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[短編]【揺らぐ、旋律】

ゴロウ@読書垢

ー身体が深く、沈み込んでいく。
文字を追っていく度に、意識までもが引き込まれていく。
アバンチュールに、胸が高鳴るこの感覚は私の存在までも支配していく。
私は、今夜も彼女の記した詩歌を読み、特別な時間を過ごしている。

彼女がこの一文によせた、思いから一体彼女とはどういう人なのだろうかと想像した。
みずみずしい彼女が創り上げた言葉には、どこかアンニュイな雰囲気がある。
私は彼女が編む、言葉の旋律に心を惹かれたのだった。
彼女はどこか、遠くを見つめていてるような印象を受けた。
生と死の狭間から、彼女の声が聞こえてくるような感覚を覚える。
私たちに向けて問い掛ける彼女の思いが詰まった、小説、詩、エッセイからは‘言葉から生まれた声’が体感出来る不思議な力がある。
私は何度も、彼女が記した文字を目で追っていく。気になるフレーズに出会った瞬間にもう一度、前の一文に戻りつつ、意図がしっかり理解出来るまで読み返す事を心掛けた。
魅惑的な、美しい言葉にはセンセーショナルな気持ちを湧かしてくれるものがあった。
彼女がこれまでにWeb上で、書いた創作物には他に出版されたどの作品よりも優れた魅力があると信じている。
解けゆく感覚的な表現と、奮い立たせる意識的な表現をそれぞれ上手く使い分けながら、作品として消化させるのが彼女のスタイルだ。
私以外にも、この文体の虜となっている人たちは、恐らくたくさんいると思う。
私はこれまでに、創作というものに挑戦した事がなかった。
だが、彼女の言葉に触れる度に創作という欲求に駆られている自分がいた。
私はまずはじめに、彼女の好きな一文をそのままノートに書き写し、その一文に込められた情感を感じながら、そこから汲み取って生まれた私の一文を慎重に編み出していくという作業を繰り返していく。
そして、私は彼女以外にもたくさんの有名な作品を残した作家の文章にも触れる事を肝に命じた。
様々な文章に触れる度に、感覚が研ぎ澄まされていき、しだいに言葉が私の中で馴染んでいく感覚を覚えた。
私は、少しずつではあるが言葉により培われた感覚を頼りにして、新しい物語を紡いでいき、言葉を打ち込んでいった。
ある程度したら、文字を打ち込む作業を中断し、椅子から立ち上がりコーヒーサーバーから、マグカップにコーヒーを注ぎ、芳醇な豆の香りを嗅いで一口飲んだ。
私は彼女のような、特別な表現を持つ器になる事を誓った。

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