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退職の練習㉒私の秘密(生徒の場合)

 美術の鑑賞会の感想発表会、最後のお題に、3つを提示した。
「このクラスはあなたにとってどんなクラスでしたか?」
「私の秘密」
「一発芸」
 どれか一つ選んでもいいし、3つ全部言ってもいい。
 最後だから。

 今回は、どれを聞いても、楽しい。

 ほとんどの生徒がクラスの話をする。
 そして面白いことに、どのクラスの子供達も、とてもいいクラスだと言うのである。これは、よく考えると当たり前だ。
 教師のシゴトも1年勝負とよく言われる。
 1年で、転勤のことも稀にあるし、来年も同じメンバーと働いているとは限らない。4月は自分の新しい分掌が始まって、おっかなびっくりスタートするけど、3月には、1年かけて、互いを知り、とても居心地の良い、気安い関係になっていて、もしかしたら、このメンバーとお別れかもしれないとドギマギするのである。
 だから、毎年、10年ぐらい前から、3月にはどうせ仲良くなるんだから、その勢いで4月から行ったら話は早いんではないか!と思っていた。
 毎年そう思うのだが、なかなか、人間の心情とはそのように割り切れるものではない笑。
 まあでも、その当たり前の答えがなんだかうれしい。
 どこのクラスも、いいクラスになっていたことが笑。

 優しいクラス。居心地のいいクラス。家族みたいなクラス。
 いいことも悪いこともするクラス。安心して過ごせるクラス。

 クラス替えは不安だろうけれど、どのクラスもいいクラスだったみたいだから、どうせ、1年後いいクラスになるんだから、前のクラスが良かったと固執するのではなく、初めから新しいクラスを信頼して、行けばどうだろう?っていう話をした。
 そのことを知っていたからと言って、私と同じで、うまくできるかは全く分からないんだけれども。

 そして大概の子がクラスの話をするのに対して、たま~に自分の秘密をはなす子がいる。その秘密の数は少なかったけど、それもまた、心に残った。

 先日、法事と言って休んだけれども、推しのコンサートに実は行ってました!という女の子。美術の時間だけの秘密にしておきましょう。
 実は、生徒会長をやってました!という少年。
 子供のころから両親をパパママと呼んできて、そろそろお父さんお母さんと呼ぼうと思うけど、今はパパさんママさんと呼んでいるというサッカー部の男の子。
 釣りでもよくやるのか、魚の絵ばかり描いてた少年の、
「ぼくは魚より肉の方が好きです!」という衝撃の告白にみんなで大爆笑。
 
 一発芸に至っては、ほぼ、やる人はいない。2クラスに1人ぐらいの割合。
 
 男子には、
「すべる勇気を持て!」と言ってきたつもりだが、なかなか、出てこない。

 あるクラスで、いたずらしてみたくなり、ある少年をひっかけた。
 感想発表会が、2時間に渡り、1時間目休んだ少年に。

「実はこのクラスでは、ある少年が、男子は全員3つ言うこと!と決めて、男子は全部言うことになってました」と、私。

「えっ」と困る少年。
 級友を助けるでもなく、すぐに私の共犯者になり、きらきらとした瞳で見守るみんなの面白そうな顔。

 クラスについて話した後。
 懸命に、考えて、躊躇しながら、
「ヤギの鳴きまねをします。めえええええぇぇぇ…!」
 たぶん、考え抜いた彼の渾身のギャグ。
 続いて。
「僕の秘密は」
「僕の秘密は・・・」
「僕の秘密は( ^ω^)・・・」

「ありません!」

 
 最後にとても素敵な絵を描いた男の子である。
 彼の絵の写真を撮っておくんだったと、後悔している。
 
 最後に、この発表会の感想を書かせた。
 ある女の子たちが、一発芸をやった2人の男子は凄い勇気だと思います、とか、2人の勇気と男らしさに、感動しました。2人はとても素敵です。と書いてあった。そんな感想をまとめて、最後のプリントを作り、フォントを大きくしたり、太字にして、もう、授業の無いそのクラスに渡した。
 その秘密のない男の子は、その発表の仕方があまりに真剣で、素直でカワイイので、私の孫に指名した大笑。
(息子じゃないあたりが、私ってオトナ笑)

 ほら、私がいつも言っている通り。

「男子諸君、すべる勇気を持て。」

 一発芸をやった2人は、これから大いなるモテ期がやってくるだろうと、教師からの言葉として、プリントにちゃんと書いておいた。



次の記事に、続きます。次の記事に出てくるカルリートス。映画「永遠に僕のもの」より。