見出し画像

モネの究極

印象派に焦点をあてた展覧会というと、必ずと言って良いほどあるのがモネの<睡蓮>。
会場で見る度に、本当にどこにでもあるんだな、と半ばあきれてしまう。(全部で250点以上はあるらしい)
大きなカンヴァスを庭に持ち出し、ひたすら睡蓮の咲く池の面だけを見つめ、画面いっぱいに描き続けたモネ。
そう、水面だけ。
水辺の風景は、初めて師ブーダンの指導のもとに描いた油彩画<ルエルの眺め>以来、取り組んできたテーマだが、この頃になると空はほとんど描かれなくなる。
ただ、流れる雲や空の色が水の上に写りこんだものとして、描かれるだけだ。

水面は静かで、そこに浮ぶ睡蓮の花も葉も、ややもすれば形を失い水の中へと溶けていきそうだ。
画面の上の方には、水辺に生える柳の樹も映り込んでいる。
風が吹けば、睡蓮は揺れ、水面には波紋が生じるだろう。
風景画全体の雰囲気を決めるカギとも言うべき空の色、天候、風の有無、光のうつろい、それら全てを水は反映する。
周りにあるものをも鏡のように映し出す。
極端なことを言えば、周囲の光や大気の動きを含めた全てが、水を見つめ、描く事で表現できる。
モネは描いて行くうちにそれに気づいたのではないだろうか。

そんなことを思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?