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あおり運転の思い出

あおり運転。
昨今ニュースにも取り上げられるようになったマナーの悪い運転のことである。


しかしわたしにとって、あおり運転は日常の一部でしかなかった。
今さらニュースになったところでさして興味も持てなかったほどである。


以前の記事にも何度か書いているが、わたしの故郷は治安が悪い。

品の良さそうな老夫婦が、時速80kmのまっさらなクラウンで追いかけてくるのだ。


そんなわたしにも忘れられないあおり運転がひとつだけある。
今回はそれをご紹介したいと思う。



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わたしの父は自営業を営んでいる。

自営業とは言い換えれば「アットホームな職場」なのである。

つまり、家族は総出で手伝うのが当然なのだ。


五年くらい前のことである。
その日は毎年恒例の大仕事の準備日だった。

夏なので夜に作業をし、夕飯は外食で済ませて帰るのがお決まりの流れだった。

手軽にお腹がいっぱいになるのは回転寿司である。
もっぱら回転寿司にはお世話になっている。

その日も好きなネタを好きなだけ食べて、満足して帰路に着くところだった。



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その日は仕事の都合、わたしと妹、父で車が分かれていた。

しかし、わたしが駐車場から出ようとしたとき、もはや名物とも言うべきヤンキー集団がわたしの車の前でたむろしていたのだ。

さすがに男の集団に「退いて欲しい」とはいえなかった。

しかし今でも悔やまれるが、それを察知した父が「車が出られないだろ。」と高圧的に催促したのだ。



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注意をされるということは、ヤンキーたちにとってとても屈辱的なことである。

怒りを覚えてしまったヤンキーたちは、素早く車に乗り込み、あろうことか父の車を高速で追いかけ始めた。

わたしは慌てて追いかけた。
あの父だ。
何をするか分からない。

正直カーチェイスの間、緊張と恐怖とで混乱していた。

ばかども!!!お願いだからもうやめてくれ!!!相手が悪い!!!

本当にそう叫びながら運転したことだけは覚えていた。



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幸い、からかいたかっただけだったようで、ちょっと追いかけたらおとなしく回転寿司に返っていった。

正直、あれ以上ヤンキーの身の心配をしたのは最初で最後である。


最後に、全国のイキイキヤンキーたちに伝えたい。

本当に相手だけは選んでください…



おしまい




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