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書店の生存戦略について

書店ゼロの自治体が全体の27%になったそうだ。
町の文化を守るために、経済産業省が書店を支援するプロジェクトチームを発足したが、正直言って復活は難しいと思う。

まず、本を読む人自体が少ない。日本人の半数は1ヶ月に1冊も読まない。

1か月に大体何冊くらい本を読むか(問10)

 読まない:47.3%

 1,2冊:37.6%

 3,4冊:8.6%

 5,6冊:3.2%

 7冊以上:3.2%

文化庁「平成30年度 国語に関する世論調査」

調査から読書をする人のほうが少数派という事実が見えてくる。
読まない人が書店を利用する理由はないだろう。
(文房具を買うくらい)

そして、ライバルである電子書籍(Amazon)は場所を取らないし、欲しい本を購入してからすぐに読むことができる。
自分は電子書籍リーダーとしてKindleOasis(2019)を使用しているが、これ1個で数千冊の本を持ち歩けるし、防水なのでお風呂読書を楽しめる。
本棚もいらないので引っ越しする際もラクラクだ。
本≒コレクションと考える人間でなければ、電子書籍一択だと思っている。

そして書店云々の前に、本というメディアはタイパが悪すぎる。
動画のように早送りもできないので、YouTubeと違って情報を得るのに時間がかかる。
良い本かどうかも運要素が強く、良し悪しを判断するにはある程度読み進めなければならない。しかも、YouTube Premium(月額1,280円)より1冊の単価が高い場合もある。
読了後も処分に手間がかかるし、面白い本でも読み返すことは稀だろう。
そして、本を収めるためには否が応でも場所を取る。
使用頻度が低い物に生活スペースを圧迫されるのは、ミニマリストでなくても抵抗感があるだろう。
特に人口が集中している都心部では、部屋が狭いのでスペースの取り合いになる。

つまり

  1. 本はメディアとしてタイパが悪い(本読まない人たち)

  2. 本を読む層でも電子書籍派が増えている(本を読む人たち)

という形で書店へ行く人が減っているのだと思う。
自分は本を読む側の人間だが、書店が減っていく理由は大いに納得できる。
なぜなら消費者は利便性を追求するものだからだ。


1.本屋と掛け算する

ここからが本題の、本屋が生き残る方法である。
これからの本屋読本』でも語られていたが、すべての人を対象にすると、誰からも求められない本屋になってしまう恐れがある。
ただの本屋さんではお客さんが足を運ぶ動機が生まれない。

上記は以前まとめたものである。
この本では

  • 本屋×家具

  • 本屋×猫

  • 本屋×ギャラリー

  • 本屋×深夜営業

など本屋に掛け算をした店が紹介されている。
コンカフェのようにコンセプトが明確なので、興味を引く工夫がされている。
特に森岡書店は1週間に1冊のみ扱うというスタイルで、割り切り方が凄い。
千利休の朝顔のエピソードのような潔さがある。
都会でしか成立しないビジネスだと思うが、驚くべき発想だと思う。

2.本×推し×交流

自分が考えたのは、本をコミュニケーションツールにするというスタイルだ。
顧客が自分の好きな本を1冊ずつ持ち寄り、書店を作り上げていく。
本は新刊でないので、古書となる。
そして、ルールは以下のものである。

  1. 本は3回以上読み返したもの : 真に推せるものであること

  2. 預けた本は4年は交換できない : 選書の真剣度UP

  3. 月額制 : 書店の継続性UP

映画の『ファイト・クラブ』で学んだように、コミュニティにはルールが必要である。
まず、名刺代わりの推し本を1冊だけ預けるのだ。
預けた本には蔵書印を推しても良い。
そして、会員になることで本好きが推す本を読むことが出来る。
これによって、ハズレ本を引くリスクが低下し、タイパの悪さの改善ができると思う。
ここで問題として考えられるのは、推し本が大量に被ってしまう可能性だ。
『星の王子さま』『モモ』のような名著は票が集まると思う。
こういった場合でも本棚には1冊しか置かないルールは厳守する。
お客さんが求めているのは情報だからだ。
ただし、何人が選んだかは分かるようにした方がお客さんにとっては親切だろう。
そして、預ける本はボロボロになると思うので稀覯本は断り、貸出は禁止する。

