切除なんだって。」

私「そうなんだあ。なんかさ、よく聞く乳がんのしこりって、コロッとした豆みたいな、ビー玉みたいな感じとか言うじゃん?けど、私の場合、ぼんやり広がってる形状のがんだったから、それもあるのかもね。分かりやすくコロッと固まってれば、部分切除しやすそうだもんね。今、99%全摘で気持ち固まってるけど、先生がまだ変更可能って言ってたし、次の病院のタイミングであらためて聞いてみよう。今までに私に似たような事例があったのかどうかとか知りたいし、気になることは全部聞こう!」

次の通院は2週間後、先生から手術説明を受けるための予約が入っていた。この日に、術式を決定した上で説明を受けるわけなので、きっと真っ先に先生を質問攻めすることになるだろう。

というわけで、先生に聞くまでのこの2週間は考えても仕方がないのだが、やっぱり考えてしまう。全摘、部分切除…ぐるぐる。

note更新に励み、音楽制作をやれる範囲で進めたり、メディア出演もあったり、バンドの雑務をこなしたり…ぐるぐる。

手足の痺れは、相変わらずひどい、痛い、ストレス…ぐるぐる。

食べることが大好きな私にとって、食事の時間は幸せな時間なはずだが、副作用の味覚障害もまだ治っておらず、せっかくのごはんがあまり美味しくない…ぐるぐる。

手術について考えすぎているせいか、ある夜、こんな夢を見た。

手術台に横たわる私、全身麻酔が効かない。主治医のS先生に「麻酔を追加したらダメなんですか?」と聞く私。「追加すると2年間くらい目が覚めない可能性がある」とS先生。結局手術は中断し、次の手術の予約が取れるのは半年後…!!!「次また麻酔が効かなかったらどうなるんですか?!」とS先生を問いただす私………そこで目が覚めた。


心、穏やかではない。

早く次の病院の日になってほしい。

(#72へ続く)
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