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いろんな「お仕事」の世界

毎年、夏と秋の境目はあいまいで、涼しくなったと思ったらまた暑くなる・・・を繰り返していた気がするけど、何だか今年は秋が夏を押し出してしまったように、ガラッと涼しくなりましたね。
冬物の部屋着用のベストを出して、朝起きたらすぐに羽織るようになりました。

ほっこり系の話が読みたくなって

今年の8月、「いつか読まねば」と思っていた『日本でいちばん長い日』を読みました。
全編通して緊張感MAXの1冊だったので、終盤にさしかかる頃には「次は、ライトなほっこり系の小説を読みたい・・・」という気持ちになっていました。そして、その”次”に選ばれた作品がこちら。古矢永塔子さんの『今夜、ぬか漬けスナックで』

あの日は待ちきれず、仕事帰りにカフェで。

初読みの作家さんで、あらすじもほとんど知らなかったのですが、積読の中から直感で選びました。
漬物屋の祖母のもとで育った主人公が、疎遠なまま亡くなった母の家におしかけ、自分より若い母の夫と同居生活をおくる話です。(導入のあらすじだけ書くと、なんだか雲行きがあやしそうな話に見えますね)
母亡き後、母の夫が1人で切り盛りしているスナックで、主人公が漬けているぬか漬けを出すようになったことから、お店が「ぬか漬けスナック」と呼ばれるようになります。
何の前情報もなく読み始めましたが、心が殺伐としない物語で、我ながら良いチョイスでした。

定期的に読みたい「お仕事小説」

夏の思い出(?)の雑談はこの辺にして、今回書きたい本題に入りたいと思います。
今日のテーマはズバリ、「お仕事小説」です!

職場と家の往復で代わり映えしない毎日ですが、単純な私は、お仕事小説を読むと急に「よーし!私も頑張るぞー!!」という気持ちになります。(私の生活は何も変わらないのに笑)
私の中で「お仕事小説」といえば、朱野帰子さん原田マハさん

三者三様の”お仕事”

『対岸の家事』は、【家事】と【育児】がお仕事。専業主婦の主人公を中心に、育児休業中のお父さんや、結果的にワンオペになってしまっているお母さんなど、各家庭の家事と育児、会社での仕事や夫婦関係が描かれます。
これがまぁ・・・ものすごくリアルなんですよね。
家で子供と2人きりのパパやママの孤独感、予期せぬ子供の体調不良に振り回されるワンオペママの孤独感が絶妙にリアルで、正直、読み進めるのが苦しくて読了まで時間がかかりました。
でも、全体的に「もっと周りに助けを求めていい。家事も育児も1人で抱え込まなくていい」ということをずっと訴え続けてくれているような内容なので、読後感は爽やかです。

吉高由里子さん主演でドラマ化もされた『わたし、定時で帰ります。』は、会社に勤務するOLが主人公の王道「お仕事小説」。私、この小説を読むと仕事のやる気が出るんですよね。
「絶対に残業しない」を有言実行する主人公が、【定時】と【業務量】の概念がなくなってしまっている同僚や上司に立ち向かい、皆の意識を変えさせていく物語です。
これ、続編が2冊出ていますが、実は1作目以外は未読でして・・・。定期的にやってくる「お仕事小説読みたいモード」になった時に読もうかな、と思っています。

最後の『海に降る』は、なんと、深海に関するお仕事。WOWOWでドラマ化されたので、主演の有村架純さんが表紙になっています。
宇宙の研究機関としてJAXAがあるように、深海の研究機関としてJAMSTEC(海洋研究開発機構)があることを、私はこの小説で初めて知りました。
宇宙と同じくらい”未知”にあふれた深海で、謎の生命体の発見に注力する大人たちの物語。ラストはワクワクが止まらない、ものすごく夢のある小説です!
深海生物の特徴や、研究の進め方、有人潜水艇の構造の描写が丁寧で、登場する全てを調べながら読み進めたくなります。

「生み出す力」を感じられる2冊

『風のマジム』は、日本初の国産ラム酒をつくる物語。実話がベースになっていて、南大東島産の「COR COR(コルコル)」というラム酒がモデルです。
とにかく登場人物が皆いい人で、ずっと爽やかな気持ちで読み進められます。ラム酒の描写も本当においしそうで、影響されやすい私は、読み終えた後すぐCOR CORを購入しました笑

初めて「スピーチライター」という仕事を知った、『本日は、お日柄もよく』
最初のスピーチシーンから、心を鷲掴みにされます。
言葉で人の心を動かす、まさに「ペンは剣よりも強し」という感じです。
主人公がスピーチライターに弟子入りして成長していく様子や、言葉の力が政治に影響を及ぼしていく様子など、物語に勢いがあって一気読みしたくなります。

事実は小説よりも奇なり

最後に、小説ではなく「お仕事エッセイ」を。

国連のパリ支局

ブラックな働き方から抜け出したくて国連の採用試験を受け、なんと受かってしまった川内有緒さんが、国連パリ支局で数年間過ごした日々をつづった『パリの国連で夢を食う。』
美しく穏やかなパリ、統率のとれた国際機関・・・という私のイメージを、テンポよく面白く、ことごとく塗り替えていった1冊です。(少し前のエッセイなので、今は事情が変わっているかもしれません)

国連って、どんなイメージがありますか?
私は、「巨大な公務員組織」で「世界中の頭脳明晰な人材」が集まっていて、「国際問題に関しては最先端」なイメージがありました。読むと、半分くらいは合っていたとわかります。
でも、職員は国連内でタバコを買うと免税だったり、ごみを分類する習慣がなかったり、非正規職員の時給が最低賃金を割っていたり・・・「国連なのに?!」って状況が出てくる出てくる。
そして、文化も宗教も個性も異なる世界中の人が1つのオフィスで働くということは、想像以上の困難が伴うのだと学びました。人種と個性のごった煮状態です。

腑に落ちないことも、困難も、たくましく面白く書く川内さんの筆力が素敵です。ちなみに川内さんは、この本の終盤で、文筆家になると決心し退職して帰国します。(現在、noteでも執筆されています)
「こんなことまで書いちゃって、大丈夫なの?!」と思うところも多々ありますが、読み終えてみると、みんな笑って快諾してくれそうな気がしました。

私のkoboには、積読状態のお仕事小説がまだいくつか眠っていますが、皆さんのオススメお仕事小説やエッセイがあったら、ぜひ教えてください。

今回ご紹介した本はこちら


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