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別に好きでも嫌いでもなかったけどさ

今回の日刊かきあつめのテーマは「#忘れられない先生」である。うむ、忘れられない先生ならたくさんいる。特に高校時代は思い出が濃く、アルバムには卒業式の日に先生たちと撮った写真がいっぱい残っている。


思い出深い先生といえば……デザイン系の大学に入りたい私を一生懸命サポートしてくれた美術部の先生、数学の面白さを教えてくれた先生。とっても美人なうえに面白くてチャーミングな英語の先生も大好きだったなぁ。

私は先生たちと話すのが好きで、お気に入りの先生ができたらとにかく話しかけるタイプの生徒だった。授業終わりや廊下ですれ違ったとき、特に用がなくたって「先生ー!」と気づけば声をかけている。我ながらなかなかに人懐っこい性格をしていたのだなと思う。


でも、もちろん苦手な先生もまぁまぁいた。部活の顧問なんか二度と関わりたくないくらいトラウマになっているし、割と真剣に相談したのに何もしてくれなかった学年主任の先生も好きになれなかった。こういう先生には極力近づかないし、どうしても話さなければいけない事態になってもソツなくこなすのがベターである。

そう、私は無意識のうちに自分が関わった先生を好きか苦手かで二分していたように思う。末っ子という気質からなのか、高校の時から自分が快適に過ごす術をすでに身につけていたのかもしれない。


それでも唯一、そのどちらにも属さない先生がいた。それが高校三年生のときの担任だ。


先生は口数が多くなく、ぶっちゃけ何考えているかよくわかんない人だった。当時の自分が先生のことをどう思っていたのかも未だにうまく説明できないけど、比較的どの先生にも自分から話しかけに行くタイプの自分にしてはだいぶ嫌な態度をとっていたことは確かだ。

先生のことを好きでも嫌いでもないのに、ものすごく強い反抗心だけを持っていたからだ。


まぁ嫌な態度と言えどかわいいもので(自分で言うな)、ちょっと無視したり、わざと返事しなかったりとかそんなもんだ。

なんでか忘れたけど先生と言い争いになって、職員室を飛び出したこともあった。ムカムカしながら教室まで向かっていると、後ろから大きな声で名前を呼ばれて、それすらもムカついたことを覚えてる。でも呼び止められてちゃんと戻った私、偉いよね?いや、当たり前か(笑)。

とにかく反抗心が抑えられなくて、私はひたすら先生にツンケンした態度をとり続けていた。


そんな私と先生が唯一ちゃんと交流できていたのは、生活記録だ。私の学校では先生方お手製のB4ぐらいの冊子に、毎日の記録を書いて担任に提出する。いま手元になくて詳細はうろ覚えだが、家庭学習の記録を残したり、1日の反省点を書いたりしていたと思う。

その生活記録の冊子には、ページごとに小さなコメント欄もあって、1日の所感みたいなものを書く。だけど、なぜだが私はたまにイラストを描いたり、クイズを出題したりして先生をからかっていた。

「このイラストの感想を10文字以内で答えよ」とかね(ちゃんと隣に10マスの解答欄も用意している)。それで、返ってきたコメントを友達に見せて笑っていたわけだ。


ある日のこと、放課後に教室を掃除してるとそのことで先生から話しかけられた。なんて話しかけられたのかハッキリとは覚えてないけど「あの絵はなに?」とかそんなもんだったと思う。

こっちも絵に対するコメントについてちょうど物申したかったので、「先生こそあのコメントなに〜?(笑)もっとセンス良く返してくださいよー」とかそんな風に返答したように思う。たぶん傍目にはけっこう仲よさそうに映ってたんじゃないかな。他愛のない話をしたのもあのときが初めてだったように思う。


これをきっかけに先生と仲良くなった……なんてことはなく、結局私はそのあともツンケンした態度を続けていた。でも相変わらず生活記録に変なイラストとクイズは書いたし、先生もマメにコメントを返してくれた。なぜか生活記録を介すると仲良くできる自分が不思議だった。


よくよく考えると、私は父親への反抗期がほぼなかった(と自覚している)ので、持て余した反抗心はすべて先生に向かっていたのかもしれない。先生は年も近く見えたし、ナメてた部分も正直あったんだろう。でも、本当は10歳くらい離れていて、随分と大人だったんだけどね。高校生の無鉄砲さって本当に恐ろしい。

最後まで先生が生徒たちのことをどう考えていたのかよくわからなかったけど、卒業式当日のクラス会で先生はエールの気持ちを込めてビートルズの「Let It be」をギターで弾き語りしてくれた。

先生がギター得意とか知らなかったし、まさか歌うと思わなかったから、私は近くの席の子と目配せして笑っちゃったのを覚えてる。一番前の席でね。最後まで嫌な感じの生徒だったな、私(笑)。


ふと卒業式に先生と写真を撮ったのか気になってもう一度アルバムを開いてみた。でも、先生と一緒に撮った写真は一枚もなかった。やっぱり私は最後まで先生にツンケンした態度を貫いてみたい。

でもなぜか先生の「Let It be」は忘れられなくて、テレビとかで曲が流れると今でもあの時のことを思い出す。


先生、今でも元気にしてるかな? きっともう40歳過ぎたよね。アラフォーの先生とかまじで想像つかない(笑)。だって貫禄とかなさそうだもん。

でも、もし会えたらまたビートルズの「Let It be」を弾き語りしてもらうんだ。今度は笑わないでちゃんと拍手してあげようと思う。

執筆:otaki

編集:アカ ヨシロウ

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