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あるロードレース観戦旅行における食生活の記録

海外に行きます、と言うと、いいですねえ、と返される。
続いて、美味しいものをいっぱい食べてきて下さいね、と言われる。

なるほど、食は海外旅行の醍醐味である。
しかし自分の場合、どうもそれが当てはまらない気がする。
美味しいものを食べた記憶はある。だがそれが、人に語りたくなるような華やかさや物語性に欠ける気がするのだ。むしろ、日本にいる時よりも微妙な食生活を送っているように思える。

これはモニュメント(世界5大クラシック)最終戦、イル・ロンバルディアを観戦に行った際の記録である。あえて食生活を軸に書いてみた。

10月5日(水)成田~ウィーン

  • 機内食
    11時過ぎ出発の便。機内食は2回。出発後にハンバーグっぽいもの、到着前にトマトソースで和えたペンネとサラダを食べた気がする…とか言っていたらこの旅の同行者イギータグチが写真を送ってくれました!

    オーストリア航空は機内食が美味しくないというネット評を事前に見たので期待せずに食べたが、普通に美味しかった。量が控えめで胃に優しいのが良かったが、たくさん食べたい人は物足りないかも。前の席の体格の良いお兄さんは毎回パンを2個頼んでいた

    成田空港はチェックイン後にホットコーヒーを飲める場所がなかったので、とにかくホットコーヒーが美味しかったことを覚えている。

1回目の機内食。ちょっと和風。でもパンが付いてくる。
トマトソースのペンネにもパンが付きます。
  • ウィーン国際空港:ブリトー
    現地の到着時間は18時過ぎ。寝る前に少し食べておきますかということで、空港にズラリと並ぶイートインのファストフード店からブリトーのお店をチョイス。これが大正解で、軽く焼いて出してくれるブリトーは香ばしくてジューシーで、とにかく美味しかった。

欧州の小麦・乳製品ってなんでこんなに美味しいのだろう。

ウィーン国際空港からウィーン中心街のホテルまでのアクセスを調べておらず、現地に着いてから電車に乗らねばならないことを知る。
我々の旅は大体行き当たりばったりです。

10月6日(木)ウィーン

  • 朝食:ホテルのビュッフェ
    トランジットがウィーンなので、ウィーンで1日遊ぶことにした今回の旅。
    滞在したホテルの朝食が大変いい感じ。ヨーロッパはハムやチーズの味が濃くて、それだけでご馳走感がある。朝からお皿をいっぱいにして幸せに浸る。

ホットコーヒーはポットでたっぷりサーブ、嬉しい。
  • 昼過ぎのおやつ①:揚げた芋
    今回のお目当ては美術史美術館。充実の展示を駆け足で楽しんだ。
    小腹が空いたので「世界一美しいカフェ」と言われる美術館内のカフェへ。

ゴージャスな空間。
世界一美しい空間で食べる揚げた芋は格別でした。
  • 昼過ぎのおやつ②:ザッハトルテ
    ウィーン中心街のデメルでザッハトルテをいただく。
    当初はカフェザッハーと食べ比べをするんだと意気込んでいたが、1日2ザッハは無理でした。ごめんなさい。

ホイップクリームが軽くてミルキーなのがよき。
  • 夕食:豆のスープ
    1日歩いたせいか、久しぶりの渡航の疲れか、シオシオになってしまい食欲も減退。このあたりからだんだん体調が低空飛行になる。
    昨年の秋ごろから体調を崩し、パンデミックということもあって運動をサボっていたので、もともとなかった体力がゼロになってしまったせいだと思われる。しょんぼり
    ウィーンに来たら食べねばと意気込んでいたウィンナーシュニッツェル(ウィーン風仔牛のカツレツ)を食べる元気もなく、ホテル近くの屋台レストランで豆のスープをすする。

    心身を壊して大変だった昨年の話をイギータグチに聞いてもらい、アヤさん元気出して…という温かい言葉にウルウルするウィーンの夜。

レンズ豆のスープ。どこまでも優しい味。
元気いっぱいのイギータグチがオーダーしたシュニッツェルをちょっとだけもらう。

10月7日(金)ウィーン~ミラノ

  • 朝食:ホテルのビュッフェ
    前日と同じくホテルの素敵な朝食。
    ビュッフェにプラスして卵料理をオーダーできるのだが、それがまた美味しい。

チーズオムレツが激うまなんです。
  • 昼食:機内食
    午前中はウィーン市街をのんびり散歩。午後の便でイタリア・ミラノへ向かう。約1時間のフライトだが、なんちゃってビジネスクラスだったので機内食が付いていた。
    サーモンと角切り野菜の乗ったちらし寿司っぽい食べ物だったが、何故か角切りマンゴーも一緒にのっていた。マンゴーも困惑したに違いない。底にはクリームチーズ。寿司としては色々間違っている感はあったものの、久しぶりの米が嬉しくペロリと完食。

