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替え歌あれこれ

私がまだ小学生のクソガキの頃、私の周りでは一時こんな歌が流行った。

「ある〜貧血♪
森のなカンチョウ♪
クマさんニンニク♪
出会ったんこぶ♪
花咲くモッコリちんちんぶらぶらソーセージ〜♪クマさんに出会った〜♪」

何ともIQの低い下品な歌であろうか。
しかし嫌に頭に残る語呂のいい替え歌である。
内容はともかく、この頭に残る語呂によって私も私の友人たちも何が面白いか今となってはさっぱり分からないが、狂ったようにこの歌を歌っていた。(ちなみに頭から聴いた音楽などが離れない現象をイヤーワームというらしい)

さて、今テレビのコマーシャルソングとして使われている歌の多くに替え歌が使われている。
これまで生きてきて今まで微塵も疑問を抱かなかったが、替え歌をコマーシャルで使うのって権利的にどうなんだ?と思った。

仮に私が森のくまさんの替え歌を何かの間違いで地上波のコマーシャルソングとして使うことになった場合、どんな問題が関わってくるだろうか。

ということでこの記事では替え歌のあれこれについてまとめてみたい。

まず、そもそも替え歌の定義だが、調べたところ

パロディの一形態。
異名同曲異歌詞曲(いめいどうきょくいかしきょく)と呼ばれることも。
・メロディやリズムを可能な限り変えないようにしつつ、本来その歌に付けられている歌詞以外の歌詞を作詞して歌うこと、またはそれによって歌われる歌のこと。
・元がインストルメンタルの場合は「単なる作詞」なのか「替え歌」なのか議論が分かれる。

との事だった。

そもそも、曲には著作権があるわけなので、歌詞が全く別のオリジナルだとしても、公共の場で使用する場合はかなり複雑な手続きが必要になりそうだ。
仮に著作権が切れているような古い楽曲であっても、歌詞が翻訳されている場合は、作曲者ではなく、訳詞家の権利が残っている場合もあるらしい。
訳詞が著作権で保護されている場合は、替え歌の歌詞が元の歌詞の翻案権(著作権者が勝手に著作物を変えることを禁止できる権利)を侵害していないか注意しなければならないらしい。
加えて、著作者人格権(著作者が精神的に傷つけられないように保護する権利の総称)における同一性保持権の侵害となることにも注意が必要だ。

うへ〜大分複雑だ。

また、日本音楽著作権協会(JASRAC)やNexTone等の著作権管理団体では、翻案権や同一性保持権の管理は行っていないらしく、作った替え歌を世に公表する場合は、当然権利者の許可がいるということになる。

ここまでまとめると、私が「森のくまさん」の替え歌を世に公表する場合は、少なくとも「森のくまさん」の著作者・訳詞家もしくは権利者に確認を取ることが必要になりそうだ。(あんな歌詞使っている時点で許可が出るわけが無いが…)

と、私の身内の替え歌が世に出ることは諦めるとして、実際にあった問題などを紹介したい。

私は世代では無いので全然知らないが、嘉門達夫氏の「替え歌メドレー」というシリーズがあるらしい。嘉門達夫氏の場合、ライブで歌うかCDをリリースする上で、元曲の作詞者・作曲者・歌唱者・替え歌に出てくる実在の人物に許可を取っていたらしい。ただ、許可が取れなかったものに関しては「ボツ・替え歌メドレー」としてライブで披露したそうだ(いいのか?)

個人的に面白いと思ったのが、NHKの問題である。

かつてNHKでは、番組内での商標の使用をかなり厳しく規制していた。その為、かぐや姫の「神田川」をNHKの電波で流す際には歌詞の「クレパス」の部分を「クレヨン」に置き換えたり、百恵ちゃんの「プレイバックPart2」の「真っ赤なポルシェ」の部分を「真っ赤なクルマ」に置き換えたりしていたらしい。
また、小林旭大先生の「自動車ショー歌」は要注意歌謡曲指定制度という民放連の制度に抵触したらしく、事実上放送禁止になったらしい。(これめちゃめちゃおもろい)

ここまでまとめてみたが、普段なんとなしに聴いているコマーシャルの替え歌には思った通り、かなり高いハードルがあった。
プロ野球や甲子園でも応援歌として替え歌が使われるが、これも同じように権利が絡んでくる問題だろう。調べたところこれに関してはかなりグレーな領域らしい。
同じように芸人さんたちがネタで替え歌を使う場合もここら辺の問題が絡むはず。
歌のネタ作るのも一苦労だ。

テレビコマーシャルで使われている曲も恐らく大抵の曲が著作権の切れたいわゆるパブリックドメインの曲を使っていると思しい。
改めて言うことでもないが、古くからある民謡や、クラシックの曲は聴き馴染みのある曲であり、尚且つパブリックドメインである可能性が高いことから、よく替え歌に使われているのだろう。コマーシャルという観点から言えば、替え歌というのは非常に理にかなった手段である事が分かる。

とはいえ、替え歌は内容はどうあれ内輪であればどんな替え歌を作っても問題にはならない。
替え歌というのは大概くだらなくてしょーもない歌詞が付くものである。
人を傷つけるような歌詞は良くないが、クスッと笑えるような替え歌なら誰も損しないのである。

以上。

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