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海外ミステリがお好き。6月の読了本まとめ12冊

いまさら気づいたんですが、わたし、海外ミステリーが好きかも。

カタカナの名前を覚えるの苦手だけど、豪華で非日常な気分を味わえるのがいい。翻訳された硬めの文章も実は好き。

特にロマンス要素のある海外ミステリのストライク率が高い。美男美女だと尚よし。探偵と助手のバディものもやっぱりいいね、大好物!

「ベストセラー小説の書き方」ディーン・R・クーンツ

小学生のころ、市の図書館で小説技法の本が並んだコーナーを見るのが好きだった。そのときから、ずっと見覚えのあるレインボーの表紙。最近、クーンツが書いた本と知ってようやく手にとってみた。

ものを書くということは、技術であると同時に芸術であり、それは芸術家の側に「思い入れ」、すなわち心の深いかかわり合いを必要とするのだ。「思い入れ」というのはつまり、作家は自分自身がかかわっていることから、心から関心を持っている材料、気に入っているストーリーや登場人物について書くべきだということだ。

個人的には、小説技法本のなかではトップクラスで好きな1冊。内容は、読んで読んで読んで、書いて書いて書きまくれ。ということに尽きるのだけど、説得力がある。

「ダリの繭」有栖川有栖

臨床犯罪学者火村(作家アリス)シリーズの長編。サルバドール・ダリを愛する宝石商の社長が殺害された事件を追う。めちゃくちゃどうでもいい余談だが、ダリも、宝石商の社長も、この私も誕生日が一緒(5月11日)だ!

有栖川作品は本格ミステリでありながら、最後の人間ドラマ的しんみり感がうまい。自ら人を殺したいと思ったことがあるから、という理由で犯罪を暴く火村というキャラクター性ゆえか、追い詰められた人々の蛮行よりも、悲しみが先に立つ。

にしても、冒頭からふたりでお祝いディナーをしている火村とアリスの仲のよさったら妬けてしまう。アラサーになっても、こういう友がいるのはしみじみ貴重だよね。

「星間商事株式会社社史編纂室」三浦しをん

問題児(?)が寄せ集められた窓際部署で、社史(同人誌)を作るぞ! と、最初はバラバラだったメンバーが一致団結していく様子に胸が熱くなるスポコン的小説。

しをん氏の「舟を編む」と「エレジーは流れない」を足して割ったような、ゆる~い人情派ストーリー。後半に出てくる「私たちには、同人誌があります!」って言葉が、思わずグッとくるんだなあ。

お金のためじゃないのよ。というのは簡単だけど、情熱そのものを伝えるのは難しい。ここまで、のめり込めるものがあって、同志がいるっていうのはかけがえのないものだなと、正直うらやましい。

「死体を買う男」歌野晶午

夜な夜な女装しては月を見上げて泣いていた美青年。彼の死は自殺か、それともーー?

この謎めいた事件を、江戸川乱歩と萩原朔太郎が探偵として追求していく作中作と、その作品をめぐる人々のやりとりが絡み合う多構造ミステリ。

SNSの読了ツイートで見かけて、手にとってみた1冊。いやあ、こういうのがもっと読みたいなあ。おもしろい! 乱歩作品を彷彿とさせる猟奇的で耽美なモチーフや妖しげなキャラクター、思わずよだれが出ます。

この作者の他作品も読んでみたい。

「死の泉」皆川博子

買ったはいいけど、もったいないが勝ってずっと飾っていた1冊。第二次世界大戦、ナチの施設が舞台で、心に余裕があるときじゃないと闇落ちしそうという理由もあった。

金髪碧眼の子どもたちを女に生ませるための施設、レーベンスボルン。容姿が優れた子どもたちが拉致される場所でもある。その時代に翻弄された女性を主人公にし、美しい少年たちの復讐心、時代に隠れた犯罪的目論みなどが絡み合う超重厚ミステリー。芸術的完成品。

ずっと歴史ものは苦手意識があったのだけど、この作品を十分咀嚼するだけの素養が自分にないことが初めてもどかしくなった。もっとこの時代について知りたいな。ぐいぐい引き込まれる圧倒的美文だった。

「ゼロ時間へ」アガサ・クリスティー

クリスティーのノンシリーズ長編で読了した8冊のうち、ダントツで好きと思った「ゼロ時間へ」。

ダメ夫が自分の良心の呵責をなくすために元妻と不倫から正妻になった女性ふたりを仲良くさせようとする地獄の休暇。そして殺人事件。もう人間ドラマがおもしろすぎる!!!!!!

