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I was born

吉野弘氏のこの散文詩を、中学生の頃、目にした方も多いのではないだろうか。

英文法を覚え始めた少年が、偶然見かけた妊婦さんから着想し「人は産まれさせられてくるから受動態なんだ!」と父に話す。
父は昔観察したカゲロウの話をする。
退化した消化器官に迫るほどの卵が詰まった腹を見て、生き死にの切なさを感じたこと。
そしてその直後、息子を産んだ妻が亡くなった、と。

習った当時は「気持ち悪い息子だな」としかおもいませんでしたが、年齢を重ねると理解が深まりますね。


ま、今回はそんなしんみりした話ではありません。

実は近々誕生日なのですが、わたしは文字通り「I was born」でこの世に出してもらったのです。

母から聞いたわたしの超・受動態出産についてお話しします。


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そもそも、わたしは5/5頃出産予定でした。
普通は前後しても数日。
そこでいきなり発揮した受動っぷりがこちら。


出産予定日2週間過ぎても出てこない。


母は主治医から、「これ以上兆しがなければ陣痛促進剤で出産する」と言われたそうです。

結果、陣痛促進剤を打とうとしたら陣痛が始まりました。

この時からKAT-TUNの『リアルフェイス』を予見しいたのでしょうか。
ギリギリでいつも生きていた過ぎです。


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なんとか始まった分娩ですが、当然中々下りてきません。
しかも子宮口の開きも悪く、頭までしか出てこられないのです。

そして徐々に心音低下と酸欠が起こり始めました。
最悪の事態です。
苦渋の決断の末、帝王切開による分娩に切り替えられました。

ちなみに、途中まで出た頭、がっつり子宮口の跡がついています。
もし出家したら目立つだろうか、というのが懸念事項です。


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緊急帝王切開ということで、手術室への移動が必要になりました。
母は手術室まで朦朧とする意識のなか歩かされたそうです。

わたしも現在産婦人科で薬の処方と定期検査を行っていただいていますが、あらゆる面で産婦人科はスパルタだと感じています。


半身麻酔をし「それは膀胱!」という衝撃的な発言をされながら、わたしは子宮から引きずり出されました。


「ゲェ…」


それがわたしの産声だったそうです。

平均的な五体満足の赤ん坊。
しかし赤くないのです。
完全なチアノーゼ状態のため、真っ白。

母にまともに会わせることもなく保育器にいれられてしまったそうです。
父はわたしを見せられたとき、「これはだめだ」と思わずにはいられなかったとのこと。
実際、あと少し遅れていたら、今頃脳性麻痺だった可能性は十二分にあったのです。


ちなみに、わたしの分娩時間は36時間でした。


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そんなこんなで、そのまま病弱ながら成長し、今に至ります。

牡牛座はおっとりした人が多いなんて言いますが、「わたしが証明です」と言わんばかりのエピソードでした。
というかその後「ゆとり世代」として教育されたので目も当てられない人間になりました。


これは余談ですが、わたしの出産が遅れたせいで、母は「20代のうちに産めなかった!!!」と今でも嘆いています。

そのため誕生日激近です。


ご出産間近の方がいらっしゃいましたら、こんな産まれながらのゆとりもいること、何卒ご覚悟くださいませ。


おしまい



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