映画「us」は悪夢的悪夢

ようやく「us」を見ました。

ジョーダン・ピール監督の前作Get Outが面白かったし
2019年の貧困分断ムービーのひとつですので、見なくちゃ!

以下は一緒に映画を見に行った人と帰りにコーヒーを飲みながら話すノリで書きますのでネタバレしかしていません。

既視感のある妄想

様々なエピソードが、子供のころに感じた既視感のある不安や不気味さなんですよね。

遊園地は楽しいけれどどこか怪しい・・・「たくらみ」感があるような。
ホームレスにからまれる感じ。
自分がしらない世界が地下に存在してたりして。
自分そっくりな自分がいたら、今の自分はどうなっちゃうんだろう?
この偶然が続く感じってなにかを暗示してたり?

こういうのって、子供のころ、フッと一人で考えませんか。
で、そういうのを後で悪夢に見たりして。
誰かに話しても仕方ないから、積極的にあまり話題にしないし
もう大人になると忘れちゃうような
不協和音的な不快感を具象化して映像にしてるのが面白い。
古臭くはないけれど、どれも個人的な既視感があるんですよね。
忘れていた妄想記憶を取り出してくれてスッキリ感ありました。

「私がこういうことをしたのは・・・」

そういう悪夢的雰囲気はすごい好きなんですが
最後、主人公が突然、自分の動機とか背景とかを独白しだしますよね。
火曜サスペンス的に。
しかも黒板の前に立ってレクチャ~!みたいな。
あれはどうにかならなかったのかってのはありますね。
しかも結構、親切に一人でペラペラ話すんだけど、説明しきれていない。

ファンタジー世界なら魔法だって特殊能力だって霊だって使い放題ですが
これは現実の世界ですよ~ってモードになるんですが
いや、そうするとあれはどうなるんだ???ん?おかしいな?
って頭のなかでバグを起こしました。

そういう意味でも悪夢的な映画だなって思いました。
夢ってツジツマ合わないし。唐突だし。でも夢はそんなもんですから。

アイデンティティ

それにしてもこの監督は前作のGet Outもそうでしたが
自分という存在の不確かさってのが強烈なテーマですよね。

監督自身は、お父様が黒人でお母様が白人でしたが、離婚し
白人のお母様に育てられたので、周りはほとんど白人だったそうです。
アメリカの白人社会のなかで、見た目が黒人っぽいってのは
相当なことなんでしょうね。
きっと黒人ぽい子が白人っぽい英語を話すと
周囲は戸惑うだろうし、かといって黒人ぽい英語を話すなら
お母さんの英語と違う英語を話さなきゃいけないわけで。

話は飛びますが
日本語は地域によって訛りはありますが
「育ち」とか「生まれ」による日本語の違いってあまりないですよね。
でも最近、ヤンキー日本語というのが確立してるのでは?と思うんですよ。
ハッとしたのが万引き家族の安藤サクラさんの話し方を聞いたとき。
あれ、ビッグマミィ美奈子さんの話し方だ!って思いまいした。
ヤンキー女性ってあぁいう話し方しますよね。
喉をつぶして声を出す感じというか。間延びした独特のイントネーション。
ちょっと南部の黒人女性の英語に似ている雰囲気。
もしかしたら、ヤンキー女性日本語として確立するのかもなぁ。

貧困というテーマ

多分、この作品の元の元はGet Outと同様な強烈なアイデンティティ不安がもとになっているんじゃないかなぁ。
で、その不安の行先に「貧困」ってのがあって、2019年激アツだった「分断された貧困層の怒り」にからまったんだと思います。
監督自身の話として
「幼い頃、道にいたホームレスの黒人の男の子を見て、自分があの子だってこともあっただろう」ってのがこの映画の元になっていたそうですから。
(↑話の内容は、こんな感じっていう私の不確かな記憶です)
「分断された貧困」をからめたことで映画が壮大になって面白くもなってますけど、同時に混迷もしちゃってる気がします。

もし、もし、できるなら、悪夢的な雰囲気はそのままに、もうちょっと話を整理して、すべてがツジツマ合って膝ポンにしてくれたら、本当に面白くなりそうなのになー監督、もう一回がんばってよ~って思った映画でした。

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