マンゴー「僕は何故ここにいるんでしょうか…」
  • 夕食:空港のカルフールで買ったサンドイッチ半分
    マルペンサ空港に16:50着、17:30にレンタカーを受け取って今回のメインイベントであるイル・ロンバルディアの舞台コモ湖へ向かう予定だったが、借りる予定のレンタカーが戻ってきていないとのこと。イタリアっぽい迫力のある女性に “ Just wait.(黙って待っとれコラ)” と言われ、重いバックパックを背負って空港とレンタカー受け取り場所を往復しながら待つことに。
    バックパックの重さは12kg。一眼レフやパソコンに加えて、ロンバルディアで会う予定のテイオ(・ゲイガンハート、イギリス/イネオス・グレナディアーズ)へのお土産がどっさり入っている。疲れもあり、一眼を持ってきたことを後悔し始める

    1時間遅れで受け取ったレンタカーでコモへ向かうも、イタリアの難解な高速道路の交差を理解できず遠回りして30分程時間をロス。ようやく到着したホテルの駐車場に車が入らず急遽公営の駐車場に向かうなどして更に1時間が溶けた。
    ホテルの部屋に入る頃には疲労困憊で、翌日の5時起きロンバルディア観戦に耐えられるのだろうか…と半泣きで空港のカルフールで買ったサンドイッチをイギータグチと半分こしたのは23時前。
    ハムとチーズが異様に美味しくて、ちょっと元気が出た。

ミラノに向かう飛行機の中から見たアルプス。

10月8日(土)コモ~ベルガモ~コモ

  • 朝食:カルフールで買ったサンドイッチ
    奇跡的に朝5時に起床。疲れはあるものの、何とか動けそう。
    夜明け前の道を歩いてコモ・サンジョバンニ駅へ。イル・ロンバルディアのスタート地点ベルガモまでは電車で約2時間の旅。

綺麗な車両とそうでない車両の差が激しいイタリアの電車。これは綺麗な方。

イル・ロンバルディアはコモとベルガモの間を走るレースで、年によってスタート・フィニッシュが入れ替わる。ここ数年はコモスタートが多かったので、今年もコモスタートかと思いきや、ベルガモスタートだった。ちなみに発表されたのは約1週間前。おおらかである。
夜が明けてきたタイミングで昨日の晩に空港のカルフールで買っておいたサンドイッチを食べておく。

電車の中では一応FFP2マスクを着用。

8:30にベルガモに到着。チームバスエリアは柵で囲われていたものの、皆気にすることなくどんどん入っていくので、その流れに乗って中へ。レースが始まる前のピリッとした緊張感が漂う独特の空間。いつもは画面の中で見るチームバスやチームカーが並ぶ世界。またここに来ることができたんだ、と嬉しくなる。

囲いはあるものの誰も気にしていない。マスクもしていない。おおらか。
この日をもって引退するイタリアの英雄ニバリのスペシャルバイク。
ウルフパックのボス、ルフェーブルGMは取材を受けていた。
バイクエクスチェンジご一行とともにスタート前プレゼンへ。
スタート前プレゼンは公園の一角に作られた特設舞台で実施。
我々に気付いて、舞台を降りて来てくれたテイオ。ありがとうね。
特製テイオ応援フラッグが見えていたようです。

スタートを見送った後、日本におけるロードレース観戦の第一人者とも言えるルッカさんと合流。イタリアとレースを知り尽くした大先輩と一緒に行動する安心感たるや!
ルッカさんは初イタリアレース観戦の我々にカプチーノをご馳走してくれました。優しい
なおカプチーノはイタリアでは朝10時くらいまでに飲むもので、午後に飲んだりするものではないそう。知らなかった。

  • 昼食:VIP観戦エリアのフィンガーフード
    ベルガモからコモに電車で戻った後はルッカさんとお別れし、フィニッシュのVIP観戦エリアへ向かう。当たり前だが有料、そして高い。しかも申し込み後もチケットが全然送られてこず、やきもき。前日になってようやく“ At first, please accept our apologize…” から始まる申し訳なさそうなメールでチケットが届いた。