最後にすべてがつながって、カチッとピースがはまるパズル的なおもしろさもあり、甘酸っぱいロマンスもあり、身悶えた。クリスティ、愛してる。

「おいしいワインに殺意を添えて」ミシェル・スコット

「覚悟はいいかい」デリックが言う。
「何を言うの? それどころか、期待に胸をふくらませているわ」
「だったら、自信を持って請けあおう。今夜きみが目にするのは、究極のメロドラマだ」

売れない女優の主人公は、ワインに関する豊富な知識を見初められて、名門ワイナリーのイケメンオーナーから一緒に働かないかと誘われる。ワイナリーに訪れると、職人が殺されていてーー。

ユーモアよし、ロマンスよし、ワイントークよしのコージー・ミステリ。会話のテンポが心地良いし、イケメンハーレムだし、ワインに合うレシピが付いているし、好き。

だけど、ミステリーとしてはちょっと突っ込みどころが多いのが残念。もとはシリーズらしいんだけど、日本語訳はこの1冊しか出てなくて、察してしまったよね…。でも好き。

「ロリータ」ナボコフ

先月読んだ、生徒と教師の秘めた恋は性的虐待だったのか? という内容の「ダーク・ヴァネッサ」(ケイト・エリザベス・ラッセル)とのつながりで手に取った。12歳の少女を狂おしく愛する男の恋愛文学。

普段ならあまり手に取らないジャンルだけど、ミステリ的なスリルもあって想像以上に引き込まれた。実際に手を出してしまうことは許し難いけど、愛するという感情の芽生えまでは否定できない。

いやでも、愛と性的欲望って似て異なるものよね…。男の視点から見るせいか、12歳の少女がやけに悪魔的だったところも現実との解離というか、歪みを感じた。

「水曜日のジゴロ 伊集院大介の探究」栗本薫

深夜の六本木に店を構えるのは、同性しか愛せない男装の麗人。しかしその店に美しい男が出入りするようになってから、界隈では女性を狙った猟奇的連続殺人事件が発生する。美しい男を疑いつつも、惹かれていく自分がいてーー。

話とは全然関係ないんだけど、ハンバーガーが1個59円の時代! たった20年前の話なのに、まあ値上がりしたもんだ…。

全体的にやおいな空気のある作品。前に読んだ伊集院大介の薔薇は好きだったけど、こちらはあまりハマらなかったな。

「緋色の研究」アーサー・コナン・ドイル

かのシャーロック・ホームズとワトソンが出会い、ふたりで挑む初の事件。

ホームズは映画やドラマでよく取り上げられているから、つい物語ぜんぶを知った気になっているんだけど、久しぶりに手に取ったら新鮮でわくわくした。クリスティもこの探偵物語に夢中になってお話を作り出したというからなあ。

ワトソンが手放しにホームズの推理力を褒め称えると、頬を上気させて恥じらってしまうホームズが可愛くて胸きゅん。

いろんな出版社から訳者違いで出版されているけど、私は深町さんという方が訳した創元推理文庫版が好み。挿し絵がついているが見ていて楽しいし、前に人物一覧がついているのがありがたい(文庫によってはついていない)

「図書館の海」恩田陸

ノンシリーズ短編集。「夜のピクニック」や「六番目の小夜子」のスピンオフ(?)も入っている。とくに夜ピクは、そもそも本編の予告編として1日で書き上げた作品というから大興奮!(あとがきより)

恩田氏らしいジャンルレスな短編集なんだけど、個人的にはやっぱり死の気配が漂う不穏な物語が好きだったな。

最初に掲載されている「春よ、こい」は自然と頭に音楽が流れはじめて、めまいに似た不思議な感覚を抱く作品だった。同じタイトルのユーミンの名曲をBGMにして作成した作品らしく、あのリフレインするサビの美しく哀しげな感じが物語とマッチ、というか完璧にリンクしてた。

「放課後」東野圭吾

東野圭吾のデビュー作品。妻帯者で教師の主人公は、何者かに命を狙われている。そんななかで同じ学校の教師が殺される。犯人の目的はーー?

「仮面山荘殺人事件」がめちゃくちゃ面白くて期待していたんだけど、主人公が好きになれなかった。当時の男性優位社会が肌に合わぬというか。まあ、それを言ったら仮面山荘~の男主人公も好きではないんだけど。

でもミステリー的なオチは嫌いじゃない。後日譚が気になる。

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