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記憶の中に見えたサスティナブル



私は母の実家の曽祖母、祖父母にとにかく可愛がられ、多くの時間を祖父母達と過ごした。

冬。
家の中の暖かいストーブのうえに
しゅんしゅんとやかんが音を立てていて
そのとなりで窮屈そうに
お鍋がくつくつと音を立ててた。
加湿されたその部屋の窓に、
指で絵を描いた。


時々曽祖母が、お饅頭や干し芋が固くなったものを、焼いてくれる。
香ばしくて美味しいそれが大好きだった。


夏。
早く起きて、お米の研ぎ汁を植木にやり、
玄関先に水を撒く祖母。

摘んできたペパーミントにエタノールを混ぜて
ミントチンキを作っていた。
虫除けに使う。
お風呂にも良い。
でもスースーしすぎて好きではなかった。

祖父は読み終わった新聞を切って、
袋をいくつも折る。
他にも四つ切りにしてとっておく。

生ゴミの匂いを消すんだ。
インキの油分が、ガラスや木に艶を出すんだ。と、色々と説明をしてくれた。

明治生まれの曽祖母は、
ご飯を食べ終わるといつもお釜を抱えて、お釜やおしゃもじに残ったご飯を箸でつまみ、一粒一粒食べていた。

お行儀悪いなぁ

と、苦言を呈したことがある私。

曽祖母は、もったいないもんと、
にこにこするだけ。

明治から平成を生きてきた曽祖母が
そうする理由を今ならわかる。

食べた後のお皿に残った汁気は、
まばらに切ったさらしや、新聞紙で拭い、
それから食器洗いをしていた祖母。

さらしは、
重曹を入れたお湯でゆでていた。

そのお湯が冷めれば
それで食卓や、棚や
ガラスを拭いていた。

祖母がよく言っていた。

"川に流れるお水が汚れたら
おじいちゃんが釣ってくる鮎が
美味しくなくなるでしょう。"


そうそう
思えば祖父母の家のはたきは
可愛い柄の布だった。
柔らかい果物を包む布も
お布団の穴を塞ぐのも
可愛い柄の布。

それはくたびれた長襦袢。

着物がたくさんあって
くたびれたら裏を取って
八掛を変えて
長襦袢にして
お布団にして、、

着物はほぐせば一反の布となり形を変える。
衣類として使えなくなれば
掃除道具や、お布団、おむつになる。

夢中で摘んだ数珠玉の実を
はぎれで包んで可愛いお手玉にしてもらった。

究極のリサイクルだと
子供ながらに思っていた。


*  *


今朝、新聞紙で袋を折っている時に
そんな風景を思い出した。
同時に『SDGs』という言葉を思い出す。

直に見ていた生活風景にあった知恵と工夫は、自分達の住む環境に繋がっていることに気付く。

トレンドワードで終わらせない様に、
自ら触れてきた生活の中から、
今できることを考えていこう。

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