聴覚障害児とことばがけ

昨日は空が晴れ渡っていて、気持ちよかったなあ。
朝は少しひんやりして空気が澄んでいる感じ。
この静けさが地味に好きです。

✅空気が「澄んでいる」とか
✅空が「晴れ渡る」という表現は、とても抽象的な表現ですよね。

このようにハッキリと目の前に具体物のない言葉というのは、
聴覚障害児の言葉の世界に
意味を伴って定着させていくことって難しいです。

例えば、目の前にテレビやお米などの具体物があれば、そこに
「テレビつけようか」、「お米を炊いた」など具体物と名詞を結びつけることができます。

✅「澄んでいる」
✅「晴れ渡る」という
概念的な言葉は、目の前に具体物がありません。

それを「意味を伴って」子どもの中に定着させるには…

「体験」に勝るものはないと思います。

それも、子どもが強く興味を持っている事物に関連する体験がとても大切だと思います。

これは健聴児でも聴覚障害児でも同じことですが、お子さんは自分の興味のないものには、
大人がどんなに声をかけても見向きもしません。

ですが、ここで健聴と難聴の違うところは、見向きをしていなくても健聴児は「なんとなく」耳に「入っている」ということです。
聴覚は24時間開かれている感覚ですので、自分があえて注意を向けなくても
「なんとなく聞いた経験」が積み重なり、私たちはそれを使いこなせるようになっています。
だから、健聴のお子さんを育てる、育っていく場合は、そこまで言葉の語りかけを意識して(言葉のシャワーを浴びせると言ったりします)を行うことってないと思います。
ですが、聴覚障害のあるお子さんは、なんとなくの「入口」がまず十分ではありません。
そうすると、自然に入る情報が絶対的に少なくなり、
自分の興味の範囲、しかも、その範囲の中で意識して意味づけされた言葉のみが聴覚障害児の知る世界、情報になると考えることができます。

また、ご自身のお子さんに難聴があるとわかったお母さんは、深く葛藤されます。
自分の声は子どもには届いていないのかもしれない、語りかけに意味はあるのだろうか?
そんな中、笑顔で活発にお話しするということは気持ちの上でも大変なことだと思います。
これって、自然なことだと思います。
だから、無理はしないでほしい。
その思いを打ち明けていただければ、それが最初だと思います。
そういう存在になっていきます!

聴覚障害児の置かれている状態というのは
シャボン玉の中に聴覚障害児がいて、外の世界からわずかに切り離されている状態というイメージでしょうか…。

ですから、聴覚障害児の言語発達はゆっくりになる傾向があります。
また、順調に発達しているようにみえても、
学習内容が高度になり抽象的な思考の段階に入ると、
国語の読解問題や数学の文章題が苦手になり、結果的に学力不振になってしまう。

小さい頃の聴覚の制約という一次的な障壁
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長い目で見ると、学力不振やコミュニケーションの不全という二次的な障壁
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そこからさらに自信の喪失のような三次的な問題に発展

「きこえない」あるいは「きこえにくい」という一つの事実が
ネガティブな連鎖を生んでしまう可能性をはらんでいます。

だからこそ、なるべく早く難聴を発見し、
補聴器や人工内耳を含めた補聴支援機器による
聴覚補償が必要だと言われています。
まずは、情報の入り口を保障することから始めようということですね。
それと同時に、ご家族のケア・難聴への理解を深めていくことも必須です。

資源となりうる私たちが、そのことを認識し、ご家族にわかりやすくお伝えすることが大切だと痛感する日々です。

では、補聴器や人工内耳を装用して、ひたすら言葉をかければいいのか?

私はそうではないと考えています。
あくまでも、「子どもの興味の方向」にこちらが寄り添い、そこに自然に言葉を添えていく。

このことが大原則であり、
子どもと周囲のかかわりは、決して健聴児と大きく変わるものではないと思います。
子どもの心が伴った状態で子どもとのやりとりを楽しんでいきましょう。
特に2歳頃までのお子さんに関しては、周囲とのかかわりがとにかく楽しいものであるように、お母さんや先生とやりとりすることを「好き」でいてくれることを、私は一番大切にしたいと考えています。

そういったやりとりを楽しむ土台をしっかりと育んでおくことが、
そののちに色々なお話を深く深く掘り下げていくことも楽しむ姿勢につながっていき、
教科学習の深い学び、社会の中で生きていくときの糧になっていくのではないかと思います。

子ども時代は人生の中で見れば一瞬のことです。
ですが、その一瞬をどのように生きるのか、
楽しいことを楽しいと感じながら、自分を取り巻くすべてのものとのかかわりを通して色々な経験を自分の身体をもって積み重ねることが
ずっとずっと先の子どもの姿に還っていくのではないでしょうか。

ご家族にとって苦しいことはもちろんたくさんあるかと思います。
その中にあっても、不安を少しでも和らげて
笑顔で過ごせる時間を生活の中に増やしていけるよう、一緒に歩ませていただきたいです。

読んでいただきありがとうございます!頂いたご支援は、言語指導に使用する教材開発や勉強会への参加費用に充てさせていただきます!