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ライディング・ホッパー:チャプター1 #1

ライディング・ホッパー 総合目次


小雨が降る住宅街後を逆関節の駆動脚(ライディングギア)が飛び跳ねてゆく。

大崩壊後に液状化現象によって底なしの沼に変貌した高級住宅街は、今なおその範囲を広げつつあり、立ち入り禁止のフェンスさえ飲み込んでいた。この辺り一帯を訪れるものと言えば沼の半ばまで傾き浸かった住居から金品を掘り出そうとする盗掘者くらいだが、ぬかるみに嵌って放置されたバンやライディングギアがその成功率を物語っている。

「一歩踏み外したらあれと同じ末路って訳ね」

「私のサポートがあるのでまず問題ないとは思いますが、足場には充分に気をつけてください」

「いつも一言多いよ、トレミー」

軽口のような会話だが、ワタルの顔は極めて深刻な表情をしている。

「ヤツは?」

「500mの距離を守って後方につけられています」

「完全に高みの見物じゃん。余裕しゃくしゃくって感じで腹が立つなぁ」

「仕方ありません。何しろ、」

後方で破砕音が響いた。

バックモニターで確認すると住居のひとつが内側から爆発し、巨大なシルエットが姿を現した。無骨な無限軌道に泥をかき進むショベル。既に人の形を成していないギアの頂上部には王座のような操縦席。これこそが大崩壊後の世界を統べる企業連合アライアンスの一角、巽建機が誇るエースギア『国引(クニヒキ)』であった。

「企業の御曹司が相手となればね」


【#2へ続く】

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