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最近読んだSF作品について(4選)

ほとんど伴名練作品のレビューになるが、最近読んで面白かったSF作品を上げていく。
意識せずに読んだのだが、全てが百合SF
ガンダムといい、最近はこの手のジャンルが流行りらしい。
時代にはあっていると思う。
現実も性別の壁を突破しようとしているし、ハリウッドも優しいポリコレ世界を構築しつつある。

1.なめらかな世界と、その敵

表紙絵とタイトルに惹かれて購入。
ジャンルがSFというのも読むまで知らなかった。
SF短編集なのだが、どの話も結構エモい。

表題作は、自分の好きな世界線へ自由に行き来できる話。
爽やか青春モノで、やや百合SF。
終盤の描写に圧倒される。

「美亜羽へ贈る拳銃」は伊藤計劃『ハーモニー』に贈る物語。
歪んだ感じのラブストーリー。自分の性格もナノマシンで改造できてしまうところは、中々のディストピア。
自分のことを憎んでいる女性に惚れた主人公のことを考えるとツラい。
読んでいて気持ちの置き場に困った。
この作品でミァハを知り、『ハーモニー』を購入するに至った。

「ホーリーアイアンメイデン」は死んだ妹からの手紙。
妹からの手紙を読んでいくと、死に至るまでの経緯が分かるのだが、感情が重い。
ジャンルはSFというよりファンタジー。
姉の力は1人で『ハーモニー』の世界を実現できそうな感じがして怖い。
本人に思想がない天然系なのが救いかもしれないが。

「ひかりより速く、ゆるやかに」は時間が止まった新幹線(修学旅行)と、その新幹線に乗れなかった主人公の話。
ヒロイン?の妹想いの金髪ヤンキーが、良いキャラをしている。
全体的に暗めのアンソロジーが多い中で、最後に明るい話を持ってきたのは良かった。

2.全てのアイドルが老いない世界

永遠に生きることができるアイドルの話。
不老不死ではなく、他者から生命エネルギーを吸う手段としてアイドルを選んでいるのが面白い。
70ページ程度の中編であり、もう少し膨らませれそうな感じ。
登場人物も3人程度で、非常にテンポが良い。
設定だけでもジャンプで10巻前後の名作が生まれそう。

3.百年文通

机に入れた手紙が、過去へと繋がる話。
ドラえもんを思い出した。
「ホーリーアイアンメイデン」と同じで、手紙のやりとりがエモい。
内気な現代の女の子と、好奇心旺盛で活発な大正時代の女の子。
姉の文通相手に嫉妬する妹。
百合SFというジャンルが割と前面に出ているが、悪くない。
引き出しには、手紙以外も送ることが可能と分かってからは展開がかなり広がる。
詳しくは言えないが、今の時代に読むと面白さ倍増。
電子書籍しかないので、人に貸せないのが残念。

4.ハーモニー

言わずと知れた伊藤 計劃先生の遺作。
美しいディストピアの世界。
「美亜羽へ贈る拳銃」でこの作品を知った。
文章や台詞回しはラノベっぽさが残るが、世界観の作り込みが上手い。
人類にとって有益なシステムが、一部の人間にとって苦痛になっているというのは納得してしまった。
終盤の展開には、ただ圧倒される。
作者が死ぬ間際に書かれただけあって、世界のあり方を意識された作品だと思う。

ノベライズ版も購入。(全4巻)
ファンとしては文句のない完成度。
三巷 文さんは、相当作品を読み込んだのだと思う。
キャラの感情表現も上手いし、エロ漫画雑誌で能力を活かしているのが惜しい。
なんなら伴名練さんのノベライズは、この人に任せたい。
多分、文句のない作品ができるはず。

『ハーモニー』は映画版もあるそうなので、後日観てみようと思う。
(ラストがオリジナルと違うと書かれていたのは、やや不安)

御冷ミァハ
表情がエモい


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