    時間は14時を回っており、小腹も減っているところ。VIPエリアは食べ飲み放題。何があるかな~と思ったら、大変こじんまりしたビュッフェコーナーにフィンガーフードがちんまり。量が少ない上に追加された途端皆が一斉に取っていくので、基本在庫がない状態である。しばらく待って、補充のタイミングで一気に確保。ズッキーニのソテーがサンドされたちっちゃいパニーニを5個くらい皿に盛る。

    ドリンクコーナーにはジロの表彰式で使われる公式スプマンテのアストリアがあり、流石イタリア!と感激しながらお願いしたところ、透明なプラスチックカップに2cmだけ注いでくれた。少ないわ…スプマンテファイトの後の選手の方がもっと飲んでいるやろという感じである。

スプマンテは2cmですがオレンジジュースはたっぷり淹れてくれました。
エスプレッソマシーンで提供される美味しいエスプレッソも飲み放題。

レースはご存じの通りタデイ・ポガチャル(スロベニア/UAEチームエミレーツ)の2連覇。私はエンリク・マス(スペイン/モビスター)の勝利を予想しており、ポガチャル予想のイギータグチとワンツーフィニッシュ。

フィニッシュ後は表彰式ではなく、急いでチームバスエリアに向かう。テイオに会うためである。コモに戻って来た時に場所は確認しており、なんと我々が宿泊しているホテルの真裏であった。
チームバスエリアはフィニッシュの手前にあり、レースを終えた選手たちは逆走でチームバスエリアに戻っていく。ロマン・バルデ(フランス/DSM)を見つけて声をかけたら、ニッコリ笑顔を振りまいてくれた。紳士である。好き

ローソン・クラドック(アメリカ/チーム・バイクエクスチェンジ)とご家族のひとこま。

チームバスエリアに戻って、テイオに「近くでぶらぶらしているから、ゆっくりシャワー浴びてね」とメッセージを送り、イネオスのバス付近でのんびり待機。Instagramライブをやったりして、チームバスエリアの模様を日本の観戦仲間にシェア。

翌週のジャパンカップ出場予定のギヨーム・マルタン(フランス/コフィディス)がチームカーに乗り込む場面に遭遇するも、この世の終わりを想起させるような渋い顔をしていたので声をかけられず。しかしジャパンカップ会場で見た彼は全く同じ激渋顔をしていたので、多分あれが通常運転だったのだろう。「日本で待っています!」くらい言っておけば良かった。後の祭りである。

そうこうしているうちにテイオがバスから降りてくるも、待ち構えていたファンたちに囲まれていた。ジロ・デ・イタリア覇者だもんね。なおイネオスの選手でバスから出てきたのはテイオ1人だけで、チーム代表としてせっせとファンサをする彼は偉かったです。

あれだけタフなレースを完走しても爽やかなテイオと、久しぶりのおしゃべりタイム。
久しぶりのテイオは変わらないナイスガイでした。

日本から持参したお土産を渡して、代わりにテイオからのプレゼントも受け取って、つかの間のおしゃべり。チームバスが帰るタイミングでお別れした後、地元のファンに「君ら、凄いね!彼の何なの?」と質問され、改めて選手と友達って凄いことだなと実感。テイオと知り合うきっかけを作ってくれた人は、私にロードレース観戦の楽しさを教えてくれた人でもある。偉大な大先輩には感謝しかない。

  • 夕食:カルフールで買った生ハムなど
    この旅の目標を達成できた喜びの晩餐はスーパーで買い出ししたあれこれ。塩気の強い生ハムとチーズの塊を食べて幸せに浸りました
    テンションが上がって2人では到底食べきれない量を買ってしまった。

10月9日(日)コモ~ギザッロ教会~ミラノ

  • 朝食:ホテルのビュッフェ
    前日は食べられなかったホテルの朝食をいただく。ウィーンに比べると全体的にこじんまりしているものの、やはりハムとチーズが美味しい。

果物、ハム、チーズ、パン、バターは絶対食べたい。

この日は前日の汗ばむ陽気が嘘のような冷たい雨。土砂降りの中レンタカーで出発。目指すは自転車乗りの聖地、マドンナ・デル・ギザッロ教会。イル・ロンバルディアでも通過する、自転車乗りの守護聖人が祀られたあの教会である。
ここに行きたくて、今回イギータグチに頼んでレンタカーを借りてもらったのだ(私はペーパードライバー)ちなみにテイオからも「ロンバルディアに来るなら、ここは是非行ってみて」とおすすめされた場所である。