何を読んだら分からない
という人もこの本屋のターゲット層になると思う。
普段本を読まない人でも、自分が好きなアイドルやアーティストの勧める本なら読みたくなるだろう。
(あくまでサービスが波及した後の話だが)
好きな人を構成する心理的要素に触れられるのだ。
しかも1冊なのでハードルは圧倒的に低い。
また、梟書茶房のように目隠し本に推薦者の名前とプロフィールが記述してあるのも面白いかも知れない。

自説だが、好きな本が同じ人は似たジャンルが好きな傾向がある。
舌が似た人にオススメの店を聞くのと同じだ。
会員同士はそこからコミュニケーションを取れるようにする。

ただし、いきなりプライバシーの開示は厳しいので

  1. 会員はハンドルネームを登録

  2. 書店を通して交流

  3. 読んだ感想は推した人に伝える

といった工夫が必要だと思う。
自分は以前、社会人の読書サークルに所属したことがあったが、お互いの好きな本について一方的に聴き続けるのが辛かった。
(特に哲学系)
テーマとなる本を選書して話す会もあるらしいが、授業のような堅苦しさを感じる。
本好きと言ってもジャンルが多岐に渡るため、一括りにすると障壁が生まれてしまう。
欲しいのは同じジャンルを推す仲間であり、自分の知らない好きな本なのである。
ここを履き違えると、欲しくないものを買わされる心理に陥ってしまう。

少し前の話だが、店主がお客さんの要望に応じて選書を行う本屋があった。
読書系YouTuberとコラボをするなど精力的な活動を行っていたが、1年足らずで閉店してしまった。
開業資金は767万円と聞いていたが、1年で限界が来てしまったようだ。
そもそも、本は薄利商売なので

書店が得る22%の利益は粗利益であり、そこから人件費や運営費を引いた営業利益率は平均で1%と言われています。

GoogleAI

1600円の本を1冊売って16円しか儲からない。
価格を自由に付けられない縛りがある以上、本単独で戦うのには限界がある。
そして、日本では1日に約200冊が出版されている。

つまり月額制か入場料を取るスタイルでなければ、継続は難しい。
文喫も入場料(1,500円/90分)を取るという生存戦略を取っている。

そして、東京では完全無人書店がオープンし、コストを削る戦いに入っている。
大手であればこういった戦略も取れるだろうが、個人店にはハードルが高い。
だからこそ、サービスによる差別化が鍵だと考えている。
ビジネス用語的にはランチェスター戦略という、弱者が勝つための方法だ。
新刊本を扱う書店の生存戦略を考えたかったが、思いつかなかった。

自分としては、文化の拠点である本屋には在り続けて欲しいと思う。
この記事が役に立つかわからないが、書店を開く人の一助になって欲しい。
(活字だと読まれにくいと思うので、簡単な漫画にしてXに上げたいと思う)

3.参考

1.シェア型書店

一番時代に乗っていると思われる形態の書店。
本好きの心理を上手く掴んでいる。

2.無人古書店

古書×無人化。
本は寄付というスタイル。そのため、古書店でセドリをしなくても良い。
立地条件も良く、武蔵野美術大学が近いため寄付が多いという。

3.移動本屋

キッチンカー×本屋というアイデア。
固定費がかからないのが良い。
ただし、量は運べないので選書技術が問われると思う。
BOOK TRUCKさんなどは、YOASOBIなどのアーティストとコラボもしており、ブランディングに力を入れている。

4.コンビニ本屋

コンビニ×本屋。
LAWSONが行っているので、生き残る可能性はあると思う。
ただ、コンビニは元々雑誌も扱っているので目新しさはない。
駅構内にある本屋に近い印象。

5.薬局本屋

調剤薬局×本屋。

本業がしっかりしているので、ビジネスとして強い。
薬の待ち時間の間に本を探せるのは嬉しい。
待ち時間の長い病院でも取り入れて欲しい仕組み。

#ビジネス部門

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