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気がついたらチーズを大量に衝動買いしまくってたというだけの話

自分は、チーズが好きだと思っていました。
おやつはチーズを食べれば幸せだし、料理をしてるとなんにでもチーズをかけちゃうし、ケーキはチーズケーキが好きだしチーズ味のお菓子はすぐ試したくなるし牛丼は迷わずチーズ牛丼一択だし。

でも、ある日気がついてしまったのです。
自分が好んで食べるチーズって、カマンベールかスライスチーズかピザ用チーズくらいじゃない!? そもそも、自分全然チーズの種類とか詳しくないし……と。

その事実に気がついてしまったとき。衝撃を受けると共に、喜びとワクワクが込み上げてきました。

この世には、自分がまだ知らないチーズで溢れている!
つまり、新たな出会いがわたしを待っている!!

思い立つと、我慢できずにすぐ動いてしまうのが、自分の短所であり長所。気がつけば、これまで買ったことのないタイプのチーズを、五千円分衝動買いしていました。

五千円あったら服が買えるのに。
五千円あったら素泊まりのホテルに泊まれるのに。
五千円あったらちょっとしたコース料理食べられるのに。
五千円あったらバイキング行ってお釣りだって返ってくるのに。
五千円あったら本、買いまくりなのに。

なのに五千円チーズ買うって。わたし、よっぽどチーズ大好きなんだなと。しみじみと思い知りました。

そして果たした、記念すべき新しい出会い。
その一つが、ブルーチーズ。

名前は聞いたことがありました。青カビの生えたチーズだっていうのも知っていました。『銀の匙』でも確かピザにかけて食べていました。カマンベールが好きだなら、色が違うとは言えカビが生えているチーズ、という点に拒否感は覚えませんでした。

買ったブルーチーズは、薄いシート状になっていて、それが何枚も重なっています。わくわくしながらそのシートを一枚取って、食べることにしました。

早速、一口。
うきうき口に放り込こんだ、二センチ四方くらいの欠片に。
わたしは、混乱し固まってしまいました。

よく知るチーズの味をエグいくらいに濃縮したような。それにしょっぱさをひたすらくわえて、青臭さと生臭さの中間のような後味を加えたようなそんな、味が。口いっぱいにしつこく広がる。

塩辛……?

ふと、そんな単語が頭を過りました。
ごはんのお伴に人気の塩辛に、何故だか似ているような気がしました。同じ、発酵食品だからでしょうか。(あれ、塩辛って発酵食品?)

とにかくパンチの効いたその味に、いきなり右ストレートをくらった気分で、わたしはようやくそのチーズを飲み込みました。

美味しかった、という言葉は出てきませんでした。
ただ、脳裏に浮かんだ言葉は、再びわたしを打ちのめしました。

--わたし、これ。好きじゃないかもしれない。

チーズが好きだから買ったはずのチーズが、まさか好きじゃないなんて!
冷蔵庫には、食べたことのない種類のチーズが、まだ大量に残っています。それなのに。一発目から好きじゃないとか。

ブルーチーズ自体、まだたくさん残っています。冷蔵庫にも、目の前の皿にも。
残す、捨てる、という選択肢はありませんでしたが、「これを全部食べるのか……」という思いはなかなかに重いものがありました。

しょせん、自分はただカマンベールが好きなだけで、純粋なチーズ好きですらなかったのだと。

そう思い知りながら--でも、と。頭のどこかで誰かが囁きます。
好きじゃないと結論づけるには、まだブルーチーズのことをなにも知らなさすぎる、と。

これだけ有名で、長いこと作り続けられてきたチーズだもの。そのポテンシャルを、自分が引き出せていないだけかもしれない。

かくして。
わたしの、チーズをより美味しく食べるための試行錯誤が幕を開けたのでした。

(たぶんつづく)

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