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新型コロナで利用激減の病児保育を救う「特例措置」について解説します

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の拡大によって利用が減少している病児・病後児保育施設に対し、各自治体から補助金を交付するよう国が求めた「特例措置」が通達されました。

病児・病後児保育施設は、体調に不安があり保育園では預かれない子どもを一時的に預かる施設のことで、仕事等で休めない親と子ども双方にとって社会のセーフティネットとして機能していますが、コロナ禍の利用者減によってその経営は危機的状況に陥りつつあります。

そこで2020年7月10日に、内閣府子ども・子育て本部参事官(子ども・子育て支援担当)と 厚生労働省子ども家庭局保育課から、各都道府県に対し、「病児保育の委託料の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う子ども・子育て支援交付金における 病児保育事業の取扱いについて」が発表されました。本記事では、病児保育が直面している課題と今回の特例措置について、より多くの方に知っていただく必要があると考え、詳しい解説をさせていただきます。

<令和2年度の病児保育事業の取扱いについて>
病児保育施設において病児保育の提供に必要な職員を確保するなど、サービスの提供体制を確保していると市町村が認める場合には、加算単価の適用に当たっては、市町村において、新型コロナウイルス感染症の状況や利用ニーズ、 確保されている提供体制等を勘案して想定される各月の延べ利用児童数をもって当該月の延べ利用児童数とみなすこととして差し支えない。ただし、この場合にあっては、前年同月の延べ利用児童数を上限とすることとする。
病児保育の委託料の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う子ども・子育て支援交付金における 病児保育事業の取扱いについて」より引用)


病児・病後児保育施設の利用者減少の背景

4月7日より全国的に発令された緊急事態宣言により、保育園は利用自粛や休園となりました。

同時期に、保育園ではお預かりできない、風邪などの症状がある子どもを一時預かりする病児・病後児保育施設の利用も大幅に減少しました。
​​利用減少の背景として考えられるのは以下の3点です。

① 保育園の休園、登園自粛
​​② 病児保育でも感染拡大防止のため、受け入れ制限を行ったこと
​​③ 手洗いうがいなど感染症対策の定着により、新型コロナウイルス感染症以外の病気の流行が例年より減少

病児・病後児保育室でも感染拡大防止のため、運営の自粛をする、1室1人のみのお預かりに限定する、診断名が確定しているお子さんのみをお預かりするなど、さまざまな対応が取られました。

こういった利用者側・施設側の背景によって利用が減少し、病児保育の現場も厳しい状況にあります。

病児保育の補助金の仕組み

病児保育は、国と県、市からの委託料によって運営されており、その委託料は、利用人数に応じて加算されているというモデルです。

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病児保育は社会のセーフティーネットであり、病児が発生したら対応が必須となりますので、常に準備を万全にし、人員を配置しておく必要があります。つまり日頃から人件費や施設の管理費などさまざまなコストがかかるため、平時でも約7割の施設が赤字経営となっています。

そこからさらに、今回の新型コロナによって利用人数が大幅に減少し、さらなる経営難に陥る施設が増えることが予想されます。

実際、​​緊急事態宣言が発令された4月〜5月の利用は昨年度の1割程度にも満たない施設がほとんどです。下記のグラフは、東京都内のとある病児保育施設の週単位ごとの利用人数の変化を、昨年度のデータと比較したものです。

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この施設は定員数が多く、毎年多くのお子さんをお預かりしています。しかしながら、例年だと夏風邪が流行し利用人数が増加する6月も、利用人数は低迷したままの状態です。​​

​​病児保育協議会をはじめ全国の施設関係者が行動を開始し、特例措置決定へ

今回の危機的状況を乗り切るため、病児保育協議会では、全国の施設を対象にアンケート調査を実施し、その結果を踏まえ、加藤厚生労働大臣あてに要望書を提出しました。

​​また山口県では、全国病児保育協議会山口県支部で支部長の谷村聡先生が県に事業委託費の確保を要望を提出しました。
​​「コロナで病児保育利用激減 / 委託費確保を県に要望」山口新聞(2020/7/3)​​

協議会の会長である大川洋二先生をはじめ、病児保育に関わる先生方の熱意ある行動により、病児保育の提供体制を維持できるよう特例措置が設置されることが決まりました。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う子ども・子育て支援交付金における病児保育事業の取扱いについて(令和2年度)

全国の病児保育施設の皆様へ

特例措置はあくまで通達であり、実施されるかどうかは各自治体によって異なります。病児保育施設の方は、自治体の担当者の方にご連絡いただければと思います。

現在、あずかるこちゃんをご利用いただいている新潟県糸魚川市の「病児保育室ジオ」さんは、今回の協議会の連絡を受けて糸魚川市の担当者に内容を伝えたことで、特例措置が取られることになりました。なお、上記の糸魚川市の事例を例として提示していただいても構いません。

病児保育施設は子育て世帯のセーフティネットとして必要な場所です。

「あずかるこちゃん」は、現在厳しい状況下にある病児保育施設の皆様の力になればと思い、この記事を作成いたしました。​​本記事の内容について何か不明点や疑問点等あれば、お気軽にご連絡ください。​​

今回の特例措置によって、多くの施設が救われることを願っております。

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