ギザッロ教会まではコモから約40km。今年のロンバルディアのコースを逆走しながら進んでいくと、何故か自転車乗りたちがコモに向けて下ってくる。それもかなりの人数。よく見るとライダーたちはゼッケンを付けていて、立哨の人もいる。何かのイベントかと思い調べたら、イル・ロンバルディアのグランフォンドだった。
低気温、そして雨。私なら間違いなくDNSである。イタリアの自転車乗り凄いな!と感動しながらギザッロ教会に到着。

ギザッロ教会を越えていくグランフォンド参加者の皆さん。
ギザッロ教会内部には歴代の名手のジャージや自転車がズラリ。
ギザッロ教会前で撮ってもらったアー写っぽい1枚。マスク取るの忘れてました。
併設の自転車博物館には歴代マリアローザコーナーが。
マペイ時代の阿部さんの日本チャンプジャージが。感動。
  • 夕食:マルペンサ空港のレストランでピッツァとパスタ
    ギザッロ教会と自転車博物館を満喫した後はコモ湖沿いを走ってミラノへ向かうことに。引き続きロンバルディアのコース逆走である。この道見たな~という景色が続き、車中で盛り上がる。

この感じ、見た見た!と盛り上がりながらドライブ。
ミラノに戻る途中、通行止めが。なんと草レースが開催されていました。

翌日は帰国フライト。日曜日に開いているレンタカーショップはミラノだけということもあり、早めにマルペンサ空港横のホテルにチェックイン。
夕食は空港内のレストランでこの旅初のピッツァとパスタをいただく。めちゃ美味しい~!と感動しながら一気に完食。写真はありません。

10月10日(月)ミラノ~フランクフルト~羽田

  • 朝食:ホテルのビュッフェ
    間違いのない美味しさ。ホテル朝食があれば幸せである。
    出発便は午後発なので、ゆっくり起きてゆっくり朝食を堪能。

どこへ行っても大体同じものを選んで食べている。
  • おやつ:チョコ
    ミラノからフランクフルトへ向かう便は荷物持ち込み重量に厳しいルフトハンザ。ロストバゲージ覚悟で預け入れ荷物を分けないといけないだろうな…と思っていたら、マルペンサ空港のお姉さんが「あなたたち、フランクフルト乗り換えで日本行き?なら全部持ち込んでもいいわよ!」と言ってくれた。女神様ですか?この旅のMVP確定である。
    なおフランクフルト行きの便はかなり遅れて出発。整備士さんがいっぱい来ていてなんか凄い音もしていたので、落ちるんじゃないかと思った(落ちませんでした)

機内で配られたチョコは意外にもカカオ濃いめで美味しかった。
  • 夕食:フランクフルト空港のレストランで色々
    フランクフルト空港、それは悪名高い欧州一のハブ空港。しかしおおらかなイタリアから来た身には何とも言えないビシッとした雰囲気とミニマムなクリーンさが心地良い。
    飛行機の遅れで5時間のトランジットは4時間になったが、十分ゆっくりできる。お店も充実しており、この旅で一番ちゃんとしたレストランはここだったかも。
    疲れてくると汁物が欲しくなるので、ここでもスープをチョイス。豚肉を食べると元気になれる気がする。

かぼちゃのスープには焼き鳥みたいなのがおまけで付いてきます。
  • 機内食
    このあたりから記憶があいまいに。そばが出てきて、そばつゆを飲み干した気がする。1回目の機内食を食べた後は爆睡。2回目の機内食は着陸直前で、あっという間のフライト。イギータグチに「アヤさんずっと寝てましたよ」と言われる。トップガン・マーヴェリックを観ようと思っていたのに、観れず。
    なおフランクフルト~羽田のANA便はなんと日本大好きイニーゴ・エロセギ選手(スペイン/モビスター)と同じ便でした。すごい偶然。

    羽田空港のレストランでうどんを食べて、イギータグチと解散。スーパーアシストとして私をサポートしてくれた彼には感謝しかありません。というか、イギータグチが介護してくれてなかったら途中で行き倒れていたと思います。生きて帰ってこられてよかった!

イギータグチが羽田で食べていたうどん。何故か卵ダブル。

まとめ

振り返ってみると、今回は割とまともな食生活を送っていた気がする。駅前の売店で買った10個入りのワッフルを持ち歩いて1日かけて食べるとか、そういうのがなかった。ホテル朝食を食べておくと夕方までもつので、昼が軽くても何とかなるのである。

余談

日本帰国は10月11日(火)。その週末に宇都宮開催されるジャパンカップにも行く気で色々準備していましたが、無謀でした(土曜日のクリテリウムのみ参加)
いつまでもあると思うな、体力と気力。

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