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ライディング・ホッパー #5

承前


時代の始まり。それがアンダーグラウンドであったライディングギアレースが初めて企業によって公認された、記念すべき第一回目の大会です。始めは、復興半ばの時世にそぐわぬ仰々しさに眉をひそめる者も少なくありませんでした。しかし、その史上最高の盛り上がりと名高いデットヒートに、熱狂は瞬く間に全土へ伝播してゆきました。遺された旧世紀の衛星放送はこの時のために存続していたと言っても過言ではありません。この瞬間、荒廃した時代に、新たな文化の幕が上がりましたーーーアモウ・ケーブルチャンネルTV『ヒストリー・オブ・ライディングギアレース』より


”流星”は速度を一切緩めることなくゴール地点へ落下していく。

「あのバカ野郎、クレーターでも作って死ぬつもりか?」

トウヤは空を見上げながら毒づいた。『ダークホース』はヒビだらけの路面を蹄で粉砕しながら駆ける。肉眼では追い付いているのかどうかも疑わしいが、最早彼には死力を尽くして走り続けるしかない。

……ォオオオオオォン……

後方から化け物が喉を鳴らしたかのような、凄まじいジェット音が響いてきた。

「は?マジかよ、おい!」

ちらりと振り返ると『フェアリーテイル』が想像を絶するスピードで空を裂いて迫ってくる。ガラスや廃街灯が破壊の嵐で舞い上がっているのが見えた。尋常の速度ではない。

「こっちにもバカがいたぜ!」

トウヤは『ダークホース』に鞭打ち、さらに速度を上げる!早く!もっと早く!


空。

ゴールラインまで500メートル。
”流星”が脚を折り畳み、腰部を捻った。機体が急激にスピンする。

300メートル。
頭部と首がシートに固定され、シートベルトが胸を圧迫するほど締め上げる。

100メートル。
ショックアブソーバーが牢獄のように展開した。それを合図に脚部がピンと伸びあがる。

瞬間。轟音と共にギアは地面に着地、否、激突した。

その数瞬後に、『ダークホース』と『フェアリーテイル』がほぼ同着で横を通り過ぎた。


【#6へ続く】

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